夏休みや年末年始など、まとまった時間が取れる時期に、久しぶりに証券口座を開く人もいるだろう。積み立ててきた投資信託が値上がりし、資産総額も増えていれば、「運用は順調だ」と安心したくなる。
ただ、口座に表示される金額が増えているからといって、当初の考えどおりに運用できているとは限らない。相場の動きに影響され、気づかないうちに判断の基準が変わっていることもある。
ポートフォリオを見直すとき、資産額や含み益より先に確認したいことは何か。資産形成が順調な人ほど見落としやすいポイントを探っていく。
○そのポートフォリオ、本当に「投資」?
投資とトレードは、株を買って利益を狙う点では同じに見える。だが、保有する期間も重視する情報も異なる。
トレーダーであり、株式投資家の窪田剛氏は、ポートフォリオを見直す前に、まず自分の運用がどちらに当たるのかを確認すべきだと話す。
「最初に、自分がやっているのは投資なのか、トレードなのかを分けて考える必要があります。ここが曖昧なままだと、何を基準に持ち続け、どこで売るのかも決められません」(窪田氏、以下同)
長期投資では、半年、1年、あるいは5年、10年と資産を持ち続ける。その間に保有銘柄や資産配分が目的から外れていないかを確認するため、ポートフォリオが重要になる。
短期のトレードでは、数週間から1カ月ほどで銘柄が入れ替わることも珍しくない。
「トレードの場合は、ポートフォリオを何度も見直すというより、そのときに勢いのあるところへ資金を移していく感覚です。投資は長く持つものなので、いま保有しているものが、自分の目的に合っているかを確認していきます」
銘柄を頻繁に入れ替えれば、資産を管理している気分にはなれる。だが、売買回数を増やすことと、運用を整えることは同じではない。その違いが最もはっきり表れるのが、保有株の値下がりに直面したときだ。
○含み損を「長期投資」に変える人たち
株価が下がったとき、投資とトレードを区別できているかどうかが、売買判断を左右する。
窪田氏が例に挙げるのが、半導体メモリーを手がけるキオクシア(285A)だ。AI市場の拡大やメモリー需要への期待から、「この会社は今後も成長する」と考えて株を買う人はいる。
もっとも、その会社がどのような製品を作り、競合他社と何が違うのかまで調べたうえで購入している人ばかりではない。実際には、株価が上がっていることや、SNS、動画で話題になっていることに背中を押されているケースもある。
「会社の未来に資金を投じたのであれば、成長のシナリオが変わらない限り、株価が下がっても持ち続ければいいはずです。しかし、実際には短期間で利益を出したかっただけの人も多い。
株価が上がっている間は「将来性を買った」と考え、下落すれば「買値まで戻ったら売りたい」と願う。後者が本音なら、企業の成長を待つ長期投資ではなく、短期で利益を得るつもりだった可能性が高い。
本来であれば、購入前に保有する期間や目標とする利益、売却する条件を決めておく必要がある。企業の成長を見込んで長く持つなら、どの前提が崩れたときに手放すのかも考えたい。
そこを曖昧にしたままでは、短期売買で生じた含み損を「長期投資」に置き換え、塩漬けにすることになりかねない。
○AIに聞くほど損切りできなくなるワケ
さらに厄介なのは、買った後から「持ち続けても大丈夫な理由」を探し始めてしまうことだ。株を買った後に価格が下がり、慌てて企業の情報を調べ始める人もいるとか。
生成AIに企業名を入力し、「この会社の強みは何ですか」「今後も成長する可能性はありますか」と尋ねれば、事業内容や市場の見通しを短時間で整理できる。企業分析の入り口としては便利な使い方だろう。
ただし、すでに損失を抱えている状態では、質問の目的が変わってしまうことがある。
「長期投資をするのであれば、企業分析は買う前にやっておくべきです。株価が下がった後でAIに将来性を聞いても、持ち続けるための言い訳を探すだけになりかねません。
保有を続けたいという結論が先にあり、その判断を支える情報だけを集める。これでは冷静な分析とは言いにくい。長期で保有するなら、買う前に事業内容や競争力、決算まで確認しておきたいところ。
一方、短期売買では、企業の将来性よりも、需給や値動き、損切り・利益確定のルールが重要になる。どちらを選ぶにしても、買った後になって、自分に都合のよい理由を探さないことが大切だ。
○個別株への挑戦が、資産形成を壊す...
S&P500や全世界株式、いわゆるオルカンを積み立ててきた人のなかには、資産が順調に増えるにつれ、個別株にも挑戦したくなる人がいる。
投資を始めたばかりの頃より知識は増え、企業ニュースにも目を通すようになった。インデックス投資より個別株のほうが、大きな利益を得られる可能性もある。
一方で、どの企業が伸びるかを見抜き、長期にわたって指数を上回り続けるのは容易ではない。窪田氏は、すでにインデックス投資を続けている人が、無理に個別株へ移る必要はないと指摘する。
「S&P500やオルカンなどの指数を買っている人は、そのまま続けたほうがいいと思います。個別株で長期的に指数へ勝つのは、ファンドマネージャーやアナリストでも難しい。
個別株を長期保有するなら、企業の事業内容や競争力を調べ、決算を継続的に確認する必要がある。
短期トレードを選ぶ場合は、学ぶ内容が変わる。株価チャートを分析するテクニカルの知識に加え、どの業種へ資金が流れ、どこから抜けているのかを追わなければならない。損切りや利益確定のルールも欠かせない。
「個別株をやるなら、長期投資なのか短期売買なのかを決め、それぞれに必要な勉強をしなければいけません。インデックス投資をしていたから、その延長で個別株でも勝てるわけではないんです」
なかでも注意したいのが信用取引だ。手元の資金を上回る取引ができる半面、株価が想定と反対に動けば、損失も膨らむ。資産を早く増やしたいという焦りだけで踏み込めば、それまで積み上げてきた資産を失う恐れもあるのだ。
○「投資していない人」も実は“全額投資”している
ここまで「ポートフォリオ」という言葉を使ってきた。そう聞くと、証券口座に並ぶ銘柄や、その保有比率を思い浮かべる人も多いかもしれない。
しかし、株式や投資信託は、保有資産の一部にすぎない。預貯金、外貨、債券、金、保険、不動産なども含めて、自分の資産がどこに置かれているかを見る必要がある。
「投資をしていないと思っている人も、実際には円という資産にほぼ全額を置いています。生活に必要な円はもちろん残すべきですが、使う予定のない預貯金まで円だけで持ち続けていいのかは考えたほうがいい。ポートフォリオは、証券口座の中だけでなく、資産全体で見るものです」
預貯金には、金額が大きく変動しにくい安心感がある。一方、円以外の通貨から見た価値は為替相場によって変わり、物価が上がれば同じ金額で買えるものも減っていく。
だからといって、預貯金をすべて株式や外貨へ移せばよいわけではない。近いうちに使うお金や、病気、失業などに備える生活資金まで値動きのある資産に回せば、必要なときに取り崩せなくなる可能性がある。
株式市場の上昇によって、当初より投資資産の比率が大きくなっている人もいるだろう。年齢や家族構成、収入、今後の支出が変われば、適切な現金の量も変化する。
長期休暇に見直したいのは、含み益の額や次に買う銘柄だけではない。自分はどれくらいの期間で、何を目指して運用しているのか。
さらに、資産全体をどこに置いているのか。そこまで整理して初めて、見直すべきポートフォリオが見えてくるのかもしれない。
西脇章太 にしわきしょうた 1992年生まれ。三重県出身。県内の大学を卒業後、証券会社に入社し、営業・FPとして従事。現在はフリーライターの傍ら、YouTubeにてゲーム系のチャンネルを複数運営。専門分野は、金融、不動産、ゲームなど。公式noteはこちら この著者の記事一覧はこちら
窪田剛 くぼたつよし 実業家、株式トレーダー。 1981年、長野県生まれ。 大学卒業後、専門商社のベンチャーに就職。経理・経営企画・IPO関連業務に携わり、東証マザーズへの上場を経験。その後、学生時代から取り組んでいた株式トレードを専業として独立する。オンライン株式スクールの「株の学校ドットコム」および「カブケーションズオンラインスクール」で講師を務める。 トレードを一から解説した著書『株の学校』シリーズ(高橋書店)は累計34万部を突破。eスポーツや宇宙事業、医療関連企業に出資するほか、福島県における雇用創出支援、アフリカ・ガーナのスタートアップへの出資など、エンジェル投資家でもある。 この監修者の記事一覧はこちら











![[USBで録画や再生可能]Tinguポータブルテレビ テレビ小型 14.1インチ 高齢者向け 病院使用可能 大画面 大音量 簡単操作 車中泊 車載用バッグ付き 良い画質 HDMI端子搭載 録画機能 YouTube視聴可能 モバイルバッテリーに対応 AC電源・車載電源に対応 スタンド/吊り下げ/車載の3種類設置 リモコン付き 遠距離操作可能 タイムシフト機能付き 底部ボタン 軽量 (14.1インチ)](https://m.media-amazon.com/images/I/51-Yonm5vZL._SL500_.jpg)