筆者は、吉本でお笑いコンビ「オオカミ少年」で活動する傍ら、探偵事務所の代表を務めています。私の探偵歴十数年の中でさまざまな調査の相談を受けました。

これまでに詐欺被害に関する調査を何度か取り上げました。多種多様な詐欺の中でも、被害者を電話やWEB・メール経由などで、対面することなく信頼させて、指定した預貯金口座へ振り込ませるなどして、現金などをだまし取る犯罪の総称である、“特殊詐欺”の相談件数が急増しています。特殊詐欺には次々と新手の方法が確認されています。今回は認識が追いつかないほど増加している新手の特殊詐欺についてまとめます。さらには数日前に相談があった超最新の詐欺手口と対応策もお伝えしますので、あなたやご家族を守るための防御的知識としていただければと思います。(探偵芸人 オオカミ少年・片岡正徳、登場人文はすべて仮名)

特殊詐欺の被害は大都市圏に集中
7都府県の合計認知件数の割合は67.3%

 特殊詐欺が実際にどれくらい増加しているのか、2023(令和5)年の被害内容をまとめた警察庁の発表が下の表になります。

<主な手口>
○家族になりすます「オレオレ詐欺」検挙件数:2131件(前年比+360件)
※警察が把握した、電話の相手方に対して、住所や氏名、資産、利用金融機関等を探るなどの特殊詐欺が疑われる予兆電話の件数:13万3967件(前年比+1万3523件)

○医療費や保険料の払い戻しがあるなどとして金をだまし取ろうとする「還付金詐欺」の検挙件数:1061件(前年比±0件)

○預貯金口座や携帯電話の不正な売買等の特殊詐欺を助長する犯罪:3803件(前年比+162件)

○その他、高齢者らをだましてキャッシュカードを用意させ偽のカード類とすり替える「カード詐欺盗」や、郵便・インターネットなどで架空の料金を請求する「架空料金請求詐欺」など

 被害は大都市圏に集中しており、東京・大阪・神奈川・愛知・埼玉・千葉・兵庫、7都府県の合計認知件数の割合は、全国合計の67.3%に当たります。

 これらは認知されている件数なので、実際の数はその数倍と推量されています。

 主な詐欺の手口については、自治体・警察・テレビ・新聞・インターネットなどで注意喚起されているので、ご存じの方も多いとは思います。

 ここからは新たな手法として認識されている詐欺手口をご紹介いたします。

国民生活センターを装った
驚きの手口も

○クレジットカード現金化詐欺

 クレジットカードで現金化できると勧誘し、クレジットカードのショッピング枠で商品を購入させ、それを買い取り屋が現金で買い取ることで、現金化をするというもの。

 こういった行為自体がクレジットカード契約に違反する行為です。

○国民生活センター紹介詐欺

 実際に詐欺被害に遭った方に解決方法をアドバイスするという口実で、国民生活センターを有料であっせんするという手口。

 返金を求める書面の作成を有償で代行した後、解決できない場合に国民生活センターなどに丸投げする手口も確認されています。

 通常はこれらの機関を有料であっせんすることはあり得ません。

○高齢者俳句詐欺

 高齢者に対し、「自身のオリジナル俳句や短歌を新聞に掲載しませんか?」と勧誘してきて、掲載したと偽って高額な掲載料を請求するという手口。

 高齢者の趣味を利用した悪質な詐欺で、電話での勧誘が多い傾向にあります。

○被保険者証の詐取

 市役所の職員などを装い「被保険者証の更新のために、古いものを回収にきました」などとうそをついてだまし取ろうとする手口。

 このような詐欺手口を耳にした方もいるとは思います。

日々新たに巧妙な手口が
開発されている

 ここからは国民生活センターに寄せられた新たな詐欺の手口をご紹介いたします。

○ネットショッピング代金を「○○ペイで返金します」詐欺

 ネットショッピングで商品を購入した消費者が、販売業者から「商品の在庫がないので、決済アプリを使って返金する」と言われ、スマートフォンで返金手続きを誘導されているうちに、「返金」してもらうはずがいつの間にか「送金」させられていたという手口。

 インターネット通販で約7000円のアクセサリーを購入しました。支払い方法は銀行振り込みのみで、事業者に振り込み完了メールを送った後、「在庫が欠品しているため注文をキャンセルします」というメールが届きました。

「払い戻しは○○ペイで行います」との内容で、LINEの友達登録をするよう指示があり、ビデオ通話で指示をされるがまま、言われた数字を○○ペイに入力しました。

 何度か相手から「失敗している」と言われ、複数回操作した結果、約10万円を送金していたことが分かりました。

○パソコン遠隔操作詐欺

 インターネットバンキングで振り込もうとしたら、パソコンを遠隔操作され、金額の桁が勝手に増やされるという手口。

「ウイルスに感染しました」と表示されたため、画面の表示に従って自宅の電話番号を入力すると、マイクロソフトの社員を名乗る男から電話があり、指示通りにURLや6桁の数字を入力しましたが、それは市販の遠隔操作ソフトのインストール手順でした。

 さらに指示は続き、ウイルス解除費用を要求されるままネットバンキングで1万円振り込み、さらに手数料名目の490円を振り込むように誘導されました。

 目を離した隙に遠隔操作で振込金額に「0」が3つ加わり、49万円が送金されてしまいました。

 このような巧妙な手口が日々、開発されています。

防御のための知識として知っておいてください。

21歳女性コンビニ店員に
かかってきた不思議な電話

 ここからは、これから明るみに出るであろう詐欺に関する相談がありましたのでご紹介します。

 熊代希美華さん(21歳女性)は勤め先のコンビニでの勤務中に電話を受けました。

男性「もしもし、子ども生活センターの者ですが」
希美華さん「はい」
男性「そちらに20代の女性で弟さんがいらっしゃる方はいますか?」
希美華さん「私に2つ下の弟がいます」
男性「非常に大事なプライバシーに関わることですので、ご本人確認をしたく、お名前お伺いできますか?」
希美華さん「熊代希美華です」
男性「おいくつですか?」
希美華さん「21歳です」
男性「弟さんのお名前は?」
希美華さん「翔です」
男性「ご本人確認が取れました。数分お話は可能ですか?」
希美華さん「はい、今でしたら」
男性「では希美華さんのお電話にかけ直しますので、番号を教えてください」
希美華さん「はい、(個人所有のスマホの番号を伝える)」

 程なくスマホにかかってきた電話は“非通知”でしたが、希美華さんは通話を開始しました。

男性「希美華さんの弟の翔さんから相談を受けました。

翔さんは希美華さんを姉ではなく女性としてしか見られなくなったそうです」
希美華さん「……(パニック状態)」
男性「つきましては、解決に向けてお話しさせてください、今から大丈夫ですか?」
希美華さん「今は仕事中ですので、明日の午前10時はいかがでしょうか?」
男性「分かりました、ではかけ直します」
希美華さん「すみませんが、なんで非通知なんですか?」
男性「プライバシーを守るためと、間違った番号にかけてしまった際の対策で非通知でかけています」
希美華さん「担当の名前を教えてください」
男性「私は確認担当ですので、明日正規の担当者からの電話の際にお伝えします」

 電話が切れた後の希美華さんは、弟の翔さんの顔が浮かび、胸が苦しくなったそうです。残りの勤務時間は放心状態でほとんど記憶がなく、退勤後は翔さんと両親と住む家に帰る気になれず、車の中で一夜を過ごしました。

※本稿は実際の事例に基づいて構成していますが、プライバシー保護のため個人名は全て仮名とし、一部を脚色しています。