2010年10月のOVA発売時から、僕が推しに推しているアニメ「たまゆら」。2011年の10月からは、「たまゆら~hitotose~」としてテレビアニメ化。
11月には、作品の舞台となった広島県竹原市で、「たまゆらの日」と称する大規模なイベントも開催され、全国から大勢の「たまゆら~」(たまゆらファン)が集結しました。自称「たまゆらいた~」(たまゆらファンなライター)である僕も、もちろん参加。エキレビでもレポートをアップしています。
そのレポートの中でも切なる願いとして書いた「たまゆら」の2期制作が、ついに正式決定! 3月25日に行われた上映イベントの会場で発表されました。そこで、気になる2期の内容について、佐藤順一監督に最速インタビューを敢行。ずっと聞きたかった、OVAや「hitotose」についてのお話も、たっぷりと伺ってきました。


――監督! 「たまゆら」の2期制作決定、おめでとうございます!! 今の率直なお気持ちを教えて下さい。
佐藤 新たな戦いが、また始まるなと……(笑)。
――ああ……、田舎町に暮らす普通の女子高生たちの日常や夢を、温かな視線から描いている作品なのに。制作現場は戦いなのですね(笑)。
佐藤 もちろん、とても嬉しいし、ありがたい話ですが(笑)。発表されるまでに、正式決定するかしないかという期間がけっこう長くて。
その期間で、心の準備はしているんですね。なので、「おお、決まったのか!」というよりも、「あ、決まったんだ」みたいな感じです。
――「たまゆら」では、古い町並みが残る竹原の風景や行事などが、物語の中でそのまま描かれていて。リアリティとともに、不思議な懐かしさを感じられるのも、大きな魅力です。ただ、そのための取材も大変だと思うのですが。決定前から、2期のための準備は、すでに始められていたのですか?
佐藤 そうですね。
取材してきたネタは、基本的には出し惜しみせず、使えるものは使うというスタンスなんですけど。それでも、使おうと思っていたのに使えなかったものはありますので。それに加えて、2期に向けての新たな取材もするのですが。まだ、じわりじわりというところですね。
――監督は、イベントも含めると、すでにかなりの回数、竹原へ行かれていると思いますが。最近でも、行く度に新たな発見はあるのですか?
佐藤 5、6回は行ってますが、長くても、3日間くらいしか滞在できないので。
毎回、取材をする度に、なにかしら新しいネタは見つかります。
――本音を言えば、一週間くらいのんびり取材したいですか?
佐藤 そうですね。たぶん、のんびりはしないと思いますけど(笑)。竹原は観光地ではありますけど、普通に人が生活している街なので、一週間の生活サイクルというものはあると思うんですね。一週間くらい滞在して、竹原の人たちがどんなサイクルで生活しているのか、見てみたいという気持ちはあります。まあ、なかなか、そうもいかないんですけど(笑)。
竹原の高校生が、実際にどういうサイクルで生活をしているのか。どんな所で、友達同士、語ったりしているのかという事も、意外とまだ分かってないので。そういうところも、取材できると良いですね。
――2期までに、そういう機会があると良いのですが……。その2期ですが、放送はいつ頃になるのでしょうか?
佐藤 ちょっと、まだかなり先で……2013年になりそうですね。
――そうなんですか。
待ち遠しいですが、「たまゆら」2期よりも先に制作が発表された、OVA「わんおふ-one off-」もありますしね。現在の状況は、2期の制作が決まって、「さて、どんなお話にしようかな」と考えているくらいですか?
佐藤 そうですね。すでに制作委員会の人たちと、決まった時にはどういう形にしようかという議論は進めてきているので、ある程度の方針は決まっています。
――では、2期に関して、今の段階でたまゆら~の皆さんに伝えられる事はありますか?
佐藤 キャラクターが一新する事は無いですね。竹原で暮らしている高校生の女の子たちの日常が、そのまま延長していくという事は間違いないです。「hitotose」の1年間で彼女たちが生活してきた先に何があるか、という事にはなると思います。
――「たまゆら大学生編」になったりはしないという事ですね。
佐藤 いきなり大学生になったり、主人公が変わりました、とかはないです(笑)。
――良かった。たまゆら~も、主人公の沢渡楓を演じた竹達彩奈さんたちメインキャストの皆さんも、ひと安心ですね。って、誰もそんな心配はしてないと思いますが(笑)。
佐藤 でしょうね(笑)。1期12本をやってきた中で、「こんなのを見たい」とか「あれはどうなってるの?」とか、色々な意見も入っているので、そのあたりをうまく拾いつつ、物語に生かせたら良いなと思います。
――ネットなどに書かれる視聴者の感想なども、チェックされているのですか?
佐藤 はい。(視聴者が)どういうところを面白がってくれたかなどは、重要な情報なので。それを拾って、2期も満足度を上げていきたいですね。
――では、少し遡って、OVAのことから質問させて頂きたいのですが。OVAは全2巻で、4話合計1時間という長さの作品でした。作品設定などに関しては、すでにこの時から、テレビシリーズにも対応できるくらい、大きなものを考えられていたのですか?
佐藤 物語のベースになるものとしては、当然、テレビで走れるくらいの要素は用意していました。でも、OVAの尺の中で、「hitotose」でやったように、楓の友達の3人にまで話を広げていくと、どうしても(話が)ぼやけてしまうんですね。そこで、OVAでは、楓に完全に焦点を絞って、亡くなったお父さんとの物語で上手く着地ができればと考えました。その方が作品としての満足度的には高くなるかなと。その分、友達のかおる、のりえ、麻音に関する掘り下げは浅くなるのですが。まあ、少し女の子たちの描写にやり残し感もあった方が、そのあたりの話も見たいなという希望が出てくるかなという、ザックリした計算はありました。その時点では、テレビ版があるかどうかなんて、分からなかったんですけど。
――そのあたりを見たかったら、みんなでBlu-rayやDVDを買って、続きを作らせてよ、という計算ですね(笑)。
佐藤 まあ、「レッツバイ!」ということで(笑)。いつから、こんなに「レッツバイ、レッツバイ」と言いはじめたのか……。いつの間にか、「たまゆら」と言えば「レッツバイ!」って事になってるし。
――「たまゆらの日2011」のレポート記事でも書いておきました! あと、これもOVAからの初期設定についての質問なのですが。「たまゆら」は非常に心温まるストーリーと空気感の作品ですが、主人公の楓は、大好きなお父さんと死別しているという、非常に辛い過去を抱えています。こういった悲しい設定をキャラクターに与える時は、どのようなお気持ちなのでしょうか?
佐藤 自分が(娘のいる)お父さんで死ぬ立場だからか、可哀想というよりも、娘の思い出に残ってて欲しいなという感じですね(笑)。「たまゆら」に限らず、ドラマの中で誰かが死ぬような描写をする時って、死んだ人が主人公に語りかけたりとか、まだ成仏してない状態でみたいな描写もあるんですけど。今回はそうではなく。悲しいところを乗り越えて、そこから立ち直る瞬間を描きたいとは、最初から思っていました。ちょっと振り返ったり、思い出が蘇った時、悲しいというよりも、温かいものを思い出して涙が出る、といった物語が良いかなと思ったんです。
――温かな物語を描くという点では、「ARIA」シリーズなど監督の過去作品と重なる部分もあるかと思うのですが。「たまゆら」で新たにチャレンジされた事などはあるのでしょうか?
佐藤 「ARIA」からの流れで言うと、大きく変えてみたのは、主人公に明確なゴールが無いという所ですね。「ARIA」の主人公の(水無)灯里は、スタート時点で一人前のウンディーネ(観光案内人)になりたいと言ってるんですが、その後、ウンディーネになるための話が延々と続くわけじゃないんですね。その話は、(完結編の)3期の最後になって一気に持ち上がってくるんですが、ゴールが明確なので、それまでの間も(物語の)縦軸はしっかりあった。物語的には、その方がやりやすいんです。でも、我々の身近で考えると、そこまで明確に将来のゴールを設定している高校生って、意外と少ない気がして。
――確かに、そうですね。
佐藤 だったら、より身近に感じられる存在として、もう少しゴールが曖昧な女の子にしようかなと。ドラマとして描くのが難しくなるのは確かなんですけど、今回は舞台も身近で、行こうと思えば行ける場所(「ARIA」の舞台は未来の火星)。高校生たちの在りようにも存在感を出そうと思ったので、そこは実験というか、チャレンジではありました。
(丸本大輔)

part2に続く