■「桜庭にはMMAに戻ってきてほしい」
3月3日、さいたまスーパーアリーナで開催される「UFC JAPAN2013」には、岡見勇信(ゆうしん)、五味隆典、福田力、水垣偉弥(たけや)ら日本人トップファイターが多数出場。そして、メインイベントに登場するのは、かつてPRIDEで無類の強さを誇り“絶対王者”と呼ばれたヴァンダレイ・シウバ。日本でのファイトは2006年9月のミルコ・クロコップ戦以来6年半ぶりだ。プロモーションのために来日したヴァンダレイは、終始上機嫌でインタビューに応じた。
―久々の来日ですが、まだ日本語は覚えていますか?
シウバ (週プレをパラパラめくりながら)ゲンキデスカ? ナマエハ? しっかり覚えているぜ。昨日は「はなまるうどん」に行ってえび天うどんを食べたんだ。
―確か「はなまるうどん」から「一生無料券」を贈呈されているんでしたよね。
シウバ 相変わらずの醤油ベースでおいしかったよ。「はなまる」は日本一のうどん屋だ!
―ヴァンダレイさんが留守にしている間に、日本では東日本大震災が起こりました。
シウバ 日本を愛する俺にとってはすごく悲しく、ショッキングな出来事だった。でも、その後すぐに日本は復興に向けて動き始めたじゃないか。何があってもあきらめないで再スタートを切る。
―今は母国ブラジルを離れ、ラスベガスを拠点に活動しているんですよね。
シウバ 妻や息子の安全面を考慮して引っ越したんだよ。相変わらずブラジルは治安が悪く、銃を持っている人もけっこう多いからね。
―現在はブラジルでもUFCが大人気なんですよね?
シウバ そうなんだ。『TUF(タ フ)(ジ・アルティメット・ファイター)』(若手選手育成のリアリティショー)のブラジル版にコーチ役で出演したら、ブラジル国内での俺の人気もさらに上がったんだよ。
―引退後はハリウッドスターやタレントを目指すとか?
シウバ 今は考えていないけど、将来的にそういうチャンスがあれば、チャレンジしてみたいね。
―そういえば、PRIDE時代には日本で映画に出演したこともありましたね。
シウバ 『殴者(なぐりもの)』(2005年)のことだろ? 自分で言うのもなんだが、あの映画の出来は本当によかったと思う。
―その映画で共演し、PRIDEでは3度も闘った桜庭和志とも再会を果たしたようですね。
シウバ 桜庭の元気な姿を見られてよかったよ。今はプロレスで頑張っているそうだな。
―もしPRIDE時代の同窓会をやるとしたら、誰と会いたい?
シウバ そうだな、PRIDEグランプリで闘った吉田秀彦や、2度闘ったクイントン・“ランペイジ”・ジャクソンかな。あの時代に闘った選手はたくさんいるから、同窓会をやったら楽しいだろうね。
―ところで、ブラジルは柔術など寝技主体の格闘技が盛んなイメージがあります。でも、ヴァンダレイさんは最初にムエタイを学びました。どうして?
シウバ 偶然だよ。
―その頃、憧れていたスターは?
シウバ スターではないけど、子供の頃は警察官になりたかった。でも試験に落ちてしまい警察官の夢は叶わず、格闘技に専念するようになったんだよ(苦笑)。
―へぇ。もし警察官になっていれば、ミルコ・クロコップとの試合は警察官世界一決定戦になっていたわけですね。
シウバ そうだね(笑)。
―UFCには07年からレギュラー参戦。PRIDEの試合場はロープに囲まれたリングだったけど、UFCのそれは金網に囲まれた八角形のオクタゴン。この違いは大きかったですか?
シウバ 試合場もそうだけど、ルールの違いに戸惑ったね。PRIDEルールでは倒れている相手の頭部にキックやヒザ蹴りを入れてKOすることができたけど、UFCでは反則になる。正直、PRIDEルールでやっていれば勝っていたと思える試合もあったよ。でも、最近はUFCルールにもようやく慣れてきた。それに、PRIDEでは反則だったヒジ打ちがOKだから、練習をたくさん積んでいる。クリーンヒットすれば、簡単に切れて(出血による)TKO勝ちを狙えるからね。
―PRIDEでは“絶対王者”と呼ばれていたヴァンダレイさんも、UFCでの通算戦績は4勝7敗。負け越してますよね。
シウバ でも、悪い試合ではないだろ。俺はいつだっていい試合をするように心がけてきた。特に最近の2試合はいずれも「ファイト・オブ・ザ・ナイト」(大会ベストバウト)を受賞しているので、ファンに喜んでもらえていると確信してるよ。
■「体が元気なうちは闘い続けたい」
―現在、UFCではテイクダウンを奪ってから有利なポジションをキープしつつ細かいパンチを落として判定勝ちを狙うという闘い方が主流を占めています。豪快なKO勝ちを信条とするヴァンダレイさんから見たら、せせこましい闘い方に見えやしませんか?
シウバ (アイドルの水着グラビアを眺めながら)MMAに限らずどのスポーツも進化していくものであって、アスリートは勝ってナンボ。もちろん、選手によって勝ち方は違うし、それぞれが自分に合った闘い方を選択していくのは当然のことだ。ただ、俺は今後もアグレッシブに攻め続けるスタイルを変えるつもりはないけどね!
―でも、UFCでは連敗を喫すれば、ネームバリューに関係なくリリース(クビ)されるのが当たり前。厳しい世界ですよね。
シウバ 生存競争が厳しいのはスポーツに限らずどの世界でも同じだ。だから、ファイターは一層ベストを尽くさないといけない。スポーツは勝たないと意味がないんだ。そうしたプレッシャーの中で俺たちは闘い続け、勝っていくのが仕事なんだ。生存競争が激しいのは当たり前のことだよ。
―これまで日本、アメリカ、ブラジルだけではなく、ドイツやオーストラリアでも闘ってきましたが、国によって会場の盛り上がり方の違いを感じますか?
シウバ 日本であれ、アメリカであれ、俺の試合に限って言えば、大きな違いはない。世界中どこに行っても、ヴァンダレイの試合になったらいやが上にも盛り上がる。観客の声援に乗せられて試合をするのが好きなんだ。
―日本で対戦するブライアン・スタンは東京・横田基地生まれの元海兵隊員でイラク戦争にも行っています。ヴァンダレイさん同様、「ファイト・オブ・ザ・ナイト」を2度受賞している名勝負男です。
シウバ 強くてタフな相手なので、常に動き回る試合展開になるだろう。俺は低迷している日本の格闘技を復活させたい。ブライアンはメインイベントの相手として不足なしだね。
―ヴァンダレイさんは今36歳。以前、3月の試合が日本でのラストマッチになるかもしれないと発言していました。その気持ちに変わりはない?
シウバ 俺はいつでも目の前の試合のことしか考えていない。体が元気なうちは闘い続けたいというのが本音だよ。だから、日本でのラストマッチになるかどうかは現時点ではわからない。来年か再来年にまた戻ってくるかもね(微笑)。
―もし、『TUF』の日本版が制作されることになったら、コーチに立候補する?
シウバ (壇蜜のグラビアを凝視しながら)もちろん。そうしたら将来有望な日本の若手ファイターをビッシビッシと鍛えてやるぜ!
―ところで、ブラジルでは胸よりお尻が大きいほうがボニータ(美女)だと聞いたことがあるんですけど、やっぱりヴァンダレイさんも尻フェチなんですか?
シウバ ハッハッハ!『プレイボーイ』らしい質問だな(笑)。大きい小さいは問題じゃないんだよ。形の美しさのほうが重要だ。大きさより全体のプロポーションを見たほうがいいぜ!
(取材・文/布施鋼治 撮影/保高幸子)
●ヴァンダレイ・シウバ
1976年生まれ、ブラジル・パラナ州クリチバ出身。13歳でシュートボクセ・アカデミーに入門。PRIDEでは99年の初参戦以来5年間無敗を誇りミドル級王者に君臨。桜庭和志に3連勝し、ミルコ・クロコップ、クイントン・“ランペイジ”・ジャクソンらと激闘を残した。UFCには2007年からレギュラー参戦し通算戦績は4勝7敗
■UFC JAPAN 2013
3月3日(日) さいたまスーパーアリーナヴァンダレイ・シウバvsブライアン・スタン、マーク・ハントvsステファン・ストルーブ、五味隆典vsディエゴ・サンチェス、岡見勇信vsへクター・ロンバードほか全11試合を予定。詳しくは【http://jp.ufc.com/】