>>>その1より

アイドル過酷事件簿・その2
パフォーマンスよりも体力作りが大事!?

 番組収録中に起きた事故といえば、元モーニング娘。の紺野あさ美が、グループ加入直後の2001年10月、TBS『うたばん』内でセットから転落し、右ヒザを12針縫うケガを負ったこともあった。


 この一件が教訓になったのか、その後、ハロプロメンバーがテレビ番組で大きな事故を起こしたことはない。ただ、本業といえるコンサートやそのリハーサル中のケガは、たびたび発生している。2014年末に「モーニング娘。’15」の鈴木香音が左足首の靭帯断裂、同じく佐藤優樹が右ヒザの捻挫を負い、一部コンサートに影響を及ぼしている。
「ケガの診断を受けたのが12月の末だったため、12月31日のカウントダウンイベントや年明け1月2日からのコンサートツアーに影響が出ました。とはいえ、簡単には休ませてもらえないのが、アイドル稼業の過酷なところ」(前出・ライター)
 大晦日のイベントでは、靭帯断裂の鈴木は不参加だったものの、佐藤は歌唱のみで参加。
年明けのツアーになると、鈴木も途中から歌唱のみで参加している。座って歌うぐらいなら、しっかり休んだ方がケガの治りも早いように思えるが……。
「完全に不参加では、チケットの払い戻しも考えなければいけなくなる。鈴木や佐藤を見るためにチケットを買ったファンにしてみれば、ひとりがいないだけでもコンサートそのものが無価値になります。とりあえずステージに上げてしまえば、チケットに記載されている『出演者』に嘘はなくなります」(前出・ライター)

 同じハロプロに所属する「アンジュルム(旧スマイレージ)」の和田彩花も、2012年の秋ツアー中に右足首靭帯を損傷したが、イスに座りながらステージで歌い続けた。2013年7月、「Juice=Juice」のセンターを担う宮本佳林が歩行中に転倒し左立方骨骨折を負った際も、コンサートやイベントにはイスに座ったまま参加した。


「ハロプロでは、パフォーマンス力を売りのひとつにしています。確かに、他のアイドルグループと比べれば、ダンスや歌のクオリティーは高い。でも、それだけ身体への負担が大きいともいえます。まだ体が成熟しておらず、筋肉量も少ないローティーンの女の子が、高いヒールの靴を履いて激しいダンスを踊り続ければ、ケガを負ってしまうのも仕方がない」(ダンスインストラクター)
 一番問題なのは、「技術的なことばかりに力を入れ、『ケガをしない体づくり』を疎かにしていること」だと続ける。
「ハロプロには、腹筋や腕立て伏せすらろくにできないメンバーがたくさんいます。EXILEの妹分のE-girlsでは、ストレッチや筋力トレーニングにもかなりの時間を割いています。
活動の方向性に違いはありますが、ハロプロが今後もパフォーマンス力を売りにし、なおかつケガ人を出さないようにするためには、体力トレーニングにもっと力を入れるべきですね」

 過日、モーニング娘。を卒業した道重さゆみ。彼女がまさに「腕立て伏せができないメンバー」だった。それでも年々激しさを増すダンスパフォーマンスについていった結果、コンサート中にしばしば肉離れを起こした。2014年11月の卒業コンサートの際も、足がつって動けなくなった。サブリーダーの譜久村聖が心配して駆け寄る姿が、ファンの涙を誘いもしたが、要は道重の体力不足にほかならない。


 肉体作りに力を入れないまま、ハイヒールで激しいダンスを躍らせる。多少のケガなら、ステージに上がらせる。2011年、左足関節の疲労骨折が発症し、完治しないままグループを去ることになった光井愛佳は、そうしたやり方の被害者といえるかもしれない。
 ファンが本当にアイドルのことを思うならば、足を引きずりながらパフォーマンスする姿に涙するよりも、休まずに努力ばかり続けるアイドルに対して、優しい言葉を投げかけることが必要ではないか。

>>>その3(最終回)につづく

(文・小室哲太)

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