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いよいよ最初の山場「花燃ゆ」は吉田松陰密航未遂事件をどう描くのか。ドラマ史を徹底検証してみた

2015年1月20日 10時50分

ライター情報:近藤正高

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大河ドラマ『花神』総集編DVD
1977年の1年間に放送された『花神』をダイジェストにして、翌年春に放送された総集編。主人公・村田蔵六の弟子で、互いに思いを寄せる楠本イネ(ドイツ人医師シーボルトの娘。演じるのは浅丘ルリ子)と、妻のお琴(加賀まりこ)の存在は、男たちを中心に進む物語に彩りを添えている。

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■盗んだ小舟で漕ぎ出す! ドラマに見る松陰密航未遂
NHK大河ドラマ「花燃ゆ」の来週日曜(1月25日)放送の第4回では、本作最初の山場ともいうべき吉田松陰(寅次郎)の密航未遂事件がとりあげられる。これは1854年に、松陰が弟子の金子重之助とともに、当時来航していたペリー艦隊に対し、アメリカへ戻る際には自分たちも一緒に連れて行ってほしいと直談判したという事件だ。このとき沖に停泊する艦隊に、松陰らが小舟を懸命に漕いで近づく様子は、ドラマでもきっとくわしく描かれることだろう。

前回で紹介した、松陰を主人公としたNHKドラマ 「蒼天の夢 松陰と晋作・新世紀への挑戦」(2000年)でも、当然ながらこの事件はとりあげられている。そこでは松陰たちが、舟を漕ぐ櫓と船体をつなぐ櫓杭がなくて、ふんどしで代用するさまがコメディタッチで描かれるばかりか、渡米の願いはかなえられなかったとはいえ、艦隊の司令長官であるペリーとの面会が許され、別れ際にはアメリカ国歌の演奏で見送られるというVIP並みのもてなしを受ける。松陰らの渡米が認められなかったのは史実だが、ペリーとの面会や国歌の演奏は、原作となった司馬遼太郎の小説『世に棲む日日』にも出てこない。おそらくドラマオリジナルの設定だったのだろう。

松陰の密航未遂は、大河ドラマでは2010年放送の「龍馬伝」の第6回「松陰はどこだ?」でもとりあげられている。その筋立ては、密航をくわだてる松陰(演じるのは生瀬勝久)を、福山雅治演じる坂本龍馬が止めようとするという、多分にフィクションを交えたものだった。

さらにさかのぼって、1977年の大河ドラマ「花神(かしん)」でもまた、『世に棲む日日』を下敷きに、この密航未遂事件が出てくる。しかしその描写は「蒼天の夢」とはえらく異なり、松陰たちには終始悲壮感が漂っていた。櫓杭がないことに気づく場面も悲劇への第一歩として描かれる。松陰らは難渋しながら舟を進め、やっと一つの艦にたどり着いたものの、船員からは、ペリーのいる旗艦ポーハタン号に行ってくれとたらい回しにされる(これは原作どおり)。そのポーハタン号でもにべもない態度をとられ、渡米どころかペリーとの面会もかなわず、半ば強引に追い返されてしまうのだった。

密航失敗後、その罪が松陰の師匠である佐久間象山にまでおよび(江戸を離れ、郷里の信州で謹慎させられる)、また重之助は低い身分ゆえ、士分の松陰とはべつの獄に収監され、そこで病死する。

ライター情報

近藤正高

ライター。1976年生まれ。エキレビ!では歴史・科学からドラマ・アイドルまで手広く執筆。著書に『タモリと戦後ニッポン』(講談社現代新書)など。愛知県在住。

URL:Culture Vulture

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