「学校に行きたくない」「今日、学校休んでいい?」

夏休み明けなど、長期休暇の後は、子どもからこんな言葉が出やすい時期です。そんなとき、対応に迷う保護者は多いのではないでしょうか。
「休ませた方がいいのか」「一度休ませたら、休み癖がついてしまうのではないか」……さまざまな思いが交錯するかもしれません。

発達障害や不登校・行きしぶりの子どもを持つ保護者を支援する瀬名香織さんは、行きしぶりの状態を「ちょっと言ってみただけ(段階1)」「おさぼりモード(段階2)」「ゆううつ、不安(段階3)」「不安感マシマシ(段階4)」「クライシス(段階5)」の5段階に分けて考えています。

ただし、「行きたくない」という言葉だけで、今どの段階なのかを判断することは難しいといいます。
朝の「行きたくない」は“サボり”か“SOS”か。親が見誤ってはいけない「行きしぶり」の境界線
行きしぶりの段階目安(画像提供:瀬名香織さん)
では、“少し背中を押してもいい状態”と“休ませるべき状態”は、どう見分ければよいのでしょうか。

■【段階1・2】「今日休んでいい?」は単なるサボり? 見分け方のポイント
瀬名さんは、子どもから「行きたくない」と言われたあとの最初のリアクションがとても大事だと話します。

「まずは否定せず受け止めてほしいんです。『行かなきゃ』ではなく、『そっか、行きたくないんだね』『休み明けだし、しんどいよね』と、受け止める姿勢がとても大切です」

「ちょっと言ってみただけ(段階1)」「おさぼりモード(段階2)」といった比較的軽い段階であれば、「お母さんも分かってくれた」と安心したことで、「じゃあ行ってくる」と気持ちを切り替えられる子もいます。

そのうえで、「行く・休む」の二択にしないこともポイントです。

「午後から行く?」「給食だけ行ってみる?」など、学校へ行くハードルを下げた選択肢を示してみます。それで「それなら行けそう」となるなら、まだ背中をそっと押せる段階かもしれません。

そして、朝以上に見てほしいのが帰宅後から夜にかけての日々の様子です。

帰宅後も普段通り元気で、好きなことを楽しめているのか。
それとも、帰った途端ぐったりしている、夜になると情緒が不安定になる、癇癪(かんしゃく)が増えているなどの変化があるのか。

「そういうサインが出ているなら、翌朝の『行きたくない』はしっかり受け止めた方がいいと思います」

つまり、“サボり”かどうかを朝の一言で見抜こうとするのではなく、普段との違いと、少し背中を押したときの反応を見ることが重要なのです。

■【段階3・4】強い拒否や元気のなさは黄色信号。「大丈夫、行っておいで」はNG
ハードルを下げても、「嫌! 絶対行きたくない」と強く拒否する。以前より意欲や好奇心が落ちている。帰宅後にぐったりし、情緒も不安定になっている。

こうした変化が出てくると、瀬名さんのいう5段階では「ゆううつ、不安(段階3)」「不安感マシマシ(段階4)」に進んでいる可能性があります。

ここで避けたいのが、「大丈夫、大丈夫。行ったら楽しいよ」「とりあえず行っておいで」と押し続けることです。

瀬名さんは、軽い段階なら背中を押すこと自体は問題ないといいます。ただし、「グイグイ押す」のではなく、イメージは「肩にポンと手を置くくらい」。それでも激しく抵抗するのであれば、「今日は休もう」と切り替えることが必要です。


また、子どもが理由をうまく説明できなくても、「大したことではない」とは限りません。小さなストレスが積み重なり、本人にも理由が分からなくなっている場合もあれば、友人関係など明確な理由があっても、親に心配をかけたくなくて言えないこともあります。

理由を聞くこと自体は構いません。ただし、「誰?」「何があった?」「それがなくなれば行ける?」と原因追及をするのではなく、子どもの気持ちを知るために聞くことが大切です。

■【段階5】心身に不調が出たら「クライシス」。一刻も早く休ませて
特に慎重に受け止めたいのが、「おなかが痛い」「頭が痛い」など、体に症状が出ている場合です。瀬名さんは、「おなかが痛い」という訴えについては「クライシス(段階5)だと思っている」と話します。

学校を休むと急に元気になるため、「本当に痛かったの?」と思う親もいるでしょう。しかし瀬名さんは、「痛いと言っているときは、本当に痛いと感じていると思ってほしい」と言います。

学校へ行かなければならない緊張でおなかが痛くなり、「今日は休める」と分かった途端、安心して症状が和らぐこともあるからです。

「『休んだら元気やん』ではなく、朝しんどかった姿も本当。その訴えを否定して無理に行かせると、身体症状がさらに強くなったり、『お母さんに言っても信じてもらえない』と親への信頼まで失ったりすることがあります」

身体症状が繰り返される場合は、心の問題と決めつけず、まず医療機関で身体的な原因がないか確認することも必要です。


そして、心身に明らかな不調が表れている「クライシス(段階5)」の状態まで来たら、もはや「学校を休ませていいか」と迷う段階ではありません。親がドクターストップをかけるくらいの勢いで休ませる必要があります。

瀬名さんは、「本来は、そこまで追い込まれる前、「不安感マシマシ(段階4)」くらいでしっかり休ませてほしい」と話します。「子どもが心身の不調をきたしてまで、行かなければならない場所なんて、この世界に1つもないんです」

「休ませたら休み癖がつくのでは」と心配になるかもしれませんが、瀬名さんは保護者からのそういった相談には「休み癖はつかないです。1日、2日休んで元気になり、また行ってみようとなる子も多い。必要なら2、3日しっかり休ませてあげてもいいと思います」と伝えています。

そして休ませると決めた日は、「ゲームは禁止」「学校を休んだから勉強しよう」と条件をつけず、きちんと休ませること。

朝の「行きたくない」を、その場だけで解決しようとしない。普段の様子、帰宅後の疲れ方、心や体の変化、そして背中を押したときの反応を見る。

それが、“少し休みたい”と“もう頑張れない”の境界線を見誤らないために、親ができることなのです。

お話を聞いたのは:瀬名 香織(せな かおり)さん
株式会社ユニポップル代表。「凸凹kidsロードマップアカデミー」主宰。
発達障害やグレーゾーン、不登校・行きしぶりの子どもを持つ保護者へのカウンセリングや講座を行い、これまで約5000人の相談に携わる。産業カウンセラー、家庭療法カウンセラー、などの資格を持つ。自身も発達障害・不登校の子どもを育てる母。発達が気になる子どもの学習支援とフリースクールを行うNPO法人の設立準備中。

この記事の執筆者:廣田美絵子
大手化粧品会社で人事部にて採用・教育・広報を担当。その後教育系のベンチャー企業を経てフリーランスで取材・編集・執筆を行う。キャリアコンサルタントでもあり、人のキャリアや生き方にフォーカスした記事執筆を得意とする。
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