「キルラキル」BD9巻発売から一ヶ月近く経ちました。
その中に収録されている25話、みなさんご覧になりました? なったよね?
いやまだ見てない? じゃあ見ましょう!
実に「キルラキル」らしい、スカッとする内容です。


●ファンディスクとして最高に熱いぜ!
中島かずき「二十五話はやっぱりおまけなんです。それを観なくても『キルラキル』という作品はしっかり完結しているというカタチにしたい。その上で最高のおまけは何だろうとなると、皐月の心の問題かなあと」
『キルラキル脚本全集』より

ストーリー自体は、24話まででちゃんとまとまっています。
24話のエンディング、流子とマコと皐月様のデートで、後日談としては十分。

そのため、25話はファンディスク的な要素が大変強い。
全部見てきた人なら、あれもこれも出てくるのでテンション上がります。
いろんなこと思い出して、笑いながら泣きそうになります。
例えば、もうDTRはなんだったんだよ、とかね。
美木杉「だめだ。それじゃ美しくない!」
黄長瀬「美しいと思ってたのか、今まで!?」
そうそう。ツッコミ入ってこそのキルラキル。

揃のお茶を全校生徒に振る舞わせるとか、どんだけ酷使するんですか。

なんでチーズでマコは捕まりますか。かわいいなあ。
お約束のオンパレードです。

と、ここまではサービス分。
今までこの作品を見てきた人へのご褒美です。

●喪失感がないと前には進めない
ストーリー部分は、主に皐月様というキャラの掘り下げがメイン。

……いや、「様」は取りましょう。終わったのですから。
序盤、猿投山と戦う皐月の姿の、抜け殻感ときたら。
声優の柚木涼香が言った言葉の意味がわかりました。「台本2ページめで泣いた」って。
満艦飾マコ大暴走! 爆笑そして涙、汗、油「キルラキル」25話先行上映会 - エキレビ!

皐月は今まで羅暁と戦うため、全てを投げ打つ決意を持っていました。

しかし終わった今、何もありません。
流子は、姉の皐月を「刃」と称しました。ならば「収める鞘」が必要です。

鞘に収める、という言葉を文字のまんまに捉えるなら「刃としての役目を一旦終える」ことであり「次に抜く準備をすること」です。
ことわざの「元の鞘に納まる」とは別ですし、「退く、取り下げる」という本来の意味とも異なった用法です。
四天王はそれぞれ進路が決まっており、バラバラになります。

猿投山は実家でこんにゃく作るようです。えらいね。みんな鞘に収める努力をしています。

皐月は迷走していました。
今回彼女は「私は私なりにすべてのわけがわからない者が生きられる世界を作る」という結論に到達します。
でも一体、何をどうするのだろう?

多分皐月も今はわかっていないでしょう。

だから24話のエンディングで、流子やマコとお買い物に行ったんだと思う。まずは普通の女の子になるところから。
ゼロからはじめる、という結論に達したのは、まさに鞘に収まった状態に見えました。
いずれ、また抜くんだろうなとワクワクさせてくれる余韻もありますし。

●結局、虚言にやられてしまうんだな
流子「確かにセーラー服からは卒業しなくちゃならない。だけど、セーラー服で過ごした日々が消え去るわけじゃない。そのために昔に囚われている者たちをしっかり卒業させてやれ、しっかり断ち斬ってやれ。そういうことだな鮮血!」

卒業に関して「思い出はそのままでいい」というのは、マコがしっかり肯定しています。
鮮血は流子の中に生きていると宣言することで、別れていないと念を押している。
マコと流子が同じ学校に行くのも、無理に何もかも捨てなくてもいいってこと。

一方で「断ち斬るべき」部分は、「送辞猛怒(そうじモード)」と「答辞猛怒(とうじモード)」で学校ぶった切って表現しました。相変わらず直接的。
断ち斬ることで、囚われている状態を卒業し、過去をきちんとかみしめよう。
じっくり考えるほど味の出る、いいセリフですね。

同時に、もう勢いだけだろってセリフもあります。

流子「これはお前の、本能字学園の、私達の、羅暁からの卒業。これがほんとの『卒暁式』だ! 戦維喪失、布愛成(ファイナル)!!」

当て字ありきで言っている、無理矢理なセリフがかっこいい。
ダジャレだもの、笑っていいセリフなのに、胸がワクワクする。
セリフに深みがあるのかないのか。脚本・中島かずきの手のひらの上で弄ばれてしまう。

「キルラキル」という作品は、中島かずきが考える「間違った言動」を、派手な演出で飾った作品でした。
セリフは基本、矛盾しかない。けれども「かっこいいからよし!」と丸め込まれ、行き詰まった状況をどんどん打破していく。マコとかマコとか。

これぞまさに、中島かずきの「虚言の装」。
能力は「見ている人がわけがわからなくなって満足する」。

今回は四天王も相当わけがわからない状態でした。
特に犬牟田君。おまえ電源スイッチだけで負けるのかよ。弱いよ。
マコのセリフが印象的。
「四天王のみなさんもきっとそう! 過去よりも今の方がもっともっと素敵なのです!」
マコにしては意味の通じるセリフでびっくりしました。

とはいえマコはマコでしたね。
四天王が今回は「わけがわからない」状態で動いていたので、ちょっと霞むかなと思っていました。そんなことはなかった。
特に学校のアレはどういうことなの。どういう仕組なの。

……いやこれは考えたら負けです。
わーよく動いてる面白かったー、マコかわいい、でいい。
笑った後にちょっとだけ、シーンやセリフが記憶に残るのが、虚言の装の魅力です。

●この時代からの卒業
びっくりしたのは、最後に裁ちばさみを流子が取りに行かなかったこと。
多分、25話はこれを見せるためにあった。

24話が終わった時、鮮血ロストが本当に辛くて、ずっとぼくは引きずっていました。
しかし最終回からずっと長い時間待って、25話で再開し、そして本当にさようならをしました。
裁ちばさみを後生大事に持っていたらだめなのです。鳳凰丸のように、しがみついていてはいけない。

アニメやドラマが終わる度につらい気持ちになって卒業できないことが多々ありました。
今回、キルラキルに囚われていたぼくは、流子のはさみでバッサリと、気持ちよく卒業しました。
これにて終了! 最高の卒業式をありがとう、敬礼!


「キルラキル」BD
『キルラキル脚本全集』

(たまごまご)