やる気のない生徒との温度差で、合奏が成立しない。
演奏をミスした時に、みんなの前で指摘される。

がんばって練習しても、後輩はメンバーに選ばれ、自分は選ばれない。
ひいきがあったんじゃないかという噂で、いざこざが起きる。
「劇場版 響け!ユーフォニアム」TV版からしんどさ倍増。笑顔がほとんどないのはなぜ
TV版「響け!ユーフォニアム」の黄前久美子。群像劇から彼女の視点に振り切った映画になっている。

4月23日から公開されている「劇場版 響け!ユーフォニアム」は、TVアニメの総集編に新規カットを追加したもの。
中学校時代に吹奏楽経験のあるユーフォニアム・黄前久美子と、トランペット・高坂麗奈が、北宇治高校の吹奏楽部に入部するところから話はスタート。音楽教師の滝の指導のもと、全国大会に行くための、妥協のない練習が始まる。

劇場版は、TV版の群像劇スタイルから、久美子の物語に振り切った。


ラスト以外は、笑顔がほとんどない。
TV版では友人や先輩とのからみがあったため、比較的マイルドだった。
劇場版では、コミカルな部分はほとんどカットされている。

「うまくいかない」描写に絞ったことで、2つの点がぐっと引き立たった。

一つは、彼女たちが本番の演奏だけに視線を向けていく様。
麗奈は中学の時全国大会を逃したことを悔やんでいた。
久美子は自分の演奏がうまくならない不甲斐なさに悩んでいる。
TV版は一話ごとにほっとできるパートがあった。しかし映画では100分の間、息抜きはほぼない。
遊びを抜いたことで、生徒たちが最後の演奏すべて出しるまでの流れがわかりやすくなっている。
「劇場版 響け!ユーフォニアム」TV版からしんどさ倍増。笑顔がほとんどないのはなぜ
TV版「響け!ユーフォニアム」の高坂麗奈。寡黙で孤高なトランペッター。彼女と久美子のからみは要チェック。

もう一つは、久美子と麗奈の関係。
ふわふわした久美子。
ストイックな麗奈。
2人は親友というほど仲良しではないし、他に好きな人がいるので恋愛関係でもない。
でも先輩への苛立ちなど、モヤモヤはぶつけても大丈夫だ、という信頼感がある特別な間柄だ。

普段は丁寧なしゃべり方の彼女たち。2人だけの時はざっくばらんな気取らない口調になるのが際立ってくる
たいして仲良くないのに、大吉山に登って夜景に向かって2人で演奏するシーン。
もともとここは「少しずつ距離をつめた結果」だった。
劇場版では再編集によって「初めて2人が近づいた時間」に変えられた。
このシーンとつながる、後半の2人が顔を近づけて「愛の告白」をする場面。
尺を割いてじっくり見せることで、TV版以上に2人の距離感を見せる演出になっている。

他の部員の話は大幅にカット。秋から始まるTV版2期で補完されるはず。
ストーリーは一通りなぞっているので、TV版を見ていない人でも大丈夫。


ちなみに、TV版のサントラ「『響け!ユーフォニアム』オリジナルサウンドトラック おもいでミュージック」を聞くと、かなりほっとするはず。
サービスでちょっとだけ、救いが入っています。

(たまごまご)