さて、今回もやってきました。深夜の飯テロ番組『孤独のグルメ Season6』(テレビ東京系)。

今回の食材は回転寿司。

 回転寿司といえば、やはり思い出すのは原作の神回。まあ、この作品に関しては原作はすべてが神回なのですが。今回は回転寿司がどのように扱われるのか……。期待と共にチャンネルを回しましょう。

 ゴローちゃんこと井之頭五郎(松重豊)が営業にやってきたのは、世田谷区太子堂。
これまた、なんか用がなければ東京都民でも近寄ることがなさそうな街。個人事業主のゴローちゃん。どんな小商いでも颯爽として訪れるフットワークの軽さが成功の秘訣です、多分。

 さて、いざお店に入れば、中にいるのは山下リオ……が、泣いているという演出。ここで、いったいどんなシナリオなんだ? と、視聴者をドキドキさせようという狙いでしょうか。

 しっかし、山下リオはかわいい。
そして、泣いているリオはもっとかわいい……。制作陣はいろいろとわかっている人たちですね、相変わらず。

 でも、仕事に来て相手先で人が泣いてたら、フツーにドン引きの反応ですよね。

「失礼しました……えーっなになに……」

 OPを挟んで、物語は再開。こちらはステンドグラス店。どうも、ゴローちゃんが何かの発注に来た様子。
そして、リオが泣いていたのは、映画を見て感動のあまりということ。

 なるほど、お店は暇なのでしょう。

 そんなお店で、昼日中からリオが見て泣いていた映画は『仁義なき戦い 広島死闘編』。共感を求めてくるようなリオの語りに、ゴローちゃんも苦笑いするしかありません。

 そして、ようやく明らかになる今回の訪問の目的。うん、なんか冒頭からちょっと溜めが長い。
溜めが長いということは、爆発力もいつも以上の予感。

 今回ゴローちゃんが求めるのはフロアスタンド。大阪の分譲住宅のモデルハウスで扱うものだということです。

 そこに店の奥からリオの祖父・林豪が「あんた、釣り好き?」と現れます。この顔を見ると何か事件が起こりそうな気がしますが、なぜか、執拗にゴローちゃんを釣りに誘う若林。一方、リオはステンドグラス教室に誘うしで、ゴローちゃんも「なんなんだ、この人たち」と、苦虫をかみつぶすしかありません。


 そんな時間を過ごせば、やってくるのは空腹。

「何を狙う、俺が釣り上げるべき食い物はなんだ」

 ちゃんと、小芝居が伏線にはなっている絶妙なセンス。太子堂界隈のわんさかとある食い物屋を、ケモノのような目で物色したゴローちゃんは、ついに到達します。

「そうか、釣りとくればこれじゃないか」

 首都圏の人にはおなじみの回転寿司チェーン「すし台所家」。

「座っているだけで回遊してくる魚を釣り放題だ」

 さあ、原作でも「最後の2枚が……」と、ラストの満足感ある煙草で一服するコマが印象的だった回転寿司回。『事件屋稼業』をも彷彿とさせるハードボイルドな物語は、ドラマでどのように描かれるのか。


 まず、湯飲みに描かれた寿司の絵を見て「随分かわいいな」などと、初めてでもない回転寿司に物珍しさを感じるゴローちゃん。いきなり、粉茶を入れすぎる大失敗。それに懲りたのか、ガリは「こんなもんかと」控え目に。

「よーし、今日はなんで口火を切るかな。順当にマグロからいくか……」

「赤身で小手調べだッ」

 食べ物屋さんで「小手調べ」なんて言葉を使えるのも、ゴローちゃんくらいのものでしょう。

「うーん、回転らしいマグロ色だ。うん、美味い大丈夫」
「ふっ、うーん、これで120円は安い……」
「この店、アタリかも……」

 いや、台所家は回転寿司の中でも、安くてうまさが際立つ部類のチェーンなんですよね、実際。アタリとかいっている場合じゃなくて常識ですよ、はい。

 ポジション取りのミスに気づきつつも「遠慮なく注文してくださいね」の職人さんの声にホッとして、イカを注文するゴローちゃん。

「いつも行く寿司店とは大違いだが、酒も呑まない俺には、こっちのほうが気軽で居心地がいい」

 ひそかに回らない寿司が標準となっている自分を自慢するゴローちゃん、いったい、誰に自慢を?

 回転寿司でも丼もののメニューが増えていることを不思議に思いながら、まずは周囲を観察しつつ食べ進めるゴローちゃん。

「けっこう入ってるな、人気店なんだ」

 次は鯖か鰺かと、一瞬悩むゴローちゃんですが、光りもの三種を見つけてさっそくオーダー。

「呑兵衛には昼呑み天国か……」

などと、今回はまた観察の時間が長め。まだまだ、音楽は通常モードで溜めの時間が続きます。

 続くオーダーは真鯛の潮汁。その間にも隣の客が頼んだ鉄火丼がちょっと気になったりと、落ち着かないのがゴローちゃんです。

「胃が染みる、癒やされる……」

などと、周囲を観察していれば、そこには、あぶり大トロをオーダーする女性が。

「あの人、高い皿ばっかり……」
「値段に惑わされるな、己の直感を信じて……」

 直感の注文の炙り穴子は正解。

 そこに、隣の席の客が立つのですが、2人で1万6,800円。「そんなに食ったのか」と驚きながらも、なぜか決意を固めるゴローちゃん。

 大赤えびはネタの大きさに四苦八苦しつつも満足。「これで300円で大丈夫か」となぜか、お店を心配する優しいゴローちゃんです。

 そして、そろそろかかってくるエンジン。そのスタートは、まぐろ三種。

「回転寿司店の贅沢食い まぐろ三貫で580円」

と満足したつもりが、鉄火丼をおかわりする隣の客に驚きを。

 で、ここで突然のインターミッション。かにサラダ軍艦を入れて、ここまで9枚。まだいけるということで、箸休めにもう一品は茶碗蒸し。

「茶碗蒸しは、いつだって優しい。お、銀杏もちゃんと入ってる」

 そして、隣に新たな客・岡本麗が入ってきたのを合図にするかのように特上ウニを注文。しょうゆを垂らせば、特上ウニは極上ウニへ。

 ならばと、次の注文をしようとしたところに「限定のトロハマチ入ります!」の声が。

 なぜか、客がここぞとばかりにトロハマチを注文。

 しかし、タイミングを逃してしまうゴローちゃん。ぜんぜん、トロハマチが来ません。そこで本領を発揮するのが、岡本麗。

「すみません、さっきから注文してるんですけど!」

 なるほど『はぐれ刑事純情派』(テレビ朝日系)でおなじみの、押せ押せなオバサン役がここでも生かされているというわけか。この人、昔は日活ロマンポルノで縛られたり凌辱されまくってたんですけど、演技の幅広いな……。

 そんな岡本、ちゃんとゴローちゃんの注文が通ってないのを職人に。

「困ったときはお互い様ですから」

 この『はぐれ刑事純情派』的な親切もいいんですけど、今回はマダム風なキャラなので、妙にインパクトのあるマダム風な食べ方をしているのが、気になります。

 ならば、次は胃袋の破裂までなにを、と思いきや、ゴローちゃん締めに入ってきました。

「回転寿司もいいもんだ」
「思いも寄らないネタが飛び出してくるし、楽しいメシも食えた」

 ま、まさか、これで終わり?

「ふっ、楽しみすぎだろ」

と、周囲の客に対しての、なんかよくわからない優越感。

 そして、会計しようとしたところに、入ってきたのはやたらにぎやかな濱田岳。というか、いきなり20時台のドラマ『釣りバカ日誌 Season2 ~新米社員 浜崎伝助~』とタイアップ。

「何がオススメですか?」

と聞く濱田に対して、岡本は口に物を含んだまま「トロハマチ」。

 そして、濱田は真鯛の皿を何枚も取りながら……

「真鯛か、釣りたかったな、釣りたかったな」

 それぞれの役者が、これでもかと演技を繰り出すのですが、口に物を含んだまま「トロハマチ」という、泥臭さ全開の演技をできる岡本は圧倒的ではありませんか。

 回転寿司店を舞台に、どんな展開になるのかと思いきや、ゴローちゃんがゲストの引き立て役という印象の強かった今回。インパクトのあるゲストとの絡みを上手に魅せることができるのも、松重ゴローならではの魅力でしょうか。

 しっかし、あらためて「台所家はうまい」と感じることのできる回転寿司回でありました。
(文=昼間たかし