朝ドラ『カムカムエヴリバディ』第17週「1983-1984」
第82回〈2月25日(金)放送 作:藤本有紀、演出:安達もじり〉
※本文にネタバレを含みます
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ひなた、回転焼きを焼く
五十嵐(本郷奏多)は諦めきれず稽古を頼むが、虚無蔵(松重豊)は断る。【レビュー一覧】朝ドラ『カムカムエヴリバディ』のあらすじ・感想(レビュー)を毎話更新(第1回〜82回掲載中)
五十嵐のみならず、ひなた(川栄李奈)も一緒に雑巾がけしながら頼む。腰を落として床を雑巾がけすることで全身に力がみなぎり、お願いの気合感もいっそう高まる。
五十嵐「どうしておまえはそうばかなんだよ」
ひなた「ばかばか言わんといて」
喧嘩するほど仲が良い感じになってきたふたりに、虚無蔵は初代目モモケンと2代目と自身の過去を語りだす。
父子の確執に巻き込まれた形の虚無蔵。とはいえ、彼にとって『妖術七変化』の大抜擢はチャンスであったが、殺陣はうまいが台詞が下手だったことを反省し、いまだに時代劇言葉を使っている。極端だなあ。五十嵐も影響されて「御意のままに。それがしも励みまする」と時代劇調になった。
千人応募してきた中から残った50人に五十嵐も虚無蔵も入って、最終選考ではふたりが戦うことに。
五十嵐を応援しようとひなたは回転焼き作りを母・るい(深津絵里)に習う。ひなたが条映のオーディションを受けたときにも回転焼きを焼こうとして、今回は五十嵐のオーディションの応援のため。自分のためのときはあまり上手に焼けなかったが、五十嵐のために焼いたものはきれいにできた。
ひなた「明日がんばって」
五十嵐「これで頑張れる」
回転焼きを買いに来た五十嵐に素直に自分が焼くと言えないひなたと、彼女の気持ちをるいから聞かされて仏頂面しつつ内心うれしい五十嵐。不器用なふたりが微笑ましい。
「アルデバラン」の歌詞が痛切に響く朝
『カムカム』の時間では戦争を知らない子どもたちがバブル目前で平和に暮らしている。彼らの悩みは生死や貧困に関わることや国家に関わることではなく、自分らしさを手に入れることだ。戦争で何もかも失いながらも生き抜こうとした初代・安子(上白石萌音)の時代とはまるで違う。ところが、ドラマの外側の現実では、不穏な事態になってきた。2月24日、ロシアがウクライナに軍事侵攻した。テレビやネットで知らされるウクライナの状況。そこにいる人達は安子であり稔であり金太であり吉兵衛である。安子編は世界のどこかで続いている。
今朝は主題歌「アルデバラン」の<この世界が終わるその前><不穏な時代><君と君の大切な人><幸せ><祈り>という言葉が安子編以来、久しぶりに痛切に響いた。
ドラマのなかでひなたが生きている世界は、安子編の冒頭、小豆の香りで目をさまし、家族と職人が仲良く暮らしていた平穏な時代と同じ。この日々が永遠に続いてほしい。
誰もが愛しく思う時間が、何かのきっかけでふいに壊れることがある。いま、ドラマの中で繰り広げられているひなたの時代の平和は誰もが望むものだ。
「暗闇でしか見えぬもの」は確かにあるかもしれないが「暗闇」はないほうがいい。あってもすぐに夜明けが来てほしい。
(木俣冬)
【前回の朝ドラ】『おかえりモネ』の全レビューを見る
番組情報
連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
2021年11月1日(月)~<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時00分~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時00分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り
<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時00分~11時15分(再放送)
<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時00分(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送
<毎週日曜>
●総合 午前11時00分~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送
制作統括:堀之内礼二郎 櫻井賢
作:藤本有紀
プロデューサー:葛西勇也 橋本果奈 齋藤明日香
演出:安達もじり 橋爪紳一朗 深川貴志 松岡一史
音楽:金子隆博
主演:上白石萌音 深津絵里 川栄李奈
語り:城田優
主題歌:AI「アルデバラン」
木俣冬
取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。
@kamitonami