江頭2:50を筆頭にお笑い界で唯一無二の芸人を輩出し続けている大川興業が、今年で結成から約30周年を迎えた。大川興業の設立者である大川豊総裁がリアルライブ編集部だけに、現在の心境や今後の展望を明かした。



 「絶えず前進なんで、あんまり何周年ていうのは感覚ないですよ。意識がなくて」と意外とあっけらかん。大川興業は1983年に大川豊総裁が明治大学在学中に5~6人で結成したパフォーマンス集団で、1985年に法人化し、大川興業株式会社を設立した。

 「大学時代に、オシャレな学生たちの仲間に入れない人たちの間で結成したのが初まりで、貧乏学生が集まってテレビに出ればお金になるっていう、単純な考えだった(笑)」と結成秘話を明かした。

 結成当時は、校内やストリート、居酒屋などでパフォーマンスを披露していたようで、「たぶん、一気コールは俺たちが元祖ですよ。俺たちが居酒屋で一気コールをやっていたのを、サラリーマンや他の学生が真似して、スゴいブームになって。
歌舞伎町では謎の集団って呼ばれていたんですけど、段々と名前が知られて、他の大学の学園祭に呼ばれたり、テレビの視聴者参加番組に出演するようになりましたね。最初の頃は、俺たちの存在が都市伝説になってたらしいですからね(笑)。上半身学ラン、下半身スッポンポンで走ってたりしてましたから」と笑い飛ばした。

 テレビに出演するようになってからは、「当時、アルバイトの時給が500円ぐらいだったんですけど、テレビに1回出演すると3万円ですから、かなりおいしい。視聴者参加番組に出演すると、時々サイパン旅行やバリ島旅行が当たったりして…。みんな、稼いだ金で授業料払ったりしてました」と環境がガラリと変わったという。


 その後、大川総裁は就職活動に励むが、153社落ちて内定を獲ることはできなかった。「たぶん、日本一の記録ホルダーですよ。今でも破られていないと思うんですけど(笑)。トヨタだろうが、三菱だろうが、ソニーだろうが受けましたよ。大手町に自転車を置いて、面接会場を回ったのを憶えています」と振り返った。就活後、自分で仕事を生み出した方が早いと考え、自ら代表取締役となり大川興業株式会社を設立した。


 大川興業といえば、江頭2:50の芸風から見ても分かる通り、かなり過激かつ個性的な芸人の多い芸能事務所であるが、過激な芸に対して苦情に悩まされた過去はないという。「嫌がらせを受けた事は一切ない。当時、地下鉄サリン事件が起きた時にオウム真理教ネタや、まだタブーとして扱われていた北朝鮮ネタを全国ツアーのライブでやっていたのに、一回も苦情がきた事がない。でも、テレビ局には多少苦情がきたかもしれないですね(笑)」と意外な返答。現在まで倒産の危機もないが、「今でも借金は7000万円~8000万円ぐらいあるんじゃないですかね!?」と告白。しかし、「まぁ、返済できる時に返済していきますけど…」と全く動じていない様子だった。


 現在は10人ほど芸人が在籍している大川興業。今もオーディションを行っているが、過去にはバレエダンサー、肩を外して振り回す人、宇宙人を呼べる人など、個性的な人物がオーディションに集まったという。また、大川興業主催のお笑いライブ「すっとこどっこい」には、他の事務所に所属するくりぃむしちゅー、キャイ~ン、ドランクドラゴン狩野英孝などがゲスト出演していた過去があり、その後ブレイクの道を辿っていったそうだ。

 売れていない芸人、売れた芸人を数々見てきた大川総裁は、お笑い業界の変化について指摘。「昔はドロップアウトした子たちがお笑いやるって感じだったけど、今では逆。学歴があったり、ある程度の会社の息子だったりだとか、エリートコースなんですよね。
もう、行き場がなくなった人たちの場所じゃなくなっている」と分析。

 さらに「YouTuberが増えたり、今後もっと個人で芸を披露する人が増えていく可能性がありますね。だけど、結局資本を持つ所が一番強いんですよ。この世界っていうのは。だから、貧乏でも勝ち上がれるシステムを作りたい。うちは、ネタ見せに合格すれば誰でもライブに出れますから。
今は、何十万円も払わないとお笑い学校に入学できなくて、さらにライブでもチケットノルマを自腹で払うこともありますからね。そこがうちとは違いますね」と大川興業の強みを語った。

 そして、今の若手芸人たちに「今の若手芸人を見ていると、『本気でお笑いがやりたくてやっているか』っていう疑問を抱くような人たちもいますよね。最初は、テレビを観たのがきっかけで、憧れでチャレンジするのは良いんですけど、“本当になりたい”っていう部分で、どうなのかなと。相当な覚悟がないと、他の仕事で面白いことやった方が早いよね」と厳しいエールを送った。

 しかし、「全員がオリンピック選手になれないっていうけど、俺からするとお笑いの場合は、オリンピック競技を作れる立場なの。自分で競技を作って勝手にやってみろと。ないんだったら作ればいいっていう」といまだブレイクせずにくすぶっている芸人たちに気合いを注入。

 最後に今後の目標については、「特にない」と答えたが、「個性を伸ばせる環境作りをしていきたい。それが大川興業のやるべきこと。やりたいことをやれる場を与えて、あとは俺が借金すればいいだけですから。簡単な事ですよ」と総裁らしいコメントで締めくくった。

【プロフィール】
大川豊 1962年2月14日生まれ。東京都出身。明治大学卒業。
「大川興業約30周年期年感謝祭」
出演:大川豊、江頭2:50、阿曽山大噴火、寺田体育の日etc
ゲスト出演:モロ師岡、北野誠、グレート義太夫etc
日時:10月30日(木)~11月3日(月・祝)
会場:「下北沢ザ・スズナリ」
チケット:前売り3000円 当日3300円
全公演、別内容、別出演者となりますので、詳しくは大川興業HPhttp://www.okw.co.jpをご覧ください。
※11月2日(日)「江頭2:50×寺田体育の日」は満員御礼です。その他は当日券あります。
※無料公開ニコニコ生放送もあります。