「飛行機カンケー無いじゃん」…と思いきや、実はつながってます!
10か国17チームがファイナルへ…日本のチームもアメリカ・ロサンゼルスのロングビーチで、ロボットを用いた先進的なコンテスト「ANAアバターXプライズ(ANA Avatar Xprize)」の最終決戦が2022年11月に開催されました。これは、航空会社のANA(全日空)がスポンサーとなり、人間の感覚、行動、存在をリアルタイムに遠隔地に配置させ、社会課題の解決を目指すロボット「アバターロボット」によるテクノロジーを競うもので、入賞者には総額にして、賞金1000万ドル(約14億6600万)が贈呈されます。
「ANAアバターXプライズ」最終決戦の様子(乗りものニュース編集部撮影)。
XPRIZE財団は、「イノベーション界のカリスマ」とも呼ばれるピーター・ディアマンデス氏が設立した非営利財団で、世界中のイノベーターのチャレンジを支援しています。「ANAアバターXプライズ」は、同財団が企画しANA後援のもと、「人類に利益を与える技術開発」をテーマに、条件をクリアして優勝したチームに多額の賞金を贈ることで、様々なテーマに挑むモチベーションを促し、結果として世の中の課題解決を早期に実現可能にすることが期待されているといいます。
このコンテストは4年間かけ実施され、ファイナリストに選ばれたのは、10か国17チーム。日本からは三菱電機先端技術総合研究所、関西大学らが中心となった「Last Mile」、産業技術総合研究所(筑波市)も参加した「JANUS」の2チームが選ばれています(海外団体との共同参加含む)。最終決戦は2日間にかけ行われ、1日目で12チームを選抜し、2日目に優勝者を決定します。
コンテストでは各チームが開発したアバター・ロボットを用いて、25分の制限時間に、いくつかのミッションに挑戦。たとえば電気のブレーカーに見立てたレバーをあげる作業、電動のドライバーを用いてボルトを緩める作業、覆いで隠されて見えないところにある石を取る作業などです。
ミッションは実は高難易度? ANAが後援した理由とはこのコンテストの内容を、アバターロボットがクリアするには、さまざまな能力が求められます。
ドライバーの操作などは、たとえば不慣れなロボットの操作者(チーム外の人が担当)がドライバーのトリガーを引くことができる適切な位置にロボットの手を配置し、ネジの穴にドライバーを埋め込む……といった細かな作業を可能とする操作性の良さが要求されるほか、ロボット自体の手の設計にも、人間でもある程度力を要するトリガーを、電動で引けるようなパワーを出すことが求められます。そのような状況であることから、今回出場した先進的なロボットでも、25分以内にすべてのミッションをクリアした出場者は数組でした。
優勝したのは、ドイツの「NimbRo」チーム。

「ANAアバターXプライズ」最終決戦の様子(乗りものニュース編集部撮影)。
ANAグループではこれまで、未来を見据えた非航空事業の一環として、アバターロボットの開発を推進してきました。2020年4月には社内のアバター準備室を発展させるかたちで、同社初のスタートアップ企業「avatarin(アバターイン)」を設立。世界総人口の9割以上を占める、「航空機を利用したことがない人」などに対し、アバターロボットを生身の体を用いない”新たな移動手段”として提供し、さまざまな社会解決を目指すといった目的があるとのことです。
一見、航空事業とは無関係に見える、今回の「ANAアバターXプライズ」の後援も、こうした取り組みを進めるANAグループがXPRIZE財団に賛同したものとしています。
「アバターロボットの操作はそれぞれの状況を見て動くのが特徴で、初めての内容が多く、そういった意味では、今回のコンテストは、チャレンジングな取り組みです。アバター操作者を作り手以外が担当するのは、世界で初めての取り組みかもしれません。非常にリアリティのある、実践的なシナリオだったと思います」。アバターインの深堀 昂CEOは、次のようにコメントしています。