
……と、「ツアーパンダ2013」の時にTwitterに拡散されたネタはともかくとして。この映画、観るだけでなく絶対パンフまで買うべきだ。石野卓球とピエール瀧、それぞれのソロインタビューが読めるのである。
卓球による「答え合わせ」
映画「DENKI GROOVE THE MOVIE? ─石野卓球とピエール瀧─」では、ライブ映像や周辺の証言を元に、電気グルーヴの誕生から現在までを客観的に描く構成になっている。
インタビューに登場するのは、元メンバーのCMJK&砂原良徳、Bose(スチャダラパー)・小山田圭吾・山口一郎(サカナクション)といったアーティスト、日高道彦(SMA代表取締役)や『電気グルーヴのメロン牧場─花嫁は死神』でもお馴染みの山崎洋一郎(rockin'on JAPAN総編集長)など17人。電気グルーヴの2人へのインタビューは映画本編に無い。
ところが、映画パンフレットの中では石野卓球とピエール瀧がそれぞれインタビューに答えているのだ。石野卓球のインタビューでは、映画で語られた内容を確認する流れになっている。まるで「答え合わせ」をするように。
──それと、CMJKさんの発言で気になったのが、電気がイカ天に出るか出ないか? ということで議論になったと。
あれは嘘(笑)。
調べてみると、電気グルーヴが結成されたのは1989年4月。CMJKが加入したのは1990年6月。バンドブームの火付け役となった「三宅裕司のいかすバンド天国」は1989年2月〜1990年12月まで放送があったが、1990年6月以降にイカ天キングになった有名どころはBLANKEY JET CITYくらい。確かに「終わりかけ」と言ってもよさそうだ。
また、本編ではCDアルバムのリリースが章立ての区切りの役割を果たし、アルバム制作やリリース後のツアーの様子を語っている。しかし、1枚だけ触れていないアルバムがあり、そこも卓球はインタビューできちんと言及している。
実は映画ではその(『VITAMIN』)前の大事なアルバムが1枚抜けていて。『FLASH PAPA MENTHOL』。ファーストのリメイクだけど、企画盤だからこそ好き放題出来たんだよ。あれで掴んだものがあって、「じゃぁオリジナル・アルバムもこの感じで好き放題やろう」とオレは思ってた。
他にも、砂原良徳(まりん)加入時の印象や、活動休止期間の内情など、映画内で語られたはずの情報の補完・訂正が続く。
ちなみに、97年に大ヒットした「Shangri-La」について。映画本編では砂原良徳が、卓球と一緒に「これはヤバイ」とヒットを確信する話をしていたが……。
(96年の)年末にその年の最後のセッションがあって、そこで出来たのが今の形に近い原型で。でも歌詞は「ケツにキスキスキス〜」って状態。そこまでは出来て、「これで気分良く年が越せる」って思ったのは覚えてる。
── その時点では、歌詞は「ケツにキスキスキス〜」で出そうと思ってたんですか?
完全に思ってた。ただ、それで出していたら、この映画は出来てない(笑)
電気グルーヴは「地元の奇祭」
映画本編を観て印象に残るのは、とにかく電気グルーヴの2人が笑っていること。
汗で体に張り付いたシャツがエロいとはしゃぎ、移動の車中で瀧に「じぇじぇじぇ」を無理に言わせてはゲラゲラ笑い、ツアーのリハでは小道具のハケを構えて2人だけで爆笑する。
地元静岡で高校時代に知り合った2人。デビューから25年経っても未だに2人で飲みに行くほど仲が良い。去年は銀行に「電気グルーヴ」名義の共同口座まで開いている。
どうしてそんなにずっと仲が良いのか。映画パンフレット内のインタビューで、ピエール瀧は電気グルーヴを「地元の奇祭」に例え、「その祭りに関しては自分たちが実行委員」と笑う。
祭りの実行委員が年がら年中仕事を差し置いてさ、朝から晩まで顔をつき合わせて「こないだの神輿のウルシの塗り、ちょっと甘かったんじゃねえの?」みたいなことをやってたら、それはしんどいじゃない。とりあえず朝から夕方までは「俺は大工やってる」「俺は海に魚を獲りに行ってる」っていう、普段の生活あっての祭りじゃん。朝から晩まで一緒だと、祭りが主になっちゃうからさ。お互いなんとかソロで仕事ができるようになったから、祭りが続いてんじゃないの?
DJとしてヨーロッパでも活躍する卓球と、俳優としてテレビ・映画に引っ張りだこの瀧。2001年の活動休止の際は互いのソロ活動が充実していることから解散も危ぶまれた。しかし、逆に互いに別のフィールドがあるからこそ、電気グルーヴという祭りは続いているのだ。
映画では、フジロック・フェスティバル'14のグリーンステージで行われたライブが軸となっていて、本編中に何度もこのライブの様子が挟まれる。爆音と光の中、卓球も瀧も満面の笑みで両手を上げ、客席を指さし、何度も飛び跳ねる。映画館の音響に身を任せると、こっちも体が動いてくる。
(井上マサキ)