世代交代ができるマンション。その秘訣とは？

竣工してから30年以上経過したコーポラティブハウス「ユーコート」では、今、そのマンションで育った子どもたち（以下、第二世代）が大人になってから自分たちの家族と共にUターンしてくるという現象が起きている。築年数のたったマンションが第二世代をひきつけて止まない理由は何か？ 探ってみた。

京都の洛西ニュータウンにあるユーコートは48世帯からなるコーポラティブハウス。広々とした中庭など、豊かな緑が印象的なこのマンションは、1982年の居住者の会発足から3年間の話し合いを経て竣工。設計段階から、居住者間に密な交流があるため、48世帯が運命共同体として、この住まいをいかに住みよくするかを、考え続けてきた。

持続的で安心な住環境に対する、住民の高い意識が特によく表れているのは、ユニークな「再販ルール」だ。ユーコートでは、空室が出た場合、ユーコートの考え方に共感してくれる次の入居者を現在の入居者みんなで探す。もしこのマンションで生まれ育った「第二世代」が入居希望者のなかにいた場合は、第二世代がほかの希望者よりも優先されるというルールだ。

実際、30年間で48戸中の11戸が入れ替わり、そのうちの6世帯が第二世代に引き継がれているそうだ。また、入れ替わった入居者のなかには第二世代と同じ子育て世代もおり、現在ユーコート内には自然発生的に世代循環が起きている。京都駅から約20分の最寄駅から、バスでさらに約15分と決して便利とは言えない立地であるにもかかわらず、特に子育て世代は何かとサポートが必要なためユーコートの近くの洛西ニュータウンに住んでいるという第二世代もいるそうだ。

【画像1】竣工当時のユーコート。中庭の緑の中を駆け回って遊んだ子どもたちが、大人になり、ユーコート内に戻りつつある（画像提供／延藤安弘）

若い世代が自然に帰ってくるというユーコートのようなケースは、コーポラティブハウスならではの事象だと思われるかもしれない。

ユーコートをつくった「第一世代」である居住者の平家さんにお話を聞いたところ、ユーコートでは、敷地全体が「自分の家」という認識をもてるような、さまざまな取り組みを住民みんなで行ってきたそうだ。
例えば、中庭に生息する動植物の歳時記を作成したり、池の鯉を世話したり、ツバメの巣も修理するなど、ユーコートを舞台にしている生物への愛着を育んだり、住民が一体となり、共に楽しく過ごせるようなさまざまなサークル活動が今も続けられたりしている。

また、四季折々には、夏祭りやクリスマス、節分など、ユーコート周辺の住民たちも関心をもって関わり合えるようなイベントが行われているそうだ。「今年の節分にはユーコートの外に住む近所の子どもたちが、”あそこには鬼が出るらしい！”といってユーコートで行われた豆まきに集まってきていましたね」と平家さんが教えてくれた。

【画像2】第二世代が戻ってきて、再び子どもが増えてきたことで、子ども中心のイベントもにぎやかに行われるようになった。一方で、シニア層が増え、内容を変えたものもある。例えば、春のバーベキューは茶話会に変更。前回は48軒中42軒が参加したそう（撮影／河原大輔）

第二世代が成長し、子どもの声や姿がなく寂しい時期もあった中庭が7、8年程前から再び活気を取り戻している。今では第二世代の子どもたち、「第三世代」も数多くマンション内で生活しているそうだ。

ユーコートには、コミュニティ活動などを通じて培ってきた、「親戚のように見守り合う関係」がある。