羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな芸能人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。



<今回の芸能人>
「超ペコペコしてんじゃん」IMALU
『幸せ追求バラエティ金曜日の聞きたい女たち』(フジテレビ系、8月12日)

 バラエティ番組で“二世”をよく見かけるが、“ウケる二世”の条件とは何だろうか? まず1つめは、親の知名度が高いこと。2つめは、親に顔が似ていること。美男美女であるより、「親に似てる」方が宣伝効果は高い。3つめは、そこそこいい仕事するが、親ほどの実績はないこと、またそれを気に病まないメンタリティも必要である。親のおかげでラクして芸能界に入った分、成功もしない。プラスマイナスゼロで、視聴者からの嫉妬を回避することができる。


 お笑い怪獣・明石家さんまと大女優・大竹しのぶの間に生まれたIMALUは、本来なら“最強の二世”の座にすぐにつけそうにも思われだが、そうとは言いがたい。IMALUがあまりに不出来だからである。

 『しくじり先生 俺みたいになるな!! 3時間SP!』(テレビ朝日系)でIMALU本人が明かしたところによると、デビュー早々、親のご威光でIMALUにはビッグな仕事が舞い込む。「Zipper」(祥伝社)でモデルデビュー、連続ドラマ出演、山口百恵松田聖子新垣結衣などトップアイドルが起用されてきた製菓会社のCMに出演、そのほかにも『おしゃれイズム』(日本テレビ系)のゲスト、『A‐STUDIO』(TBS系)のアシスタントMCを務め、アニメ声優、歌手としても活動していた。全部結果が伴わないが、IMALUは焦らない。なぜなら、親がビッグネーム故にIMALUを怒る人がいないこと、結果を出せなくても、親のおかげで仕事が舞い込むから危機感がないのである。


 その後、大竹とのバーターの仕事ばかりになったIMALUは、自立の必要性を感じ、親の事務所から独立して、自分で新事務所を立ち上げる。事務所のために稼ぐ必要にせまられたIMALUは、トーク番組で「ダメな自分」について話し始めたようだ。8月12日の『幸せ追及バラエティ金曜日の聞きたい女たち』(フジテレビ系)では、2年間彼氏がいない理由を「条件が細かいから」と分析した。IMALUは些細なことで相手に対して冷めてしまうらしい。例えば、年上の彼と付き合っている最中、彼が取引先の部長に遭遇したところ、頭を下げながら商談を始めたのを見て、「超ぺこぺこしてんじゃん」と引いてしまったらしい。

 IMALUは子どもの頃から、さんまにぺこぺこする大人を見て育ってきているので、そういう人が嫌いだそうだが、さんまに媚びる大人も、元カレも、なぜそうしているかと言うと「仕事だから」である。
頭を下げて仕事をもらい、その結果もらった金で生活しているのだ。

 またIMALUは、アイコンが自撮りの自分大好きな男性にも冷めるそうだ。なぜなら、さんまが夜中に自分の出演した番組を必ず見て、大笑いしている姿を連想させるからだそうだが、これもさんまは、自分が好きというより、「仕事のため」にチェックしているのではないだろうか。

 番組名は失念したが、以前千原ジュニアが、ビートたけしについて「キー局はもちろん、地方のテレビ局のお笑い番組を見て、手のチェックを怠らない」と持ち上げ、当のたけしが「面白いやつは早めにつぶしておかないと」と答えていた。これもまた「仕事のため」と考えることができるだろうが、何もしなくても実力以上の仕事が舞い込むIMALUには、大御所には大御所の危機感があることを理解できないのだろう。

 このほかにもIMALUは、「(男性の)靴下の色が変だと冷めてしまう」など、自分が恋愛しにくい体質であると説明していたが、“恋多き女”として知られた母・大竹とは大違いである。
大竹の恋の相手は、さんまをはじめ、中村勘三郎、TBSのプロデューサー・服部晴治、野田秀樹と職種に統一性はないものの、『ボクらの時代』(フジテレビ系)において、例のねっとりした口調で「才能のある人が好き」と語っていた通り、全員各分野の一流の男性だ。交際相手から受ける影響は大きいものだが、そう考えると、結果的に大竹の恋愛は「仕事のため」になっているのではないだろうか。IMALUの元カレも、さんまも、大竹も、職種やアプローチは違えど「仕事のため」を実行している。それに対し、IMALUがしていることは、単なるダメ出しである。

 オオモノの娘として育ったIMALUには、いくら理屈で説明しても「仕事のため」は理解できないだろう。しかし、だからこそIMALUが、今後、“最強の二世”になる可能性は十分にある。
なぜなら「結婚しないオオモノの娘」というのは、バラエティ番組のテーマとして成立しやすいので、一定の需要があるからだ。お父さんが怖く(さんまは、芸人たちに『IMALUに手を出したら殺す』と話しているそうである)、芸能人というほど外見に秀でているわけではない、そこはかとない上から目線の女性は、男性が最も敬遠するタイプであり、バラエティ番組でウケるだろう。「IMALUもいい年やけど、結婚せえへんねん」、さんまがそうもらすとき、IMARUは“最強の二世”になれる。そして、その日は案外近い。

※仁科友里(にしな・ゆり)

※画像は「そんな名前 欲しくないよ」/ユニバーサル・シグマ