「シャープ製品」公式Twitter、問題発言で停止 企業アカウント“中の人”が抱えるジレンマ

シャープ製品の関連情報を扱う公式Twitterアカウントが、ツイート内容に批判が殺到したため運営停止となった。企業アカウントの在り方についてネット上で議論が巻き起こっている。

任天堂の新商品に「0円」リプライ


「シャープ製品」は、任天堂公式Twitterアカウントに向けて送ったリプライの内容が問題となった。そちらは任天堂の新商品「ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコン」の収録タイトルを「面白そうだけど... 冷静に、私の思い出(年代的にボリュームゾーン世代より少しずれている事が大きい)を価値に換算していくと...」と値踏みするもの。なんとわざわざ収録タイトルひとつひとつに、自分なりの価格をつけていったリストを添付しており、「0円」としているタイトルも少なくなかった。

当該リプライには批判が殺到し、6月28日に「不適切な発言」だったと謝罪文が掲載された。「シャープ製品」アカウントはその後停止していたが、シャープ公式Twitterアカウントが7月11日、当該アカウントの運営停止を正式に発表した。




企業アカウントの委縮につながる?


シャープ公式Twitterアカウントといえば、ユーモアあふれるツイートがいい意味で企業アカウントらしくないと好評で、41万人以上のフォロワーを有している。シャープ製品の関連情報を扱う「シャープ製品」アカウントもまた顔文字混じりの気さくなツイート内容で人気だった。

社名を冠したTwitterアカウントで他社の商品を無価値と評価した形になるため、ネット上で「炎上して当然だった」と批判する声は多い。一方で、「個人の好みは自由じゃないか」「謝罪しているのに1回の失言でアカウント停止というのは厳しすぎる」「無難なツイートばかりになってはつまらない」という声もあり、個性あふれる企業公式アカウントたちの委縮に繋がるのではないかと不安視されてもいる。

「こんなリプライをわざわざ送った意図は何か」と不思議がられてもいるが、おそらく「シャープ製品」は、任天堂アカウントがツッコミを返して、互いのイジりイジられに発展していくことを期待していたのではないだろうか。企業アカウント同士が面白おかしいリプライを交わすというのは、定番の話題作りの方法だ。

“中の人”を見せるジレンマ


ところで筆者も、会社関連のTwitterアカウントを運営している。その実感として、本当に企業アカウントの運営というものは難しい。「“中の人”が見えるアカウントは鼻につく」という意見は多いが、「“中の人”が見えるアカウントの方が温かみがある」という意見だって多い。そして、自社情報のみをbotのようにツイートするアカウントというのは、結局フォロワーが増えず、稼働したところで無意味という状況になりかねない。刺さる層が存在するぶん、多くの企業アカウントが日常ツイートやネタツイートを投稿するのは、自然な判断だ。

しかし、“中の人を感じさせるTwitter運営”と一口に言っても難しい。「私はランチに〇〇を食べました」のような当たり障りのないツイートばかり投稿しても意味がなく、やはりネット上で話題になりがちなのは多少尖った表現だ。また、中の人を意識させるツイートをするとなると、個人の主観、好みがどうしても漏れ出てしまう。そのジレンマが解決できず、筆者が運用するTwitterアカウントは、やっとフォロワー数が200を超えた程度でしかない。こうなったら、かわいい猫を見つけて画像をアップしていくしかないのか……?

企業アカウントの運営というのは、繊細なバランス感覚が要される作業であるだけに、「シャープ製品」のような“一線の踏み越え”というのはいつ起こってもおかしくない。これまで企業アカウントが炎上した例はあっても、有名企業のアカウントが運営停止にまで至ったというのは大事件だ。今回の騒動をきっかけに、いきなりツイートの雰囲気が変わる企業アカウントというのが出てくるかもしれない。

(HEW)