お盆休みが近づくと、夫婦の会話にも季節モノが登場します。

「今年はどっちの実家に先に行く?」

「新幹線、家族分でいくら? アツシは小学生だから今年は料金かかるよ」

「お土産は去年よりいいモノにするよね。
あなた、昇進したからさ」

「何泊するの? 1泊でいいよね」

帰省は本来、親や兄弟に会うための楽しい予定です。ところが、交通費、お土産代、混雑、子どもの荷造り、義実家での気疲れが重なると、メンタルはまったく休まりません。帰宅した瞬間、夫婦げんかの延長戦が始まる家庭が多いのは確かです。

そこで注目されているのが、夫婦が一緒に双方の実家を回らず、それぞれの実家へ帰る「セパレート帰省」です。私は「お気楽帰省」と別名も付けています。

「別々に帰省って夫婦仲が悪いのでは?」と心配する親世代もいますが、決してそうではありません。同じ新幹線、飛行機に乗ることだけが夫婦愛ではありません。

相手の親の顔を見ることでファミリーの絆が深まる場合もあるけれど、逆に絆が切れる場合もあるのです。

とはいえ、セパレート帰省はやり方を間違えると、スタンダード帰省より大きな不満が残ります。今回は、セパレート帰省がうまくいった夫婦と、こじれた夫婦の違いを見ていきましょう。

■セパレート帰省はレアじゃない
講談社「with class」が妻1555人を対象に実施した調査では、セパレート帰省を「経験したことがある」と答えた人は55%でした。

また、生活総合情報メディア「ヨムーノ」が2025年12月に行った調査では、「セパレート帰省をする予定」が12.0%、「これまでにしたことがある」が14.6%。
「経験はないが、してみたい」の37.3%まで含めると、前向きな人は63.9%でした。

調査対象や質問方法が違うため、2つの数字を単純比較することはできません。それでも、セパレート帰省が一部の夫婦だけのものではなくなっていることは見えてきます。

帰省のお金も無視できません。「ヨムーノ」の同調査で、帰省する人100人に家族全体の予算を聞いたところ、最も多かったのは1万円以上3万円未満の20.0%。10万円以上という人も8.0%いました。

「正直しんどいこと」では、義両親との会話が29.7%、手土産などの準備が25.3%でした。

つまり帰省問題は、楽しみも気遣いも経済負担も長短含んでいる問題です。

■セパレート帰省成功組は「別々に帰る」前に夫婦で会議
留花さん(仮名・36歳・会社員・子どもなし)の実家は長野、夫の実家は福岡です。これまではお盆休みのたびに、東京の自宅から二人で両方の実家を回っていました。

新幹線と飛行機の料金に加え、両家へのお土産、親族との外食代。限られた休みの大半が移動で消え、留花さんは毎年「自分の実家に帰ったのに、母と落ち着いて話せなかった」と感じていました。


夫もまた、久しぶりに会う地元の友人から誘われても、夫婦の移動予定が詰まっていて断ることが続いていました。

そこで昨夏、留花さん夫婦は初めてセパレート帰省を選びました。留花さんは長野へ、夫は福岡へ。それぞれ3泊し、休暇の最終日は東京の自宅で一緒に過ごす形です。

この夫婦が上手だったのは、出発先を分ける前に、次の4つを一緒に決めたことでした。

・ 交通費はそれぞれの小遣いではなく、共通の「帰省費」として二人で貯めている家計から出す
・手土産の予算は両家ほぼ同額。中身は、親の好みに合わせて各自で選ぶ 
・帰省中は一日一度LINEし、監視し合わない
・夫婦で来ない理由は、それぞれが自分の親に説明する 

夫は福岡の両親に「留花が行きたくないと言っている」ではなく、「二人で相談して、今年はそれぞれの親とゆっくり過ごすことにした」と伝えました。ここがとても大事です。

結果、留花さんは久々に母とショッピングセンターに行き、靴やバッグを見て楽しく過ごし、夜は昔のアルバムを見ながら遅くまで女子トーク。

夫は先祖のお墓参りをし、気持ちを清めました。高校時代の友人達とビールを飲んだり、ラーメン屋をはしごしたりすることもできました。

また、移動と土産の重複が減り、費用は前年より格段に抑えられました。


帰宅した二人は、互いの実家で何があったかを話し、休暇中の出来事を共有しました。セパレート帰省が“夫婦の分断”ではなく、それぞれの親子時間を尊重する共同プロジェクトになった成功例です。

■セパレート帰省失敗組は「夫だけ自由」「妻のワンオペ」でバトルに
一方、サリナさん(仮名・41歳・派遣社員・子ども2人)のケースは、同じセパレート帰省でも様子が違っていました。

夫はある日、「サリナはうちのおふくろとソリが合わないから、今年は別々に帰るか」と提案しました。夫は毎年の帰省後、母の愚痴を言う妻にへきえきしていました。ある意味、気遣いの提案でした。

サリナさんは小学生と保育園児の二人を連れて、自分の実家へ帰ることになりました。

形態はセパレート帰省です。しかし、子ども二人分の着替えや薬、おもちゃを用意し、混雑する駅で三人分の荷物を持つ。移動中の食事やトイレを気にするのも、もちろんサリナさんしかいません。

一方の夫は、身軽な一人帰省。実家ではゆっくり昼寝をしたり、犬の散歩をしたり。
夜は久しぶりに兄弟三人で酒盛り。その写真を家族LINEに投稿しました。

それを見たサリナさんの心に浮かんだのは「あなた一人だけ夏休みですか?」のひと言です。

サリナさんの両親は孫と遊ぶことに夢中で、食事の支度は娘まかせ。「子どもの好きな食べ物は、最近作ってないから分からない」と。親の喜ぶ顔はいいのですが、五人分の食事作りはちょっとしんどい……。

結局最後の日はファミレスに行きました。そして、お風呂もサリナさんが担当することに。実家でも休む時間がなく、クタクタになってしまいました。

夫の方は、自分の両親に「サリナがうちに来たがらないから」と説明していました。義母から届いた「何か気に障ることをしたかしら」「孫に会いたいんだけど」という皮肉LINEで、それが発覚。

帰省中にもかかわらず電話で大げんかになってしまいました。


この夫婦の失敗は、別々に帰ったことではありません。夫婦で深く考えず、負担を見える化せず、子どもを妻側に割り振ったことです。しかも夫が、自分の親への説明まで妻に背負わせてしまった。

サリナさんも、子どもは母親と一緒がいいだろうと、思い込んでいたところは反省点です。

これではセパレート帰省ではなく、「夫のソロ休暇」と「妻の帰省ワンオペ」です。

子どもがいる家庭では、「どちらが子どもを連れていくか」を最初に固定しないこと。兄弟を分ける、今年夫が二人を連れていったら次回は妻が連れていくなど、移動の大変さと一人で休める時間まで含めて公平に考える必要があります。

公平とは、費用をきっちり半分にすることだけではありません。人によっては、料理作りが好きだから実家の家事を負担と感じない、実家にいるときは母親に楽させてあげたいと考える場合もあります。

子どもとは離れたくないと思う人もいるでしょう。それぞれの個性がありますので、そこは各夫婦ですり合わせてください。

■セパレート帰省を成功させるコツ
では、どうすればセパレート帰省がうまくいくのでしょうか。


・別々に帰る目的を共有する
・交通費、土産代、親族との会食費を事前に見える化する
・荷造り、交通機関予約、土産準備、子どもの同行を含めて「しんどいと思うこと」を配分する
・自分の親への説明は自分が担当し、「配偶者が嫌がった」とは言わない
・帰省しない側の実家にも、電話や菓子送付、次回の訪問など代替案を用意する

大切なのは「一緒に行くか、別々に行くか」の二択ではありません。どちらかが我慢する前提なら、どちらを選んでも不満は残ります。

帰省中からモヤモヤするなら、心はすでにセパレートです。

「夫婦なんだから一緒が普通」ではなく、「私たち夫婦にとって、一番無理のない形は何だ」と話してみてください。

昭和の常識は令和の非常識という事象も出てきています。

まずは常識を疑う。セパレート帰省は、上手に設計すれば、夫婦と両家を長くつなぐための知恵になるはずです。

<参考>
・「もう当たり前?「セパレート帰省」妻1,555人に聞いてわかった、うまくいく家庭の共通点」(講談社)
・「3人に1人が義実家への帰省は「気が重い」!夫婦別々の「セパレート帰省」、前向き派は6割超え。生活総合情報メディア【ヨムーノ】、「年末年始の帰省」に関する最新の意識調査を実施」(株式会社ベビーカレンダー)

▼三松 真由美プロフィール男女関係に悩む1万3000名の女性会員が集うコミュニティを展開。セックスレス・ED・女性性機能に詳しく、性を通して男女関係を円滑にするメソッドを考案。講演、メディア出演、著書多数の恋愛・夫婦仲コメンテーター。執筆家。
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