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「ちかえもん」今夜5話。赤穂四十七士から一抜けした男

2016年2月11日 11時00分

ライター情報:近藤正高

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「木曜夜8時にテレビの前に座り時代劇をご覧になろうっちゅう善男善女のみなさんには釈迦に説法ですが……」
NHK総合の木曜時代劇「ちかえもん」の先週放送分(第4回)を見ていたら、いきなりテレビのなかから近松門左衛門(松尾スズキ)に呼びかけられた。何かと思えば、寺坂吉右衛門について近松直々に解説しようという趣向であった。
井上勝志編『ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 近松門左衛門』(角川ソフィア文庫)は、「ちかえもん」の下敷きとなる『曾根崎心中』をはじめ、『出世景清』など近松の代表作のあらすじ、ハイライトの訳文・原文を収録。ドラマの理解をより深めるアンチョコにうってつけだ。電子書籍版もあり

黒田屋は赤穂義士の残党なのか


目下、赤穂義士の物語を執筆中の近松、その冒頭には吉良邸討ち入りを遂げた義士らが切腹する場面を持ってきた。そこから時をさかのぼり、なぜこのようなことになったのか顛末を書いていくという構想に「趣向の妙ちゅうやつや!」と自画自賛する近松だが、それを聞かされた万吉(青木崇高)はすかさずダメ出し。「あんまり面白いことおまへんな。ちょっと変わったことしてウケたろいう考え見え見えや」とばっさり斬り捨て、そもそも「討ち入りしたんは四十七人、腹切ったん四十六人や」というのだ。

赤穂四十七士から一抜けしたのは誰か? それが誰あろう寺坂吉右衛門だった。物語の構想を練るうち、近松のなかでふいに寺坂と、そのころ大坂で大儲けしていた油問屋の黒田屋九平次(山崎銀之丞)とが結びつく。思い返せば、黒田屋が大坂に現れたのは前年末(元禄15年12月)とちょうど赤穂義士の討ち入りの時期と重なるし、その行動にも彼が寺坂だと考えれば腑に落ちる点が多々ある――と、勝手に確信する近松。「わしの目に狂いはない」と言い張れば、なじみの遊女・お袖(優香)から「狂いっぱなしやないか」といなされる。

この間、平野屋の若旦那(いまは手代として修業する身)の徳兵衛(小池徹平)が、天満屋へ恋仲の遊女・お初(早見あかり)に会いに来たところを奉行所に捕えられる。しかし黒田屋の口利きであっさり釈放。それにしても、徳兵衛はなぜ「不孝糖を売っていた」という不可解な理由で捕えられ(そもそも不孝糖売りの親分は万吉なのだが)、しかも彼のため黒田屋が動いてくれたのはどういうことか? 近松はこれについても、元赤穂藩家老の大石内蔵助から商いにかかわる密命を帯びた寺坂=黒田屋は、任務遂行には平野屋の協力も必要と考え、あえて商売敵の息子である徳兵衛を助けたのだろうと、自信満々に推理してみせる。そのさなか万吉が、道端で黒田屋と徳兵衛を捕えた与力の高部(瀬川菊之丞)が何やらひそひそと話をする場面を目撃してしまう。

近松&万吉の「元禄探偵物語」?


真相を聞き出すべくいざ黒田屋へ、にわかに降り出した雨のなかを「君に会いに行かなくちゃ」と井上陽水の「傘がない」をBGM(歌うのはいつものとおり近松本人!)に駆け出す近松。

ライター情報

近藤正高

ライター。1976年生まれ。エキレビ!では歴史・科学からドラマ・アイドルまで手広く執筆。著書に『タモリと戦後ニッポン』(講談社現代新書)など。愛知県在住。

URL:Culture Vulture

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