「出たな」
「ああ……待ちに待っていたよ……グッドスマイルカンパニーの、ガンスリンガー・ガールフィギュア、トリエラ! ついに俺のもとに、トリエラがきたんだ!」
前回のヘンリエッタから長かったもんな。嬉しいよ本当にさ。
ところでさ、お前フィギュアってどこをポイントに選んで買ってる?」
「唐突だなおい、今まだ箱開けてるところだってのに、このテープ剥がすのが難しくてな……。そうだなー。好きなキャラ、とか、顔、とかはまあ、当たり前だから言わなくていいよな」
「言わずもがな」
「そうだなー。いや、実は最初俺もフィギュアって持ってる人ちょっとなあ……とか思ってた時期があったわけよ。アニメフィギュアとか恥ずかしいって。若かったなあ」
「俺の家に来た時お前ヒいてたもんな」
「す、すまん。
だけど、俺フィギュアが物語を持っていることに気づいて、感動してからハマったんだよ」
「物語?」
「そう。物語。キャラの形に作るだけなのがダメとは言わないよ? でもさ。キャラクターの内面だったり、抱えているものだったり、彼女達が歩んできた日々ってのがあるわけじゃん。そういうのがフィギュアのポーズ、造形、表情に浮かんでいるのに気づいた時、ああこれは新しい形の『作品』なんだって気づいてな」
「芸術かい?」
「いや、芸術とか美術とか、そういうのは別にどうでもいいよ。俺にとって大事なのは、そのキャラがそのキャラとして、アイデンティティを持った存在として作られているか、作者に愛されているか、俺のもとに迎え入れることができるか、なんだよ」
「ほほうなるほどな。
で今回のトリエラフィギュア、どうだい?」
いいね
「ヒトコトかよ」
「無粋だな、最初くらい『いいね』って言わせろよ……なあ、お前も「ガンスリンガー・ガール」は読んでたよな」
「ああ、全巻読んでるぞ」
「中でもトリエラって、すごく悲惨かつ愛されてるキャラじゃん。条件付け(※洗脳のようなもの。悲惨な体験をした少女のトラウマを上書きして、ともに戦うようにするシステム)が最も薄くて自分の意思で動ける少女で、他の少女達より感情が豊かだ。その分、つらい思いもするし、大切な相手もいる。くわえて条件付け以前には洒落にならないくらい最悪の状態も経験してる」
「重い背景背負ったキャラだよな。だけど頑張り屋で、マジメで、自分の感情と戦っている。
そこがいい」
「そう、今回のトリエラのフィギュア、それが全身から出ている。見てみろよ、すごい体こわばってるだろ、ウィンチェスターM1897抱きしめてさ! これだよ、造形的にはほんのちょっとの差かもしれないけれども、リラックスしていない、体が限界まで張り詰めている状態が腕、脚、表情、背筋などの細部で再現されている。特に膝の裏の力の入り具合いときたら。これが彼女のすべてを物語っていると思うんだ。アクションもので再現して欲しかった気もするが、逆にこういうおとなしさ、『静』のベクトルでキャラを表現しているってのはすごいことだぞ」
「髪の毛もいいよな、折れそうで怖いけど」
「ああ。髪の毛やコートがなびいているってことは風が吹いているということだ。
しかも地面には落ち葉、彼女はコートを着ている。季節は秋か冬だろう。この寂寥感がたまらんな」
「ブーツがエナメル質なのもいいね」
「いいよな! たぶんヒルシャーさん(※トリエラの担当官。少女たちを武器として使わず、トリエラを人間として扱うように苦心している苦労人)に買ってもらったんだろう。洋服の上品さだけでも、ヒルシャーさんとトリエラの仲の良さが伝わってくるんだよ」
「しなやかな脚が俺は好きかな。俺はダイレクトにかわいいものが好きだからフィギュア買うんだけどさ、少女って作るの難しいんだよ。
セクシーダイナマイトじゃだめだし、子供でもいけない。しなやかだけれども大人の気品も持ち合わせていないといけない。このトリエラの、褐色肌でしなやかな脚は実に少女らしいな。筋肉の付き方もよく研究されてる」
「ああ、まさに少女フィギュアだな。トリエラは少し成長していて、自我が育ち、強いのが魅力なキャラだ。ちゃんとそれが成長しかけの体に現れている。
前作のヘンリエッタは逆に幼さが魅力だったな」
「あの頭身の低さと脚の膝のまわりの肉のつき方は衝撃だったな。そしてあの信頼しきっているような控えめで上目遣い気味のポーズ……幼さと、担当官への感情は、顔だけじゃなくて体で表現できるんだと驚愕したよ」
「トリエラとヘンリエッタ両方1/8なので、並べてみると成長の度合いも比較できるのがいいな。こんないいフィギュアが部屋に飾れることに俺は感動しているよ。とりあえず髪の毛が折れそうで非常に危険だから、ちゃんと安定したところに飾らないとな……おい、お前なにやってるんだよ!」
「何って、ぱんつ、見るだろ?」
「貴様! 俺のトリエラのスカートを脱がせて、ぱんつ+コートとかそういうマニアックなことをするな! ん……ちょ、ちょっといいな」
「いいだろ」
「……」
「……」
「リコとかペトラも出るといいな」
「あ、ああ。期待だな」
(たまごまご)