今注目のアプリ、書籍をレビュー

20〜30代の男性に多い睾丸がんの闘病記『さよならタマちゃん』

2013年9月10日 11時00分

ライター情報:松澤夏織

このエントリーをはてなブックマークに追加

あきらめていいこともあるし、あきらめちゃダメなこともある。
ベテランアシスタントが描くがん闘病記。
作者の先生にあたる『GANTZ』 の奥浩哉先生がカッコ良すぎる!!
第1話の試し読みはこちらから
http://evening.moae.jp/lineup/256

[拡大写真]

がんの闘病記ということで正直ちょっと身構えていた。
『さよならタマちゃん』は、イブニングでの連載中にじわじわと人気を集め、最終回で雑誌の読者アンケート1位になった話題作だ。

ベテランのマンガ家アシスタント・武田一義35歳。睾丸がんという精巣腫瘍が見つかり、がんの切除手術を受けることに(『さよならタマちゃん』ってつまりそういうこと)。同時に肺への転移も発覚し、抗がん剤治療のため入院する。

睾丸がん(精巣がん)は20〜30代の男性に多いがんだ。その世代の悪性腫瘍では最も多いが、罹患率は10万人に1人程度。そのため同じ病室の先輩たち(おじさん)は武田の病気に興味津々。
「ほぉー睾丸の癌」
「睾丸癌だな」
「こーがんがん!」
「こーがんがん。ハッハッハ。なんか言いたくなるねぇ」
「こーがんがん! こーがんがん! へへへっ」
「フフフフ不謹慎ですよぉ」

また、妻が睾丸の異常に気づいてくれたという話を聞いたときは、全員そろって「いい奥さんだねぇー」とにやーり。
おじさんたちは全員前立腺がん。1年以上抗がん剤治療をしている人もいる。小学生のようなしょーもないやりとりを楽しむ人たちと武田は入院生活を送ることになる。

主治医の吉田先生もとっても個性的。
「若い奴らが夢中になっちゃうマンガないですか? 出来るだけながーいやつ。試験が近いんで勉強部屋に置いときたくて。ぬふふっ」
と楽しそうに研修医にイジワルをしたり、
抗がん剤治療で体重が10kg落ちた武田に笑えない冗談をいったりする。
「『抗がん剤ダイエット』って本出したら売れないかなぁ。ぬっはっはっ」
そんな吉田先生が治療に入る前の武田にこんなことを口にした。
「精巣腫瘍は治るがんです。(中略)決して油断しません。徹底的にがんを叩くきつい治療をします。どれだけ泣いても構いませんのでやり遂げて下さい」。
ほかにも研修医、ベテラン看護師、新米看護師など多くの医療従事者が登場する。彼らの働く姿を見て、患者たちは「ハハ今日も忙しそうだよ」と微笑むのだ。

陰となり日向となり、という表現があるが、妻の早苗はまさにそれだ(実は彼女自身も森和美というマンガ家)。
武田は闘病中に“治療うつ”のような状態になった。
顔面の“ピクピク”、物音への過剰な反応、気圧や空気の変化、他人の体臭への激しい吐き気。
抗がん剤の副作用とあいまってストレスがピークに達した武田はある日突然キレてしまった。
心の中では早苗に感謝しながら、自分が何に怒っているのかわからなかったという。

ライター情報

松澤夏織

元印刷会社OL、現ライター兼編集アシスタント。ムック本の執筆、WEBメディアの取材・構成など。趣味は漫画とアニメとロードバイク。月間900km爆走する体育会系。

URL:Twitter:@natsumatsuri728

注目の商品