東京都心から北東へ約15kmの千葉・松戸市にこの夏、上新電機の新店舗「ジョーシン松戸店」がオープンした。阪神タイガースの公式スポンサーとして知られ、近畿では圧倒的な認知度を誇るジョーシンだが、首都圏郊外では北関東各社に比べブランドは弱い。
松戸店の3km圏内にも、売場面積5000平米クラスのヤマダ電機などがあり、競争環境は厳しい。

 しかし、藤野克哉店長は「オープン前の会員獲得数は目標を大幅に超えており、期待の大きさを感じている」と話す。オープン日の朝にも1000人近くが開店待ちの行列をつくり、反応は悪くない。売り場面積は2000平米台半ばで、同社としては標準的な規模・品揃えだが、地域商圏内の消費者をしっかりつかむための工夫が各所に見られ、今後の郊外型家電量販店に求められる要素を凝縮した店舗になっている。
●道路開通に合わせて出店 これからの郊外型店舗のスタンダードに
 6月30日オープンのジョーシン松戸店は、国道6号(水戸街道)と新しい都市計画道路の交差点脇に位置する。この都市計画道路は6月8日に開通したばかりで、隣接の区画では「しまむら」「マツモトキヨシ」がオープンした。
国道を挟んだ向かい側には「トイザらス」があるほか、ファミリー向けの飲食店も近くに多い。家電量販店は商品の性質上「目的買い」の客が中心になりがちだが、日常的な買い物の際に立ち寄れる立地なら「ついで買い」の来店も期待できる。
 玩具・ホビー商材に強いジョーシンは、松戸店も「キッズランド」を併設し、家電と玩具の店という形態をとる。向かいのトイザらスと競合するようにもみえるが、乳幼児向け中心のトイザらスに対し、ジョーシンはプラモデルなどに強く、むしろ補完的な関係になっている。
 また、全社で注力するリフォームのコーナーも、排水口だけ、水栓だけなど、数時間の工事でピンポイントの改装が可能な「そこだけリフォーム」を加えるなどして、注文のハードルを下げている。
●「接客機会」と「日常使い」を生む売り場を目指す
 店内の3か所に設置され目を引くのが「タッチde商品選び」と呼ばれる情報端末だ。
この規模の店では品揃えを厳選せざるを得ないため、顧客が求める色やサイズの在庫がないという状況も発生する。その際は、店員が顧客とともにこの端末を操作し、ジョーシンが取り扱う全アイテムの中から取り寄せや別商品の提案を行う。
 また、500円や1000円といった低価格で、生活に役立つ小型家電や雑貨などをワゴン展開するコーナーも充実。顧客のリピーター化をねらう。
 「店の規模ではなく、お客様の心をつかめるかが本当の勝負。一人ひとりの店員が笑顔で対応し、少しでも多くのお客様をお得意様にしていく」(藤野店長)ことで、地域の消費者が日常的に立ち寄れて、暮らしの頼りにできる店に育てていく考えだ。
(BCN・日高 彰)
店長:藤野克哉店長
場所:千葉県松戸市八ケ崎8-35-17
売場面積:2319m2
駐車台数:107台
従業員数:16人
目標年商:18億円
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