テレビ番組で阪急電車は「大阪府民あこがれの対象」、「阪急マルーンの塗色に高級感がある」と紹介されました。近年、鉄道車両にはシルバーの地肌をむき出しにしたものが多数見られますが、阪急電車の塗色はすべてその「阪急マルーン」です。

なぜそうしているのか、背景には100年を越える歴史がありました。

「ビンテージ赤ワイン」を思わせる阪急の色

 2015年1月22日(木)に放映された日本テレビ系「カミングアウトバラエティ 秘密のケンミンSHOW」は「大阪」の特集で、関西地区では24.4%という高視聴率を記録。番組中では「関西の私鉄」も題材に採り上られ、関西が「私鉄王国」であること、各私鉄によって個性があり雰囲気が違うことなどについて説明が行われました。

 そのなかで大阪と京都、神戸などを結ぶ阪急電車については、「阪急だけは大阪で別」「大阪府民は阪急電車にあこがれを抱いている」として紹介されています。その理由のひとつとして挙げられたのが、「高級感ある車体の色」でした。

 阪急電車は、車体の色がすべて「阪急マルーン」という色で統一されています。番組ではこの「阪急マルーン」について「ビンテージ赤ワインを思わせる高級感あふれるカラー」と表現。あこがれの対象になっていると説明しました。

 近年の鉄道車両では、金属地をむき出しにしたシルバーの車体が全国的に多く見られます。しかし阪急には存在せず、全車両が「阪急マルーン」です。なぜそのようにしているのでしょうか。

「見た目」だけではない塗装の目的

 まず鉄道車両を塗装する理由について、見た目のほかに大きな理由があります。

塗装で車体を守り、腐食を抑えるためです。

 近年、金属地をむき出しにしたシルバーの電車が多いのは、車体の材質が鋼鉄から腐食しづらいステンレスやアルミ合金に変わったことが深く関係しています。つまり車体が腐食しづらくなり塗装の必要性が薄れたため、金属地をむき出しにした電車が増えているのです。

 阪急にも2003(平成15)年に登場した9300系など、塗装の必要性が高くないアルミ合金製の車両が多数走っていますが、すべて「阪急マルーン」です。その理由を阪急電鉄にたずねたところ、「伝統」と「ブランドイメージ」を考えてのものといいます。

 車体は塗装しないほうが、車両製造費やメンテナンス費用が安くなります。しかし「阪急マルーン」の車体塗色には同社が創業から100年以上つちかってきた歴史とブランドがあり、地域の人々にも親しまれていることから、全車両で継続してこの「阪急マルーン」を使っているそうです。

 ただ実は20~30年ほど前、ほかの色を使うことも検討したことがあるのだとか。様々なカラーバリエーションが考えられたそうですが、伝統の「阪急マルーン」に落ち着いたといいます。

 ちなみに番組では、関西の私鉄が関東の私鉄に例える形でも紹介されており、南海は京成、阪神は京急、近鉄は東武、京阪は西武、阪急は東急東横線に例えられました。

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