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ラーメン二郎に大切なことは人生から学んだ、あ、逆だ

2013年10月9日 11時00分 ライター情報:杉江松恋

『人生で大切なことはラーメン二郎に学んだ』村上純/光文社新書

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学食に二郎を!
慶應義塾大学でそんな運動が起こったことがありまして。
あっはっは、素敵な冗談だなー、関東にも京大みたいな冗談をする学生が増えたんだなー、福沢諭吉像が折田先生みたいに仮装させられちゃう日も来るのかなー、とのんきに思っていたら。

マジでした。

いや、本当にそういう運動があったのである。ことの起こりは慶應義塾大学三田キャンパスが面している国道一号線が拡幅され、道に面していたラーメン二郎が立ち退かなければならないと判明したことだった。足繁く同店に通っていた(1日に1人は手鍋を持参して『これにお願い』というやつもいた。いわゆる『鍋二郎』)体育会系の学生とOBが中心になって運動を始め、当時の学食の一画に店舗を移転させようとしたのである。吉野屋とかスターバックス・コーヒーがキャンパス内に出店するご時勢を先取りした運動、といえなくもない。

そのことは、村上純『人生で大切なことはラーメン二郎に学んだ』巻末の年表でも紹介されている。ふーん、そうか。1号線拡幅に伴って二郎が現在の位置に移転したのは1996年だけど、運動が起きたのは1991年だったのか。と、いうようなこともこの年表を見るとよくわかるのである。表紙をめくった見返しには現存する「二郎」38店のリストとマップが折りこまれている。ラーメンを俯瞰で撮った写真と「量」「スープ」「麺」「豚」「野菜」の情報を示した表が載っているので、これは結構重宝すると思う。
というのも、店によって二郎は味がまちまちだからだ。フランチャイズではなく、暖簾分けに近い形で増えてきた店舗群だからこその違いである。客側からするとこれは注文に直結する死活問題になる。麺量が「多め」と書かれている店で「麺マシ」を頼むと死ぬだろう。同様に野菜がクタ系(よく茹でられている)の店で「ヤサイ」コールをしてもそんなに危険ではないが、シャキ系だと昇天ペガサスMIX盛りで野菜が載ってくるので後悔しかねない。

今不用意に「危険」という言葉を使ったが、ラーメン二郎は「麺が太い」「豚(他店で言うチャーシュー)の切り方が豪快」「野菜(もやしとキャベツ)のせいで麺が見えない」「それらすべてが他店の大盛りぐらいの分量」「ニンニク入れますか?」という特徴があり、日本に存在する他のラーメンとはまったく似たところがない。ということは世界でも唯一のラーメンだということであり、ファンが「二郎はラーメンではなくて二郎という食べ物」という言い方をする原因になっている。

ライター情報

杉江松恋

1968年生まれ。小説書評と東方Projectに命を賭けるフリーライター。あちこちに連載しています。

URL:Twitter:@from41tohomania

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