『ばらかもん』は、まずはいいから「聞け!」っていいたくなるアニメ。

舞台は長崎五島列島か。

都会生まれ都会育ちの書道家、半田清舟が主人公。エリートコースをすすみ、書道のトップを狙うも、型にハマった彼の文字は壁にぶちあたり、スランプ中。
彼が飛ばされてきたのが長崎の島。小さな漁村、見渡すかぎり大自然。
果たして半田清舟は書道家として成長できるのか? というのを、ユニークな島民たちとのやりとりで描いた物語です。

『ばらかもん』で最も重要なのが、メインキャラである、琴石なるの存在です。

島の分校に通っている、小学1年生の女の子。とにかく元気でポジティブでたくましい。

琴石なるを演じているのは、原涼子(はらすずこ)。
はっきりした年齢は発表されていませんが、8から9歳くらいと思われる子役です。
ドラマ『ラスト・ドクター』やCM『たのしい幼稚園』などに出演。実写映画『魔女の宅急便』では幼少期のキキも演じています。

子供がとる独特の仕草や、しゃべりの抑揚を、変に気張らず自然体で再現するのが実にうまい。

アニメーションのキャラクターとして、本物よりも「少女っぽい」声を演じる能力をもった声優さんは数多くいます。
しかし「本物の子供」の声の音程は、体質的なものが整わなければ出しようがありません。
思春期に声変わりがあるから。男性なら1オクターブ、女性でも2音半、以後なだらかにちょっとずつ下がっていく。不可抗力です。



たとえば、子供は遊んでいる時に意味もなく「キャー!」と叫ぶことがあります。黄色い声というよりは、身体から自然に漏れ出る「ギャー!」に近く、「ギャー↑↓ー」「ワハハ↑↓ー」みたいに上下にぶれて安定しない。
原は、その子供特有の発声をバッチリ再現しています。

なるの友達の小学1年生、久保田陽菜を演じるのは、現在8歳の遠藤瑠菜。映画『そして父になる』に出演している子役です。
なるのことが好きな小学1年生男子、ケン太を演じるのは、9歳の子役、木村聖哉
マクドナルドのCMなどに出演しています。
徹底して子供役は全て、同い年くらいの子役が演じています。
彼女たちの演技の巧みさは、セリフに加えてちょっとした息遣いなどにも凝縮されています。
1話の鼻をすする一瞬のシーンの見事さ!
彼女たちの声が、「田舎」の象徴になっているのです。

それ以外は、中高生含めて全て大人の声優。
セリフはバリバリの長崎弁。
ちゃんと長崎県五島列島出身の声優・古木のぞみの監修付き。
半田が「まるで異国のようだ」と感じるような発音を、しっかり使いこなしています。

子供であることを理解している子役が演じる、子供の声を是非聞いて欲しい。
夏の記憶に残るのは、青い空と青い海と、子供たちの声だ。


『ばらかもん』1巻
『ばらかもん』BD 1
コミックスペシャルカレンダー2015 ばらかもん


(たまごまご)