今注目のアプリ、書籍をレビュー

0

賛否両論、タバコシーンから「風立ちぬ」を考察する

2013年8月2日 11時00分 ライター情報:久保内信行

大ヒット上映中「風立ちぬ」

映画『風立ちぬ』は、観賞しましたか? すでに映画を観た人の感想は、まさに賛否両論。恋愛映画として観ても、「一途な恋に感動した」人もいるかと思えば「主人公の冷たい性格がいや!」という人もいたりと、同じ映画を観たとは思えない意見の分かれかたです。宮崎駿監督も大好きだという、飛行機やメカに注目している人でも「飛行機の描写に感動!」派と、「戦争の描写も避けて卑怯!」派と意見は真っ二つ。友達や知り合いの感想を聞いて「ホントに同じ映画みたの?」とまったく共感できないこともありそうです。

そもそも、この映画『風立ちぬ』自体、堀越二郎の人生と堀辰雄の小説をあわせた不思議な作りの映画で、映画冒頭から夢のシーン。現実と夢の光景を行ったり来たりしながらとくに説明もないという一見難解なもの。しかし、お話としては非常にシンプルなラブストーリー仕立てになっていてこれまた不思議です。鑑賞したものの、「で、結局どう感じればいいの?」とエンディングに流れる名曲『ひこうき雲』を聞きながら頭をひねった人も多いはずです。このあたりが、これまで子どもから大人まで楽しめる国民的アニメとして親しまれている宮崎アニメと違い大人向けと言われる理由かもしれません。

ジブリのご飯美味しそう! からタバコ旨そう! へ……


また、大人向けと言って印象に残るのは、全編を通して幾度となく描かれる喫煙シーンです。ハリウッド映画ではもうほとんど観られない喫煙シーンがこれでもかと登場し、しかも登場人物の喫煙姿が非常に旨そうというこのご時世大変勇気のある描かれ方をしています。「ジブリに出てくるご飯は美味しそう」から、突然の「喫煙シーン、えらく旨そう」ですから。

しかも、恋愛のクライマックスのひとつではヒロインの菜穂子が結核の闘病中に手をつなぎながら同じ部屋でタバコを吸い仕事をするシーンがあります。彼女の体を思いやり外で吸おうとする二郎を止めて、ここで吸ってくださいと菜穂子が言うエクスキューズがあるものの生理的に受け付けない! と言う人も多いようです。

物語の舞台になった第二次世界大戦前夜には、結核にタバコの煙は有害であるという認識がどれだけあったかはさておき、今年公開の映画でこのシーンをあえて入れ込むのは、制作側の強い意志があったはずです。実際、このシーンの是非は、観客の感想の大きな論点にもなっています。この「結核」と「タバコ」は、映画の中でどんな意味をもっているのかを考えてみることにします。

ライター情報

久保内信行

文筆業

コメントするニャ!
※絵文字使えないニャ!

注目の商品