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原作からどこまでどう離れていくのか「わたしを離さないで」3話

2016年2月5日 09時50分

ライター情報:杉江松恋

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『わたしを離さないで』の先週放送された第3話を観て、ラストシーンに戦慄したのであった。麻生祐未が怖すぎる! でも麻生演じる神川恵美子先生は今週で出番が終わりのはずだから、と思って予告を観たら、第4話以降も続けて出るらしいじゃないですか。当分あの眼差しからは逃れられそうにないのである。いやあ、人生でこんなに麻生祐未のことが気になる日々が来るとは思わなかった。
『わたしを離さないで』カズオ・イシグロ、土屋政雄訳)/ハヤカワepi文庫

そしてコテージ篇へ


日本出身の英国作家カズオ・イシグロの長篇を原作とするドラマは今夜第4話が放送される。主人公の保科恭子(綾瀬はるか。原作のキャシー・H)を初めとする陽光学苑(原作におけるヘールシャム)の子供たちは、前話の終わりで新天地へと旅立った。彼らは、一定年齢に達した段階で少人数のグループに別れ、「コテージ」や「マンション」と呼ばれる施設に移住する決まりなのである。今回からは「コテージ篇」となる。この展開は原作と同じだ。
そして第4話からドラマは、徐々に原作にはないオリジナルの設定が入ってくるらしい。恵美子先生が退場せずに舞台に残り続けていることもそのためだろうし、前回のラストで真実(中井ノエミ)から恭子に告げられたある事実も、原作にはないはずだ。観ずに書くのは気が引けるが、原作を静の物語だとすれば、ドラマは動、いささかの波乱を含むものになるようである。

見事なバトンタッチと原作編集


第3話は、子役から成人の俳優へと各配役のバトンが渡された回だった。この継ぎ目のなさが見事で、オーディションの成功を思わせる。特に珠世役の馬場園梓は、子役の本間日陽和がそのまま何歳か年を経ったように見えたほどである。
そしてその第3話に、すでにドラマ・オリジナル展開の芽は蒔かれていた。前回は、端希さくらから水川あさみに交替した恭子の友人・酒井美和主役回だったのだ(原作の名前はルース)。
原作では第6章にあたる部分が、第2話と第3話に分割されている。第2話で重要なのは、題名の由来の一つである曲の入ったCD(原作ではテープ)の紛失事件だが、これは本来、第3話で出てきた香水事件の後に起きる。順番が入れ替わっていて、美和=ルースの欺瞞を暴く役目も違う人物である。このへんの入れ替えは実に無理なく行われていて、第1話で神川先生によって行われた「お知らせ」は、本来はこの2つの事件の後にくる。どうするのかと思って観ていたが、堀江龍子先生(伊藤歩)によってもう一度効果的な形で繰り返されることになった。

ライター情報

杉江松恋

1968年生まれ。小説書評と東方Projectに命を賭けるフリーライター。あちこちに連載しています。

URL:Twitter:@from41tohomania

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