男女ともに50歳時の未婚率は上昇を続けており、2020年時点では男性がおよそ3割、女性も2割近くに達している。そうした社会背景のなか、独身者の日常や、ひとりの時間を前向きに楽しむ姿を描いた作品が次々と生まれ、いずれも多くのファンを獲得している。
若者の結婚離れや少子化が深刻化する日本で、こうした"独身リア充"作品は社会にどんな影響を与えているのだろうか。

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独身女性を主人公にした作品は、2000年代以降少なからず制作されてきたが、かつては、たとえ才色兼備のヒロインであっても、どこか"満たされない存在"として描かれがちであった。

例えば、2008年放送の『Around40~注文の多いオンナたち~』(TBS系)の第1話には、39歳の精神科医・緒方聡子(天海祐希)が、人生を順調に進める友人を列車に重ね、「おいてかないで~!」と叫びながら追いかける場面がある。同作は、結婚しない生き方を含めてさまざまな価値観を肯定して一方で、独身女性に向けられる世間の偏見や同情を色濃く映しだす場面もあった。

しかし近年は、独身であることで惨めな扱いを受ける描写は少なくなった。むしろ、独身生活をマイペースに楽しむヒロインが増えている。7月からドラマ10で放送予定の『団地のふたり』(NHK総合ほか)は、その代表例だ。50代で独身、定職なし、実家暮らしの太田野枝(小泉今日子)と桜井奈津子(小林聡美)を中心に、物語が展開する。

東京で暮らす50代のなかには、野枝や奈津子のように自宅周辺で生活が完結し、身近な幸せを大切にしながら生きる人も少なくない。作品は、そうした現代のライフスタイルを映し出している。

また、江口のりこ主演の『ソロ活女子のススメ』(テレビ東京・BSテレ東)は、2021年の放送開始から人気を集め、シリーズ化している。出版社の契約社員・五月女恵(江口のりこ)は、半休を取って一人でおいしいものを食べたり、休日に一人旅に出かけたりと、人生を上手に楽しんでいる。


2025年春放送のNHK『しあわせは食べて寝て待て』も話題を集めた。主人公・麦巻さとこ(桜井ユキ)は、週4日のパート勤務で生活しながら、自身の病と向き合っている。それでも、お金をかけずに小さな楽しみを見つけたり、料理を丁寧に作ったりしながら、心豊かな暮らしを送っている。

近年人気を集めているのは、贅沢とは無縁でありながらも、自分なりの工夫や心の持ちようで、穏やかで満ち足りた日々を送る35歳以上の独身ヒロインたちだ。

多くの視聴者は、ドラマと現実が異なることを理解している。それでも、作品の登場人物が人々の価値観や人生観に影響を与えることは珍しくない。例えば『3年B組金八先生』(TBS系)の主人公・坂本金八(武田鉄矢)に憧れて、教職に就いた人のように。

「ドラマの主人公が独身だから自分も独身でいよう」と考える人は稀だろう。しかし、生き方や人生の選択を考える際、登場人物の価値観や暮らし方に無意識のうちに背中を押されることはある。30代独身の筆者自身、こうしたヒロインたちに、自分の選択や生き方を肯定してもらえたように感じることがあった。

一方で、独身生活を謳歌するヒロインの姿は、日本の将来を考えるうえで、良い面だけではないという懸念もある。国は少子化対策として結婚や出産を後押ししているし、「結婚や子育てに魅力を感じにくい社会になっている」という指摘も多い。


もちろん、ドラマが少子化の直接的な要因になるわけではないが、自由で充実した独身生活を送るヒロイン像が、"結婚しなければならない"という従来の価値観を弱めている側面はあるだろう。一人焼肉を楽しんで帰宅し、寝る前には独身ヒロインのドラマを視聴できる時代において、「結婚しなきゃ!」というプレッシャーは、一昔前よりも感じにくくなっている。

それでも筆者は、独身を肯定的に描く作品は必要だと思うし、今後も視聴者のニーズに応えるかたちで制作され続けると考える。

2025年夏放送のNHK『ひとりでしにたい』の山口鳴海(綾瀬はるか)は、猫と暮らし、好きな仕事をし、推し活も楽しんでいる。しかし彼女は、「ひとりで生きることってそんなに悪いこと?[中略]なんか、ひとりで生きるの情けなくなっちゃった」と涙を流す場面もあった。

未婚者は増えているとはいえ、社会では少数派である。自分の人生に満足していても、ふとした瞬間に心寂しくなるし、自分の選択が正しかったのか不安になることもある。そうしたなかで独身のヒロインたちは、私たちに寄り添い、共感を抱かせてくれる貴重な存在だ。

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