4月〜9月まで放送されていた朝ドラ「まれ」のスピンオフ、ザ・プレミアム「まれ〜また会おうスペシャル」が前後編、2週にわたって放送されています(NHK BSプレミアム 午後7時~7時54分)
ツイてない脇役たちの「まれ」スピンオフ、今夜後編
「連続テレビ小説 まれ 完全版」DVDBOX1/NHKエンタープライズ

ツイてない脇役たちが主人公


「まれ」は主人公・希(土屋太鳳)がツキ過ぎていていらっとすることも多々ありましたが、スピンオフでは、希と比べてツいてない脇役たちが主人公。これは気になります。

10月24日(土)に放送された前編は、「僕と彼女のサマータイムブルース」(作/池谷雅夫、演出/川上剛)。
主人公・希(土屋太鳳)の幼なじみで、ミュージシャンになった高志(渡辺大知)と、希のケーキの師匠・大悟(小日向文世)の義娘であり、希のファーストキスの相手・大輔(柳楽優弥)の義妹・美南(中村ゆりか)の物語。

32歳本厄の美南は、占い師である母・輪子(りょう)に、100年に一度の最凶本厄だが北西に行くと起死回生の男性に出会えると言われて、能登にやってきます。
高志は、最近、俳優としての仕事のほうが多くなり、ミュージシャンとしては曲ができずに悩んで、能登へ。

美南は、ずっと好きだった大輔が結婚してしまったことがショック。ほかに彼氏ができても無意識のうちに比較してしまってうまくいきません。
高志は、長年密かに片思いしていた希の母・藍子(常盤貴子)への思いを断ち切ったら、悲しい歌しかつくれなくなっていました。
高志の名曲は藍子への思いがエネルギー源だったんですね。

とてもとても大好きだった人のことを忘れようにも忘れられない、不器用なふたりの姿を見ていて、「まれ」では、主人公の希と弟の一徹(葉山奨之)はさっさと恋を成就させ、結婚、出産までスピーディーに突き進んでいったけれど、ほかの人たちはかなり長いこと恋や人生がうまくいかないーーいわゆる、こじらせてしまった人たちがけっこう多いことを改めて認識しました。

あらゆる面でついてない女


人妻、義兄と報われない相手を思い続けた高志と美南。
いっこうに振り向いてくれない一子(清水富美加)を25年も思い続けた洋一郎(高畑裕太)。
洋一郎を男としては決して見る事のできない一子だって、美人なのに恋愛運はあまりよろしくないようで。

とくに、美南は、今回、あらゆる面でついてない女として描かれ、「60点。なんの取り柄もない中の上の女」「見た目は聡明だけど、なにやっても中途半端なはりぼて女」と自分を卑下します。

まあ、美南、美人さんなので、このように卑下されても・・・・という気もしますし、第一、「見た目は聡明」
なんて、ちょっと癪に触るので、高志といい感じになっていく展開に心から祝福できないものがありました。
脚本家は、本編を書いた篠崎絵里子(崎の大は立)と違うひとですが、このようにやや毒っぽいところは「まれ」らしさを踏襲しているようで、ニヤニヤしてしまいました。

美南ちゃんは微妙でしたが、恋によって饒舌になっていく高志は魅力的でしたし、ふたりを応援する洋一郎や一徹の素朴さは、ベタベタなドタバタギャグとはいえ、微笑ましく見ることができました。
また、高志がしゃべらない分、風鈴の音がところどころで印象的に鳴るのも良かった。

高志が新曲「アンラッキーガール」で、美南のことを、何をやっても駄目だけど、誰も不幸にしない と歌い上げます。
結果、ハッピーエンドで、高志と美南のこじらせは一段落。


後編は洋一郎と一子。果たして全員落ち着いちゃうのでしょうか。
「一子の恋〜洋一郎25年目の決断」は今晩19時!

「まれ」ビュー恒例 前編の、ツッコ「まれ」


能登地震も東日本大震災にもいっさい触れずに進んだ本編、高橋練プロデューサーもインタビューで「『まれ』でも意識的に飛ばして、台詞で「地震があった」などと説明的に言わせるのもやめました。」 と言っていたのに。

スピンオフで美南が「地震で大きい揺れがあったときとか頭に顔が浮かんじゃうんだよね」と地震の話を口にします。
一般的な例えなのでしょうけれど、ここまで現実の出来事を思わせることを出さなかったのだから、最後まで徹底したほうが良かった気も致します。

まれビュー恒例 前編の、勝手に名台詞


「希ちゃんの0点は零点満点なんだよね」「自分を信じているから失敗しても後悔しない」(美南)

何点であろうと、それがそのひとの個性なんですね。
(木俣冬)