覚せい剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける中野瑠美さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。

■刑務官が懲役の手先に

 今回は、刑務所を長く取材している記者さんにも驚かれた「とっておきの獄中恋愛」のお話です。



 男子刑務所には、女性の職員は1人もいません。あまりにも危険ですからね。ちょっと前に法務省の「特別矯正監」をされている杉サマこと杉良太郎さんが「男子刑務所に女性職員を増やしたい」とおっしゃってましたけど、絶対ムリですね。「レイプしてくれ」って言ってるようなもんです。実は、以前は刑務所でレイプ事件が本当にあったと聞きました。今はどうですかねえ。
めくれて(発覚して)ないだけですかね。

 1966年と半世紀も前の話ですけど、松山刑務所(ちなみに所在地は、愛媛県松山市でなく東温市内)では、男性の受刑者や看守による女性受刑者へのレイプ事件がありました。

 本当に映画みたいな話で、ヤクザの受刑者が看守を脅して鍵を取り上げ、所内でバクチや飲酒・喫煙、そしてレイプまで行っていたのだそうです。「松山刑務所強姦事件」でググると少し出てきますよ。当時の国会でも問題になりましたが、関係者の自殺などもあって、法務省がもみ消したそうです。

 そして、そのレイプの被害者の1人に、あの「福田和子」がいてたそうなんですよ。
松山ホステス殺害事件より前に起こした別の強盗事件で服役していて、法務省からレイプの被害届けを取り下げさせられたそうです。それからだいぶたって、和歌山刑務所で「和ちゃん」と呼ばれてた福田さんと私が出会うわけですが(笑)、これもご縁ですかね。

 なんでこんなことが起こるかっていうと、懲役(受刑者)が看守を手なずけるんですね。まずは、わざと困らせます。とにかくちょっとしたことで看守を呼び出すボタンを押すんです。呼出音が鳴るたびに看守は急行しなくてはなりませんから、そのうち「ええかげんにしてくれや」ってなります。
そしたら「じゃあ、おとなしくするから切手を1枚ちょうだい」とか簡単な要求をします。これに応じたら、看守はもう「負け」なんですね。「懲役にモノを渡したな。規則違反じゃねえか。上司にバラすぞ」と脅かして、要求をエスカレートさせていくんです。

 これはわりとポピュラーな手口で、若い看守はけっこうやられてますよ。
さすがにレイプを要求するような懲役はもういてないでしょうけど。



 女子刑務所では、さすがにこんな大事件はないし、男性職員も多数いてます。所長なんかほとんど男性ですし、もともと女性の刑務官は多くないですからね。

 そこでナニが起こるかというと、やっぱり「不適切な関係」なんですね。私ら懲役は男と接触できない生活ですし、警察官や刑務官は職業柄か女との出会いが少ないので、懲役と職員はすっかり「恋人気分」です。

 もう時効ですけど、私もありましたよ。
私の場合は警察署の留置場の担当で、警察官でしたね。夜間の見回りの時に、房の前に来てくれるんですが、「起きてるか?」って聞かれるのがうれしくて、わざと寝たふりをしてました。

 チューとか普通にしてましたし、ドアについている食器口(食器を出し入れするための小さい扉)は自由に開けられるので、そこから手を出して、話しながら手をつないだり。さすがに「挿入」はなかったですけど(笑)、けっこうラブラブでした。お菓子をもらうとか、外に連れ出してもらうとかもないですけど、真顔で「俺、お前好っきゃねん……」とか「ここから逃がしてやりたい」とも言われましたよ。「ホンマ逃がしてほしいわ……」と思いましたけど、逃げなくてよかったです。
罪が増えるだけですからね。

 そんなわけで、ムショにも楽しい思い出がいくつかあります。塀の中みたいな特殊な空間の「色恋沙汰」は楽しかったですよ。もう一度、あの看守さんに会いたいけど……。こんなこと書いちゃって、もし読んでたら、ヒヤヒヤしてるだろうな、大好きなYくん。素敵な刑事さんになっててほしいですね。え? 本気で会いたいかって? ほんじゃムショに戻らなきゃダメやないですかー。嫌ですわ。もちろん戻りたくはないです。

中野瑠美(なかの・るみ)
1972年大阪・堺市生まれ。特技は料理。趣味はジェットスキーとゴルフ。『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)や『新・情報7daysニュースキャスター』(TBS系)などへの出演でも注目を集める。経営するラウンジ「祭(まつり)