◆些細なことに斬新な発見
小説家の柴崎友香さん、初めての本格エッセイ集。柴崎さんの小説は、どこかでエッセイと触れ合っているような気がしていたのだが、このエッセイ集を読んで、その辺りの事情がちょっとだけわかったような気がする。
柴崎さんは大阪でずっと暮らしてきた人だ。だから、東京で暮らし始めてから小さなことに差異を見出して、あれこれ考える。
些細(ささい)なことの中に斬新な発見は宿っている。
たとえば、パン。大阪では4枚切りや5枚切りが普通だが、東京は6枚切りがスタンダード。8枚切りまである。8枚なんてありえない、と思った柴崎さんは、大阪の友人に相談する。
そうすると、その友人は、だからテレビドラマで、パンをくわえたまま走っている人がいるのだ、と妙に納得できる意見を吐く。なるほど。厚手のパンでは口にくわえて走れないかも。
長短さまざまな文章が入っているが、どちらかというと長めの文章のほうが味わい深いような気が。
【書き手】
陣野 俊史
1961年長崎生まれ。文芸評論家、フランス文学者。ロック、ラップなどの音楽・文化論、現代日本文学をめぐる批評活動を行う。最新作に『戦争へ、文学へ 「その後」の戦争小説論』(集英社)。その他の著書に『フランス暴動 - 移民法とラップ・フランセ』『じゃがたら』(共に河出書房新社)、『フットボール・エクスプロージョン』(白水社)、『フットボール都市論』(青土社)など。
【初出メディア】
日本経済新聞 2010年10月27日
【書誌情報】
よそ見津々著者:柴崎 友香
出版社:日本経済新聞出版
装丁:単行本(353ページ)
発売日:2010-09-23
ISBN-10:4532167558
ISBN-13:978-4532167554