「撮り鉄」は鉄道会社から良く思われていないといった見方がありますが、その撮り鉄をJR東日本がCMに起用。撮り鉄たちは戸惑っています。

救われた「撮り鉄」

 鉄道の写真を撮ることが好きな「撮り鉄」。近年、一部のマナーが悪い撮り鉄が時折メディアで採り上げられるため、「ちょっと肩身が狭い」(40代男性会社員)思いをしている撮り鉄も少なくありません。

 先日、そんな撮り鉄の世界に衝撃が走りました。テレビCM、しかもJR東日本のテレビCMで「撮り鉄」がテーマになったのです。

 そのCMは、JR東日本の「行くぜ、東北。」という東北方面への観光キャンペーンで作られたもので、福島県会津地方を走る只見線が舞台。女優の木村文乃さんが、東北の自然豊かな風景を行くその列車を撮り鉄たちと一緒に撮影する、というものです。

JR東日本「行くぜ、東北。」CMギャラリー 「只見線 カメラをもって」篇
http://www.jreast.co.jp/ikuze/cm/

「『鉄道会社は撮り鉄を非常に迷惑に思っている、毛嫌いしている』といった方向性の報道がしばしば行われるなか、こうした『撮り鉄』の楽しさがCMに、なんといってもJRのCMになったのは意外でしたし、なにより嬉しかったですね。これで『JRに認めて貰った』というのは正しくないと思いますが、どこか感じていた『引け目』が少し軽くなりました」(30代男性会社員)

 ネガティブな報道が少なくない「撮り鉄」。それがこうして鉄道会社から前向きに採り上げられたいまこそ、そうしたポジティブなイメージを崩さないよう、撮り鉄たち自身がルールの遵守やマナーの向上について考え、行動していくべきなのかもしれません。

観光地化しているCMのロケ現場

 このCMが撮影された場所は、撮り鉄には非常に有名だったりします。福島県会津地方の三島町内、只見線の会津桧原~会津西方間にある撮影地で、春夏秋冬、それぞれの色を見せる大自然と共に、第一只見川橋梁を渡る列車を撮ることが可能です。

 地元の福島県三島町ではこの鉄橋を観光資源として捉えており、2011年には鉄橋を見渡せる場所への階段や展望スペースなどを整備。

「只見川ビューポイント遊歩道」を完成させました。遊歩道は只見線と並行する国道252号線沿いにある道の駅「尾瀬街道みしま宿」付近から延びており、遊歩道の最上部までは10分ほどで行くことができます。

 また今年は終了してしまいましたが、第一只見川橋梁のライトアップが実施されることもあります。2014年は6月~10月の合計10日間、19時から21時15分まで、暗闇のなかに美しいアーチの鉄橋と只見線の列車が浮かび上がりました。

 ただ、この撮影地は山間にある喧噪とは無縁の場所で、周辺には温泉もあってノンビリできますが、鉄橋を渡る列車は大変少なく1日6往復しかありません。しっかり計画を立てて、ノンビリする必要があります。

CMのオチは「撮り鉄」のタブー

 ちなみにこのCMの最後では、木村さんの写真に前で写真を撮っていた人の頭が入ってしまった、というオチがついていますが、あくまで「作り話のオチ」であり、実際には決してやってはいけません。

 撮り鉄は狭い場所に大勢集まった場合、前で撮る人はしゃがんで後ろにいる人も撮影できるようにするといった気遣いをします。

前にいる人「この場所で撮っても大丈夫ですか?(あなたの写真に写り込みませんか?)」
後にいる人「すみません、入ってしまうのでもう少しだけしゃがむか、右にずれて貰えますか?」

 こうした撮り鉄同士のやりとりは、撮影地では大変よくあることです。一部にマナーの悪い撮り鉄がいるのも確かですが、多くの撮り鉄は「自分が撮れればOK」ではなく、他人のことを考えて行動しています。

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