ゼネコン業界の盟主である鹿島の社長交代がいよいよ現実味を帯び、業界関係者たちは色めき立っている。大成建設、清水建設、大林組もドミノ倒しのごとく交代する可能性があるからだ。

 鹿島では、就任10年目の中村満義社長(71歳)から、創業一族である渥美直紀副社長(65歳)または石川洋専務(55歳)への“大政奉還”が長年取り沙汰されてきたが、ここにきて土木管理本部長を兼任する茅野正恭副社長(63歳)の名前も挙がっている。

 茅野副社長は中村社長と同様に創業一族ではないが、かつて本社の秘書役も務めるなど、現場と本社中枢の両方を知る。実権を握る鹿島昭一相談役(84歳)の判断次第だが、今春にもトップ交代が発表されるとみる関係者は多い。

 そんな鹿島の動向にやきもきしていると思われるのが大成の山内隆司社長(68歳)だ。

 ゼネコンの業界団体である日本建設業連合会(日建連)の会長は鹿島、大成、清水の3社の会長から選出し、2期4年務めるのが慣例だ。中村社長が2013年4月に日建連会長へ就任したのは、異例とされる。

 中村社長が鹿島会長に昇格すれば日建連会長続投が濃厚だが、順当に鹿島会長になれるだろうか。鹿島がJV(共同企業体)の代表であるアルジェリアの高速道路工事は今なお同国政府と代金支払いをめぐって対立したままだし、国内の建築部門も赤字と満身創痍の状態にあるからだ。自社で会長にならなければ、日建連会長の途中交代もあるかもしれない。

 中村社長の前の日建連会長は清水が出しており、順番でいけば「次は大成」(業界関係者)。日建連会長は各社の会長であるべきとの考えも根強く、「山内社長は年齢的にも日建連と自社で同時に会長に就任するタイミングを望んでいるはず。ということは、中村社長の去就が大成のトップ人事にも影響する」(別の業界関係者)。

 もっとも、中村社長と山内社長は「犬猿の仲」とされ、「中村社長が山内社長に日建連会長ポストをあっさり譲るとは思えない」という声も強い。

3人は同じ研究室出身

 山内社長と清水の宮本洋一社長(67歳)、大林の白石達社長(67歳)は共に就任8年目で、東京大学工学部建築学科の同じ研究室出身。しかも宮本、白石両氏は同級生だ。白石社長は大阪が地盤の大林にあって東京での受注増を主導。創業家の大林剛郎会長(60歳)さえかすむ剛腕だ。一方で宮本社長は清水の本流である建築部門を手堅く勤め上げた人物だ。

 互いをよく知り己の実力に自負があるだろうライバル3人と中村社長がけん制し合って長期政権が続くか、鹿島をきっかけに各社で年内に交代が一気に進むか──。この春はスーパーゼネコンのトップ人事が熱い。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 岡田 悟)