顔面蒼白。鏡を見たわけではない。
が、ここで青ざめずして、いつ青ざめるというのか。自信を持って断言できるが、あの日は文字通り絶体絶命のピンチだった――。人生で五本の指に入るぐらいの「詰みかけた日」と言っても過言ではないだろう。でも、なんとか乗りきれた。

この記事は、私が思わず「やばい、詰んだわ」とつぶやいた日をどう乗り過ごしたのかをお届けするものである。

担当者不在。すべての悲劇はここから始まった

物語は6月某日にまでさかのぼる。異変に気づいたのは、空港へ向かう電車内だった。バッグの中で、ふと指先に触れた紙の感触。嫌な予感がした。「まさか……」と思いながら視線を落とした。

茶色い封筒。
全身から血の気が引いた。あった。……いや、「あった」じゃない。あってはいけないものが、あった。クライアントに提出するNDA(秘密保持契約)の原本である。

本来なら、その日の午前中にクライアントのオフィスへ立ち寄った際、担当者のAさんに手渡しする予定だった。しかし、運悪くそのタイミングでAさんは離席中。契約書の原本だったこともあり、受け付けへ預けるのは避けたかった。「Aさんに直接お渡ししよう」。そう考えてバッグへ戻した。今思えば、それが間違いだった。

ほどなくオフィスから5分ほどのカフェに移り、別件のリモートミーティングに着手した。
だが、予想以上に打ち合わせが押してしまい、当初の終了時刻になっても一向に終わる気配がない。

午後からは地方出張が控えていた。飛行機の時間も迫る。時計を見るたびに焦りが増していく。だからといって、上機嫌にいろいろと提案してくれる画面越しのお偉方の話を途中で遮るのは至難の業だ。頭の中は次第に「空港に間に合うか」でいっぱいになっていく。その気持ちに反比例するかのごとく、NDA書類の存在は小さくなっていった。

そして当初の予定を30分以上もオーバーして打ち合わせが終了。私はカフェを離れ、一目散に最寄り駅へとダッシュ。空港へと向かう電車に飛び乗っていた。そして、冒頭のシーンに戻るのである。
パニックに陥り、AIに解決方法を聞いてみた

NDA書類はその日中にクライアントに提出することになっていた。
そこから同社のしかるべき部署にて不備がないかをチェックされるわけだが、「大企業あるある」なのか、そのチェックが終了するまでにかなりの日数を要するらしい。

NDAが締結されるまでは案件そのものを始められない。一方で、納期は変わらない。つまり、提出が1日遅れるだけで、実質的な制作期間が丸々1日削られてしまうのだ。そのうえ、地方出張は1泊2日の日程。下手したら、提出が翌々日以降になる可能性すらあった。これは致命的なロスだ。

「今から引き返すか…?」と電車内で思案したが、即「無理」と判断した。クライアントのオフィスへ引き返して契約書を届け、そこから空港へ向かうなんてルートを選んだら、十中八九飛行機に間に合わなかった。どう考えてもヤバい。社会人として、かなり情けないミスである。もう、取り返しがつかなかった。


どうする。

どうする。

どうする。

脳内で幾度かリフレインした。その後、思わず「やばい、これ詰んだわ」と苦笑いを浮かびながら独り言ちた。人は本当にピンチになると笑う生き物なのだろうか…?

とはいえ、何もしないわけにはいかなった。空港へ向かう電車の中で、私はスマートフォンを握りしめ、「今この瞬間に書類を届ける方法」を見つけるべく、AIに尋ねてみた。

「数km先のオフィスに今すぐ大事な書類を届けたい。30分以内とかに」

「……」

「……」

「数km先のオフィスへ30分以内に書類を届けるには、ご自身か社内の方がタクシーで直接運ぶのが最も確実です。一般的なバイク便や配送サービスでは、ドライバーがあなたのオフィスに集荷へ来るまでに15分~30分以上かかってしまうため、30分以内の『お届け』には間に合いません」

焦って肝心なことを入力し忘れていた。自分自身は動けない事実を伝えていなかったのだ。しかし…バイク便でも無理そうなことに改めて絶望を覚えたことをはっきりと覚えている。


「自分は他に行くところがあるから他の人に配達してもらいたい。バイク便以外にもっとスピーディーかつ手軽に運んでもらえるサービスはないの?」

ワラにもすがる想いで打ち込んでみた。

「……」

「……」

「バイク便よりも手軽かつ圧倒的にスピーディーな手段として、Uberの即時配送サービス『Courier(クーリエ)』が最適です」

「ク…クーリエ?」。私は電車内でまたもや独り言ちた。
Uberの即時配送サービス「Courier」とは

Uber Courierは、Uberアプリを通じて配達パートナーに荷物の配送を依頼できる配達サービス。従来の宅配便のように「荷物を集め、小分けにして、翌日以降に届ける」仕組みとは異なり、Uberのマッチング技術を活用したダイレクトな即時配送が可能だという。スマホで完結するため配送伝票も不要で、配送拠点を経由しないため最短数十分で配送でき、リアルタイムで荷物を追跡できる特徴を持つ。

これだ! と思った。私はすぐにUberアプリを開くと画面から「Courier」を選択した。荷物を集荷してもらうためにいったん下車。現在地を入力し、配送先はクライアントのオフィスに指定した。

荷物の内容など必要事項を入力し、依頼を確定する。
操作は驚くほどシンプルで数タップで完了した。

ほどなくして、配達パートナーがマッチング。早い。想像以上に早い。指定した受け渡し場所は、駅近くのコンビニ前。そこでパートナーと合流し、封筒を手渡した。

「お願いします」。もはや託すしかない状況だった。本当であれば、手を握りしめて目を見つめながら「我々にとって、すごく大事な書類なんです。どうか、どうかよろしくお願いします」と念を押したい気持ちだったが、無駄なプレッシャーをかけてもしょうがなかった。

「契約書よ、ちゃんと届いてくれよ……」。クライアントのAさんにUberで書面が届く旨を伝えたのち、私は再び空港へ向かったのである。

Courierは、配送状況をリアルタイムで確認できる点という利点を持つ。今どこにいるか。どこまで進んだか。すべてわかる。これは精神衛生上、かなりありがたかった。送ったはいいが、「その後どうなったかわからない」というのでは不安しかない。

スマホの地図上で、荷物が移動していた。それを見届けつつ、心の中で「いや、マジで何らかのトラブルで電車遅延しないでくれよ……!」。普段なら絶対しない祈りを捧げていた。そう、荷物はもう安心だ。あと越えねばならない山は「搭乗時間に間に合わせる」であった。

依頼してから20分ほど経ってスマホにメッセージが届いた。Aさんからだった。

「無事にNDAを受け取りました」

……届いた。思わず天に拳を掲げた。契約書は無事にクライアントのオフィスへ到着し、私も電車の遅延なく空港へ到着した。フライトまで残された時間は30分を切っていた。

ダッシュでチェックインを済ませ、保安検査を通過し、搭乗口へ向かう。……なんとか間に合った。ちょうど機内への搭乗開始の案内がされるところだった。喉がカラカラで額にはうっすら汗がにじんでいたが、飛行機に乗れた。すべてが丸く収まった。首の皮一枚、つながった。こうして、私は「詰みかけた日」を乗り越えたのだ。
人生の「詰んだ瞬間」を救う選択肢

Uber Courierがなければ出張自体は問題なくクリアできたとしても、NDAの提出が遅れて納期がキツキツな状態で案件に対応せざるを得なかっただろう。そんな状態では当然、ミスも起きやすくなるだけに誰かに迷惑をかけていた可能性もあったはずだ。

忘れ物をしないのが一番。それは間違いない。だが、人は忘れる。忙しい日に限って、信じられないミスをする。忘れ物をして詰みかけたときのため、荷物だけを最速で届けられる手段があることを覚えておいて損はないだろう。
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