本日夜、『笑けずり シーズン2〜コント編〜』(NHK BSプレミアム 金曜22時)がスタートする。無名な若手芸人たちが富士山麓のペンションで共同生活をしながら、生き残るためにネタを競い合うリアリティショーだ。

過酷な芸人サバイバル「笑けずり」本日シーズン2始動。振り返れば9組中4組解散
シーズン1で講師を務めた千鳥。「『あのコンビ仲悪いから売れたよな』いうコンビは1組もいない」とコンビ仲の大切さを伝える。
イラスト/小西りえこ

ペンションには毎回先輩芸人が「講師」として訪れる。若手芸人たちは先輩の講義を受け、与えられた課題に沿って新ネタを作り、講師陣の前で披露。最も評価が低いコンビはその場で強制退去になってしまう。1組また1組と芸人たちが「けずられて」いく。

人気芸人たちの講義が熱い


昨年9月に放送されたシーズン1は「漫才編」として、9組の若手漫才師が過酷なサバイバル合宿を行った。講師たちは中川家、笑い飯、千鳥、バイきんぐ、サンドウィッチマン。人気芸人の手の内を聞ける講義も『笑けずり』の見どころだ。


例えば、千鳥はネタ帳にネタを書かず、設定ができたら即興でやってみるという。稽古のたびにボケ・ツッコミが固まっていき、本番までも変化し続ける。毎回初見のような気持ちで漫才ができるので、飛び出す言葉は生き生きとする。それを可能にするのはコンビ間の信頼。コンビ仲が悪くて売れたコンビは見たこと無い、と二人は言う。

ノブ「2人で漫才中目見ながら、笑いながら漫才するのが一番、見てる人も楽しくなるんちゃうかな」

千鳥の「即興」に対し、緻密に「計算」をするのがサンドウィッチマン。
しゃべくり漫才の文化が無い東北出身の二人は、賞レースに勝つために「常に笑わせ続ける漫才」を研究した。講義では、M-1優勝を決めた「街頭アンケート」の台本をホワイトボードに貼り、一行ずつ検証。ボケで笑わせ、ツッコミでも笑わせ、徹底的に無駄を排除する。長くなりがちな漫才コントの導入も「世の中一番興奮するといえば街頭アンケートだね」「間違いないね」と二行しか使わない。

伊達「例えば『○○がやりたいんだよな、じゃぁあれやってよ、俺これやるから』という入りがある。それも、もう長い」
富澤「始まればわかる」


中川家は「漫才は庶民のもの。
お気楽なもの」と力説し、バイきんぐは「ネタを作る以外なにがあるんだ」と鼓舞する。若手への言葉は徐々に熱を帯び、過去への自分へのメッセージにも聞こえる。

シーズン2は「コント編」。講師は千原ジュニア、ロバート、ジャルジャル、シソンヌ、サンドウィッチマン。どの講義も見応えがありそう。今から身悶えてしまう。


9組中4組が『笑けずり』きっかけで解散


合宿に参加する若手芸人たちはテレビ的には全く無名。シーズン1の参加者について、番組プロデューサーの松井修平は「出演してもらった芸人さんは、ふだんのオーディションと違って、完成されている芸人ではなく“荒削り”な9組を選びました」(『CULTURE Bros vol.1』より)と語っている。

荒削りということは、伸びしろがあるということ。先輩芸人の講義で見違えるように上手くなるコンビもいれば、ネタ作りで衝突するコンビもいる。素をぶつけあうリアリティショー形式は若者たちの成長物語として機能し、応援していた芸人がけずられたときの切なさったらない(元ヤン漫才師・こゝろが去ったときは泣きました)

8月26日に放送された『笑けずりシーズン2 スタート直前SP』では、シーズン1に出演した9組の芸人たちのその後を追った。最後までけずられることなく、最終決戦に残った3組(ザ・パーフェクト、Aマッソ、ぺこぱ)は単独ライブやテレビ出演など仕事を順調に重ねていた。


一方、けずられた6組のうち、4組は解散していた。

新しい相方と再び漫才をしている者、解散を機にピン芸人となった者、芸人を辞めた者。番組ナビゲーターの尾上松也が話を聞きに行くと、彼らは口をそろえて「笑けずりがきっかけで解散した」と語る。

「今まで一番お笑いについて考えた10日間だった。(コンビとして)テレビとかに出演してガンガン笑いを取ってるイメージができなくなった」(元アルドルフ・小野)
「残った3組は何がしたいか軸が固まっていた。僕らはブレていたの大きい」(元オレンジサンセット・岡田)
「楽しさみたいなモノをごまかしてこれまでやってきたけど、笑けずりが始まって、楽しさっていう大事さに気づいた」(元ダイキリ・宮下)

コンビ仲の悪さ、目指す笑いの違い、将来の不安……。
『笑けずり』で徹底的に漫才に向き合った結果、それぞれに見えたものがあった。島田紳助が『M-1グランプリ』出場資格に「コンビ結成10年以内(現在は15年以内)」を設けた理由が「芸人に辞めるきっかけを与えるため」だったことを思い出す。


人気芸人の講義に、無名芸人の生き様。「笑い」に真剣に取り組む芸人たちを映し出す『笑けずり』。本日22時からスタートするシーズン2には、シーズン1を大きく上回る16組もの若手芸人が参加。予告動画には講師陣が「これはまずい」「完成途中」「辞めたほうがいい」と厳しいダメ出しをする姿が。いったい何組けずられるのか、初回から激震の予感です……!
(井上マサキ)