アメリカで2010年に放送が始まってからというもの、高視聴率をマークし続けている大ヒットドラマ『ウォーキング・デッド』。ウォーカーと呼ばれる大量のゾンビと人間たちの戦いはもちろん、一筋縄ではいかない人間模様が「最高におもしろい!」と世界中で爆発的にヒットしている。
その中で、“知性も知識もある男だが、臆病で不器用な性格”というクセのあるキャラクター、ユージーンを演じているのが俳優のジョシュ・マクダーミットだ。ジョシュ自身はユージーンとは対照的な気さくで穏やかな性格。インスタグラムに共演者との画像をたくさん投稿したり、SNSを通して積極的にファンと交流することでも知られ、ドラマのファンから人気を集めていた。
ネタバレになるので詳細は伏せるが、昨年10月~今年4月に放送されていた『ウォーキング・デッド』シーズン7で、ユージーンは悪い意味で大きな変化を遂げた。この変化を不服に思った視聴者が、ジョシュのSNSに「死ね」といった言葉を書き込むなど攻撃。以前から「ネットいじめ」に嫌気が差していたジョシュは“反撃”に出た。
英大手メディア「BBC」によると、ジョシュはシーズン7最終話が放送された後、ストリーミングサービス「Facebookライブ」を使って動画を配信。「頼むからさ、“殺す”とか脅迫するのをやめろよ……すべて警察に通報するからな。うんざりなんだよ。ユージーンが嫌いならそれでいいさ。どうぞご勝手に。お前さんの考えが間違っていると論じることもできるけど、どう思うかはその人の自由だからね」と述べた上で、「“死ねばいいのに”とか言われるとさ、ジョシュに対してなのか、ユージーンに対してなのかわからないじゃないか。
続けてジョシュは、「ネットで文句垂れるのはやめよう。マジで。そんなことより、家族や友達や愛する人と一緒に時間を過ごそうよ。インターネットから離れようぜ」とスナックをぼりぼり食べながら提案し、「ほかになにかあるかな?」「愛してるよ、ってこと。意外にさ」とつぶやく。
そして、ジョシュはこの配信を最後に、Twitter、インスタグラム、Facebook、すべてのアカウントを削除。SNSから去ってしまったのだ。
彼は、これまでにも「ネットいじめ」を厳しく取り締まるべきだと主張。『ウォーキング・デッド』でタラ役を演じているアラナ・マスターソンが産後にカムバックした際、ネット上で「太った」とバッシングされたことにも大激怒し、米リベラル系サイト「ハフィントンポスト」のインタビューで「ふざけんな!」とぶちまけたことがあった。「マジで腹立つよな。
熱烈なファンが多い『ウォーキング・デッド』のキャストたちは、「演じている役の行動が気に食わない」とSNSで攻撃されることが少なくない。ジョシュやアラナだけでなく、アンドレア役のローリー・ホールデンも「“校庭で囲まれて、いじめられてるみたい!”って思ったわ」とコメント。ローリー役のサラ・ウェイン・キャリーズは、「別に私のことを好きになってもらいたいわけじゃない。演じている物語にハマってもらいたいだけ。だから、演じているキャラを叩かれても別にかまわない。それだけちゃんと仕事ができてるってことなんだから」と華麗にスルー。
ニーガン役のジェフリー・ディーン・モーガンも、確実にバッシングされると予想されるエピソードが放送される前に「(この展開は)めちゃくちゃ楽しみ!」と前置きした上で、「その手のバッシングを受け止める準備も整ってるぜ!」と先手を打っており、ダリル役を演じているノーマン・リーダスも「オレからノーマン・リーダスのアンチへ」というツイートと共に中指を立てる写真を投稿し、話題になった。
SNSを全削除したジョシュに同情する声は多く、彼の行動を支持する書き込みがTwitterなどに多数投稿されている。しかし「演じるキャラクターのせいで、自分のアンチが増える」というのは役者にはよくあること。サラのように「それだけアタシの演技がうまいってことよね」とサラッと流したり、コメントを削除したり、まったく相手にしない役者も多い。そのため、ネット上では「ジョシュには気の毒だけど、深刻に受け止めすぎている」「真面目すぎ」という声も上がっている。
「シーズン8では、ユージーンがもっとひどくなっているから、怖くてSNSを全削除したんじゃないか」という憶測も流れているが、ひょっとしたらそれも理由のひとつなのかもしれない。手に汗握る展開が続く『ウォーキング・デッド』シーズン8は、アメリカで10月に放送開始される予定だ。