実家を相続する際、「兄弟で平等に分けたい」という思いから不動産を「共有名義」にするケースは少なくありません。しかし、この安易な選択が将来的な親族間トラブルの火種になるリスクを孕んでいます。
本記事では、共有名義のデメリットと単独名義のハードルを整理し、親が元気なうちにできる生前対策や、事後対策について解説します。
○なぜ「とりあえず共有」はリスクなのか?

不動産は現金のように1円単位で分割できない資産です。そのため、遺産分割協議で結論が出ず「とりあえず兄弟の共有名義にしておこう」と先送りされがちです。しかし、共有状態の不動産は、将来的に売却や活用をする際の足かせとなる可能性が高いのです。
○売却・活用のハードル

共有不動産を売却したり、建て替えたりするには、原則として「共有者全員の同意」が必要です。一人でも反対すれば身動きが取れなくなります。
○二次相続による権利の細分化

共有者の誰かが亡くなると、その持分はさらに配偶者や子ども(甥・姪)へと相続されます。数十年後には権利者が数十人に膨れ上がり、全員の同意を得ることが事実上不可能になるケースも存在します。
○管理費用や手間の押し付け合い

固定資産税の支払いや、空き家となった実家の草むしり・修繕などの負担割合で揉めるトラブルが頻発します。
○「単独名義」なら安心、とも限らない

では、誰か1人の「単独名義」にすれば万事解決かというと、そう簡単な話ではありません。実家を継ぐ人が、他の兄弟に不公平感が出ないよう現金(代償金)を支払う「代償分割」という方法がありますが、手元に十分なキャッシュがなければ成り立ちません。また、不動産の評価額を巡って親族間で意見が対立し、軋轢を生むケースもあります。


○相続トラブルを回避する生前対策

トラブルを防ぐためには、親が元気なうちの「生前対策」が有効です。
○家族会議での意思確認

親の希望と子世代の意向(誰も実家に住む予定がない等)を事前にすり合わせておくことが重要です。
○遺言書の作成

親が「誰にどう相続させるか」を法的に有効な形で書き残すことで、遺産分割での不要な争いを防ぐ一助となります。
○生命保険の活用

実家を継ぐ予定の子を生命保険の受取人に指定しておくことで、他の兄弟へ支払う代償金の原資を計画的に準備できます。
○やむを得ず複数人で分ける場合の事後対策

すでに相続が発生し、どうしても複数人で分ける必要がある場合でも、リスクヘッジは可能です。
○合意書の作成

将来の売却条件や、管理費用の負担割合をあらかじめルール化し、書面で残しておきます。
○家族信託の活用

不動産の名義(管理・処分権限)を1人に集約しつつ、売却時の利益は兄弟で分かち合う仕組みを作ることで、意思決定のフリーズを防ぎます。
○換価分割の前提

共有状態を「売却までの暫定措置」と割り切り、早めに売却して現金を分ける出口戦略を決めておきます。
○まとめ

不動産相続に「絶対の正解」はありません。共有名義のリスクと単独名義のハードルを正しく理解し、各家庭の事情に合わせた選択をすることが求められます。お盆やお正月など、親族が集まるタイミングを活用し、実家の未来についてオープンに話し合うことが、円満な相続への重要な第一歩となるでしょう。

赤鹿地所 代表取締役社長 赤鹿保生 あかしかやすお 1966年、兵庫県生まれ。
1989年に芦屋大学教育学部を卒業後、朝日住建へ入社。1992年に赤鹿地所へ入社し、1999年より現職。姫路・播磨エリアに密着した不動産事業を牽引している。宅地分譲「ロワイヤルガーデンズ」を兵庫県南西部にて展開し、姫路市でNo.1の供給量を誇るほか、不動産仲介においても大手一括査定サイトの査定問合せ件数で姫路市No.1の実績を持つ。賃貸住宅管理では、24時間駆付けサービス「スマイルサポート24」(管理戸数1,800戸超)を運営。大型スーパーや家電量販店など商業施設の自社開発にも取り組み、事業用賃貸借を展開している。長年の経験を活かし、地域に根ざし、不動産価値創造に繋がる街づくりに尽力している。赤鹿地所:https://www.akashika-jisho.co.jp/ この著者の記事一覧はこちら
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