やりたいことがあるのに時間がない人はどうすればいいのか。元日本マイクロソフト執行役員の澤円さんは「とりあえず出ている会議など、『とりあえず』と付くものを一度やめてみるといい。
※本稿は、マイナビ健康経営のYouTube番組「Bring.」の動画「『向いていること』『やりたいこと』の2軸で考える、『得意なことの見つけ方』。キャリアを自在にデザインできる頭がいい人の思考法」の内容を抜粋し、再編集したものです。
■「得意なこと」の見つけ方
【節約オタクふゆこ】ビジネスパーソンの生き方には、与えられた仕事に一生懸命取り組んでプロフェッショナルとして生きる人がいる一方、将来像をイメージしてスキルや経験を蓄積し、選択的にキャリア形成する人もいます。単刀直入にお聞きしますが、やはりキャリアは「得意なこと」を選んだほうがいいと思いますか? また、自分の「得意なこと」は、どのように見つけるといいでしょうか?
【澤円】「得意なこと」でキャリアを積めるなら、それに越したことはありません。その理由は後述しましょう。また、「得意なこと」の見つけ方については、逆説的になりますが、「方法論で見つかるものではない」と考えています。
いまは少しネットで調べれば「答え」が見つかる時代ですから、どうしても「方法」を求めてしまいますよね。しかし、方法を探して具体的な行動を起こさないでいると、本質から離れてしまうのです。そもそも、自信を持って「得意なこと」といえるものがない可能性もあります。それでも、得意に近いものを見出して、「得意」にしていくには行動が大切です。
■「やりたい」「向いている」の2軸で考える
【節約オタクふゆこ】確かに方法がわかっても、行動しないことにはなにも始まりませんね。
【澤円】抽象的な話になってしまいますから、具体的な話をしましょう。まずは、自分の内面を棚卸しします。それには、「向いている・向いていない」という軸と「やりたい・やりたくない」という軸の組み合わせで考えるといいですね。
「向いている」と「やりたい」が一致している領域(◎)は、いわば「天職」です。苦もなくできてモチベーションも維持できるので、継続しやすく結果も出やすい。これははっきりと「得意なこと」といえますし、やったほうがいいでしょう。
■まずは「向いている」ことを始めてみる
【節約オタクふゆこ】次点の「◯」の部分ですが、人から「向いている」といわれ、自分でも向いていると思うけど、特別に「やりたい」とは思えないというケースは多い気がします。
【澤円】「◎(天職)」に当たるものがなくて、でも「新しいことを始めたい」と思っているのなら、わたしは他人が「向いている」ということを、とりあえず始めてみたらいいと考えます。それで、「続けたい」となったら続ければいいのです。
向いていることであれば一定レベルの結果が出ますから、やってみたら意外と楽しくなって、いつしか天職になる可能性は十分にあります。「興味が持てるかわからない」だけで行動しないのは、もったいないですよね。
一方、「やりたいけど向いていない」については、評価されづらく、収入にもつながりづらいので「△」としていますが、「なし」ではありません。「やりたい」という気持ちは、継続につながりますし、継続していれば苦労はあっても能力はついてくるからです。
実は、僕自身のキャリアがこれでした。僕は新卒でエンジニアとして働き始めたのですが、その頃は、インターネットの幕開けとなるWindows95の発売以前です。コンピューターに関する情報が絶対的に少なかった時代に、よくわからないまま「やってみたい!」と思って飛び込んだので、向いているかどうかがわからなかったのです。
そして、実際に始めてみると「向いてないな」と思いましたし、成果も出せずという時期が続きました。極めつきは、40歳を超えてから「脳優勢検査」という診断を受けたのですが、もっとも向いていない職業がエンジニアだったのです(笑)。
■「向いていないこと」は他の向いている要素と組み合わせる
【節約オタクふゆこ】科学的に「エンジニアに向いていない」ことが立証されたのですね(笑)。では、どうしてエンジニアとして働き続けることができたのですか?
【澤円】僕の場合、エンジニアを続けた結果、別の「向いている」要素と結合させることができて、トータルで「やりたい」と「向いている」の◎に持っていくことができました。それは、プレゼンテーションです。
エンジニアとしては苦労していたのですが、取引先や外部の人から「澤さんのプレゼンいいよね。教えてほしい」というお声かけもあって、「もっとやってみたいな」と思って社内でもプレゼンを売りにしていったのです。
「やりたいけど向いていない」ことも、別の要素と組み合わせることで得意分野に変えられる可能性があるということです。
■「とりあえず」やっていることを削って時間を確保
【節約オタクふゆこ】「新しいことに挑戦したい」「キャリア形成を期したアクションを起こしたい」と思っても、いまの仕事が忙しくて行動できないし、「得意なこと」についてもじっくり考える気持ちの余裕がない人は多いかもしれません。こればかりは、精神論ではどうにもならないと思うのです。「時間のつくり方」についてアドバイスはありますか?
【澤円】これも、まずは自分の時間の棚卸しをすることです。僕はよく「『とりあえず』でやっていることは全部やめましょう」といっています。
「とりあえずこのミーティングには出ておこう」とか、「とりあえず議事録を残しておこう」とか、「とりあえず」が枕詞になるものは、たいてい意味がないので1回やめてみようということですね。それで問題がなければ、以降は撤廃です。
その他、日常の業務で人に振れるものや効率化できるものを探し、時間の余裕を確保してほしいと思います。ただし、大原則は「睡眠時間を削らない」です。
■「結局やらない」とならないために
【節約オタクふゆこ】時間が確保できたとしても、「結局やらない」になりがちですよね。行動を起こすためのアドバイスはありますか?
【澤円】そう、なかなか行動しないですよねえ……(苦笑)。
①宣言する
②ご褒美を用意しておく
③仲間をつくる
④できない理由を自分に問いかける
「①宣言する」は、友人でも同僚にでも「こういうことにチャレンジします」と話す(宣言する)ことで、自分のなかにコミットメントをつくる行為です。「②ご褒美を用意しておく」は言葉通りで、プロセスを区切って、達成するたびに自分が喜ぶことを用意してモチベーションを維持する工夫をしましょう。
そして、「③仲間をつくる」は、外部の人との接点を持つことです。壁打ちができるようになり、考え方や情報をアップデートしやすくなります。
「④できない理由を自分に問いかける」は、理由をつけて現状維持しようとする自分への対策ですね。「時間がない」「お金がない」「体力的に厳しい」といった「行動を起こさない理由」を洗い出し、一つひとつ解決可能かを考えて潰していくのです。ただし、僕自身は「そんな考えはくだらないよね」と一蹴してしまうのですが、「他の人がどう思うか気になる」など、解決策のない理由もありますよね。
【節約オタクふゆこ】建設的ではない考えだとわかっていても、「まわりがどう思うか」が気にかかってしまう人は多いでしょうね。
【澤円】そうだとしたら、これも自分に問いかけてほしいですね。「その人にどう見られるかって、自分にとって大事なこと?」、あるいは「その人は自分の人生に責任をとってくれないぞ?」と問いかけて、自分の人生を生きてほしいものです。
■仕事で失敗しても何も落ち込む必要はない
【節約オタクふゆこ】澤さんの書籍『得意なことの見つけ方』のなかには、「エイリアス」という概念が出てきます。
【澤円】エイリアスは、通常「偽名」とか「仮名」と訳されますが、ここでいうエイリアスは、「自分の名前をまとう分身」のことです。
例えば、会社にいる自分、家庭での自分、会社の外でコミュニティに属する自分というのは、同じ名前の同じ自分ですが、振る舞い方は違いますよね? 会社で「セールスパーソン」であろうとする自分と、家庭で配偶者や親であろうとする自分は、自分としての「機能」が違うのです。
だから、仕事で失敗して怒られたり、低い評価をつけられたりしても、あなたの機能のあり方(エイリアス)のひとつが否定されたに過ぎません。あなたの人格や人生が否定されたわけではないのですから、落ち込む必要などないわけです。
■自分の分身をうまく使い分ける
【節約オタクふゆこ】わたしはアクションを起こして失敗すると、どん底まで落ち込みやすいので、とても参考になります。いろいろなことに挑戦して、自分のエイリアスを増やしたほうがいいのですね。
【澤円】そうです。ひとつの会社だけにずっといると、そこでエイリアスが否定されただけで、自分自身が全否定された気がして絶望してしまいます。でも、転職経験があったり、副業などをしていたりすると、「A社では評価されたのに、B社ではうまくいかなかった」と自分をエイリアスで捉えて客観的に、俯瞰して見ることができます。
ですから、いまエイリアスが会社と家庭にしかないのなら、会社の外で新たなコミュニティを見つけたり、会社のなかでも多面的にアクションを起こしたりして、エイリアスを増やしていきましょう。僕自身も、求められる内容によって、「テクノロジーに詳しい人」「マネジメントに詳しい人」「プレゼンに詳しい人」といったエイリアスを使い分けています。
誰だって、自分の得意分野を少しずつ増やしていくことで、会社のなかで複数のエイリアスを使い分けて活躍することができるはずです。そのなかで、最良のエイリアスでキャリアアップを図ってほしいですね。
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澤 円(さわ・まどか)
圓窓 代表取締役
1969年生まれ、千葉県出身。株式会社圓窓代表取締役。立教大学経済学部卒業後、生命保険会社のIT子会社を経て、1997年にマイクロソフト(現・日本マイクロソフト)に入社。情報コンサルタント、プリセールスSE、競合対策専門営業チームマネージャー、クラウドプラットフォーム営業本部長などを歴任し、2011年にマイクロソフトテクノロジーセンター長に就任。業務執行役員を経て、2020年に退社。2006年には、世界中のマイクロソフト社員のなかで卓越した社員にのみビル・ゲイツ氏が授与する「Chairman's Award」を受賞した。現在は、自身の法人の代表を務めながら、琉球大学客員教授、武蔵野大学専任教員の他にも、スタートアップ企業の顧問やNPOのメンター、またはセミナー・講演活動を行うなど幅広く活躍中。2020年3月より、日立製作所の「Lumada Innovation Evangelist」としての活動も開始。主な著書に『メタ思考』(大和書房)、『「やめる」という選択』(日経BP)、『「疑う」からはじめる。』(アスコム)、『個人力』(プレジデント社)、『メタ思考 「頭のいい人」の思考法を身につける』(大和書房)などがある。
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節約オタク ふゆこ(せつやくおたく・ふゆこ)
YouTuber
理系の大学院を修了後に電子系メーカーに就職。1カ月約10万円で生活して年間300万円を貯金し、20代で資産1000万円を達成。現在はフリーランスとして活躍中。YouTubeチャンネル「節約オタクふゆこ」では、日常的な節約法や投資について初心者向けに配信し、チャンネル登録者数は60万人を超える(2025年2月時点)。著書に『貯金はこれでつくれます 本当にお金が増える46のコツ』(アスコム)がある。
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(圓窓 代表取締役 澤 円、YouTuber 節約オタク ふゆこ 構成=岩川悟(合同会社スリップストリーム) 文=吉田大悟)
睡眠時間だけは絶対に削ってはいけない」という。節約系YouTuberの節約オタクふゆこさんとの対談をお届けする――。
※本稿は、マイナビ健康経営のYouTube番組「Bring.」の動画「『向いていること』『やりたいこと』の2軸で考える、『得意なことの見つけ方』。キャリアを自在にデザインできる頭がいい人の思考法」の内容を抜粋し、再編集したものです。
■「得意なこと」の見つけ方
【節約オタクふゆこ】ビジネスパーソンの生き方には、与えられた仕事に一生懸命取り組んでプロフェッショナルとして生きる人がいる一方、将来像をイメージしてスキルや経験を蓄積し、選択的にキャリア形成する人もいます。単刀直入にお聞きしますが、やはりキャリアは「得意なこと」を選んだほうがいいと思いますか? また、自分の「得意なこと」は、どのように見つけるといいでしょうか?
【澤円】「得意なこと」でキャリアを積めるなら、それに越したことはありません。その理由は後述しましょう。また、「得意なこと」の見つけ方については、逆説的になりますが、「方法論で見つかるものではない」と考えています。
いまは少しネットで調べれば「答え」が見つかる時代ですから、どうしても「方法」を求めてしまいますよね。しかし、方法を探して具体的な行動を起こさないでいると、本質から離れてしまうのです。そもそも、自信を持って「得意なこと」といえるものがない可能性もあります。それでも、得意に近いものを見出して、「得意」にしていくには行動が大切です。
■「やりたい」「向いている」の2軸で考える
【節約オタクふゆこ】確かに方法がわかっても、行動しないことにはなにも始まりませんね。
【澤円】抽象的な話になってしまいますから、具体的な話をしましょう。まずは、自分の内面を棚卸しします。それには、「向いている・向いていない」という軸と「やりたい・やりたくない」という軸の組み合わせで考えるといいですね。
「向いている」と「やりたい」が一致している領域(◎)は、いわば「天職」です。苦もなくできてモチベーションも維持できるので、継続しやすく結果も出やすい。これははっきりと「得意なこと」といえますし、やったほうがいいでしょう。
■まずは「向いている」ことを始めてみる
【節約オタクふゆこ】次点の「◯」の部分ですが、人から「向いている」といわれ、自分でも向いていると思うけど、特別に「やりたい」とは思えないというケースは多い気がします。
【澤円】「◎(天職)」に当たるものがなくて、でも「新しいことを始めたい」と思っているのなら、わたしは他人が「向いている」ということを、とりあえず始めてみたらいいと考えます。それで、「続けたい」となったら続ければいいのです。
向いていることであれば一定レベルの結果が出ますから、やってみたら意外と楽しくなって、いつしか天職になる可能性は十分にあります。「興味が持てるかわからない」だけで行動しないのは、もったいないですよね。
一方、「やりたいけど向いていない」については、評価されづらく、収入にもつながりづらいので「△」としていますが、「なし」ではありません。「やりたい」という気持ちは、継続につながりますし、継続していれば苦労はあっても能力はついてくるからです。
実は、僕自身のキャリアがこれでした。僕は新卒でエンジニアとして働き始めたのですが、その頃は、インターネットの幕開けとなるWindows95の発売以前です。コンピューターに関する情報が絶対的に少なかった時代に、よくわからないまま「やってみたい!」と思って飛び込んだので、向いているかどうかがわからなかったのです。
そして、実際に始めてみると「向いてないな」と思いましたし、成果も出せずという時期が続きました。極めつきは、40歳を超えてから「脳優勢検査」という診断を受けたのですが、もっとも向いていない職業がエンジニアだったのです(笑)。
■「向いていないこと」は他の向いている要素と組み合わせる
【節約オタクふゆこ】科学的に「エンジニアに向いていない」ことが立証されたのですね(笑)。では、どうしてエンジニアとして働き続けることができたのですか?
【澤円】僕の場合、エンジニアを続けた結果、別の「向いている」要素と結合させることができて、トータルで「やりたい」と「向いている」の◎に持っていくことができました。それは、プレゼンテーションです。
エンジニアとしては苦労していたのですが、取引先や外部の人から「澤さんのプレゼンいいよね。教えてほしい」というお声かけもあって、「もっとやってみたいな」と思って社内でもプレゼンを売りにしていったのです。
その結果、当時勤めていた日本マイクロソフト社で最高栄誉とされる「Chairman's Award」を受賞することもできました。
「やりたいけど向いていない」ことも、別の要素と組み合わせることで得意分野に変えられる可能性があるということです。
■「とりあえず」やっていることを削って時間を確保
【節約オタクふゆこ】「新しいことに挑戦したい」「キャリア形成を期したアクションを起こしたい」と思っても、いまの仕事が忙しくて行動できないし、「得意なこと」についてもじっくり考える気持ちの余裕がない人は多いかもしれません。こればかりは、精神論ではどうにもならないと思うのです。「時間のつくり方」についてアドバイスはありますか?
【澤円】これも、まずは自分の時間の棚卸しをすることです。僕はよく「『とりあえず』でやっていることは全部やめましょう」といっています。
「とりあえずこのミーティングには出ておこう」とか、「とりあえず議事録を残しておこう」とか、「とりあえず」が枕詞になるものは、たいてい意味がないので1回やめてみようということですね。それで問題がなければ、以降は撤廃です。
その他、日常の業務で人に振れるものや効率化できるものを探し、時間の余裕を確保してほしいと思います。ただし、大原則は「睡眠時間を削らない」です。
■「結局やらない」とならないために
【節約オタクふゆこ】時間が確保できたとしても、「結局やらない」になりがちですよね。行動を起こすためのアドバイスはありますか?
【澤円】そう、なかなか行動しないですよねえ……(苦笑)。
行動するための、弱い意志を支える4つのポイントがあります。
①宣言する
②ご褒美を用意しておく
③仲間をつくる
④できない理由を自分に問いかける
「①宣言する」は、友人でも同僚にでも「こういうことにチャレンジします」と話す(宣言する)ことで、自分のなかにコミットメントをつくる行為です。「②ご褒美を用意しておく」は言葉通りで、プロセスを区切って、達成するたびに自分が喜ぶことを用意してモチベーションを維持する工夫をしましょう。
そして、「③仲間をつくる」は、外部の人との接点を持つことです。壁打ちができるようになり、考え方や情報をアップデートしやすくなります。
「④できない理由を自分に問いかける」は、理由をつけて現状維持しようとする自分への対策ですね。「時間がない」「お金がない」「体力的に厳しい」といった「行動を起こさない理由」を洗い出し、一つひとつ解決可能かを考えて潰していくのです。ただし、僕自身は「そんな考えはくだらないよね」と一蹴してしまうのですが、「他の人がどう思うか気になる」など、解決策のない理由もありますよね。
【節約オタクふゆこ】建設的ではない考えだとわかっていても、「まわりがどう思うか」が気にかかってしまう人は多いでしょうね。
【澤円】そうだとしたら、これも自分に問いかけてほしいですね。「その人にどう見られるかって、自分にとって大事なこと?」、あるいは「その人は自分の人生に責任をとってくれないぞ?」と問いかけて、自分の人生を生きてほしいものです。
■仕事で失敗しても何も落ち込む必要はない
【節約オタクふゆこ】澤さんの書籍『得意なことの見つけ方』のなかには、「エイリアス」という概念が出てきます。
「自分の心を守る」ことにつながる、とても興味深い考え方だったのですが、そのエイリアスについてお聞かせください。
【澤円】エイリアスは、通常「偽名」とか「仮名」と訳されますが、ここでいうエイリアスは、「自分の名前をまとう分身」のことです。
例えば、会社にいる自分、家庭での自分、会社の外でコミュニティに属する自分というのは、同じ名前の同じ自分ですが、振る舞い方は違いますよね? 会社で「セールスパーソン」であろうとする自分と、家庭で配偶者や親であろうとする自分は、自分としての「機能」が違うのです。
だから、仕事で失敗して怒られたり、低い評価をつけられたりしても、あなたの機能のあり方(エイリアス)のひとつが否定されたに過ぎません。あなたの人格や人生が否定されたわけではないのですから、落ち込む必要などないわけです。
■自分の分身をうまく使い分ける
【節約オタクふゆこ】わたしはアクションを起こして失敗すると、どん底まで落ち込みやすいので、とても参考になります。いろいろなことに挑戦して、自分のエイリアスを増やしたほうがいいのですね。
【澤円】そうです。ひとつの会社だけにずっといると、そこでエイリアスが否定されただけで、自分自身が全否定された気がして絶望してしまいます。でも、転職経験があったり、副業などをしていたりすると、「A社では評価されたのに、B社ではうまくいかなかった」と自分をエイリアスで捉えて客観的に、俯瞰して見ることができます。
ですから、いまエイリアスが会社と家庭にしかないのなら、会社の外で新たなコミュニティを見つけたり、会社のなかでも多面的にアクションを起こしたりして、エイリアスを増やしていきましょう。僕自身も、求められる内容によって、「テクノロジーに詳しい人」「マネジメントに詳しい人」「プレゼンに詳しい人」といったエイリアスを使い分けています。
誰だって、自分の得意分野を少しずつ増やしていくことで、会社のなかで複数のエイリアスを使い分けて活躍することができるはずです。そのなかで、最良のエイリアスでキャリアアップを図ってほしいですね。
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澤 円(さわ・まどか)
圓窓 代表取締役
1969年生まれ、千葉県出身。株式会社圓窓代表取締役。立教大学経済学部卒業後、生命保険会社のIT子会社を経て、1997年にマイクロソフト(現・日本マイクロソフト)に入社。情報コンサルタント、プリセールスSE、競合対策専門営業チームマネージャー、クラウドプラットフォーム営業本部長などを歴任し、2011年にマイクロソフトテクノロジーセンター長に就任。業務執行役員を経て、2020年に退社。2006年には、世界中のマイクロソフト社員のなかで卓越した社員にのみビル・ゲイツ氏が授与する「Chairman's Award」を受賞した。現在は、自身の法人の代表を務めながら、琉球大学客員教授、武蔵野大学専任教員の他にも、スタートアップ企業の顧問やNPOのメンター、またはセミナー・講演活動を行うなど幅広く活躍中。2020年3月より、日立製作所の「Lumada Innovation Evangelist」としての活動も開始。主な著書に『メタ思考』(大和書房)、『「やめる」という選択』(日経BP)、『「疑う」からはじめる。』(アスコム)、『個人力』(プレジデント社)、『メタ思考 「頭のいい人」の思考法を身につける』(大和書房)などがある。
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節約オタク ふゆこ(せつやくおたく・ふゆこ)
YouTuber
理系の大学院を修了後に電子系メーカーに就職。1カ月約10万円で生活して年間300万円を貯金し、20代で資産1000万円を達成。現在はフリーランスとして活躍中。YouTubeチャンネル「節約オタクふゆこ」では、日常的な節約法や投資について初心者向けに配信し、チャンネル登録者数は60万人を超える(2025年2月時点)。著書に『貯金はこれでつくれます 本当にお金が増える46のコツ』(アスコム)がある。
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(圓窓 代表取締役 澤 円、YouTuber 節約オタク ふゆこ 構成=岩川悟(合同会社スリップストリーム) 文=吉田大悟)
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