現代社会は、出生数の減少と高齢化により"多死時代"といわれており、多くの人にとって高齢期、終活、死は関心事となっている。そうした中、高齢期や終活をポジティブに描いた作品が次々と制作され、人気を集めている。
今回は、多死時代において、このような作品が静かにヒットする理由を探りたい。

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■悲しくても、つらくても生き続けるしかない

内館牧子の小説『すぐ死ぬんだから』(講談社)が今年10月、大地真央長野博による"リーディングドラマ"として舞台上演される。"リーディングドラマ"とは、役者が台本を手にしたままセリフを読み上げるスタイルの演劇だ。

シニア世代の中には、周囲に気兼ねして自分の気持ちを抑え込んだり、身なりに無頓着になってしまう人が少なくない。しかし、本作のヒロイン、78歳の忍ハナ(大地真央)は違う。彼女は毒舌でパワフル、そしておしゃれにも力を入れている。

高齢夫婦にとって最大の不安は、どちらかが先に倒れてしまうことだろう。本作では、ハナより先に夫・岩造(長野博)が倒れる。残されたハナは答えが出にくいさまざまな問題に直面しながらも、懸命に日々を生きている。

また、嫁とは表面上は穏やかに接していても、欠点が目についてしまうことがある。ハナも同様の悩みを抱えている。本作は、こうした複雑な心情に丁寧に寄り添いながら、それをユーモアへと昇華している。


『すぐ死ぬんだから』は過去にも上演されており、2022年の朗読劇では泉ピン子がハナをパワフルに演じた。泉の年齢を感じさせない声量に元気をもらった人は多いと思う。

そして、俗説であるが、「すぐ死ぬんだから」が口癖の高齢者ほど、元気で長生きするものだ。

佐藤愛子による『九十歳。何がめでたい』(小学館)は、草笛光子主演で2024年に映画化された。小説家の佐藤愛子(草笛)は90歳を過ぎて断筆し、やることもなく鬱々と過ごし、娘・響子(真矢ミキ)に呆れられることもあった。

愛子は編集者・吉川真也(唐沢寿明)との出会いをきっかけに、再び書くことを始め、気力を取り戻していく。

人生100年時代といわれる今でも、健康寿命は70代半ばとされている。年齢を重ねるごとにできないことが増え、気持ちもふさぎ込みがちになる中で、自身の思いに寄り添い、悩みやつらさを笑いに変えてくれる登場人物の存在は救いになる。また、作中の人物が前を向いて生きる姿に感化され、明るい気持ちになる人も多い。

少し前までは、終活を行うのは60代以上が多いというイメージがあった。しかし、近年は20代から終活を始める人も珍しくないといわれている。


そうした中、2025年に『ひとりでしにたい』(NHK総合ほか)が放送された。39歳の山口鳴海(綾瀬はるか)が叔母・光子(山口紗弥加)の死をきっかけに終活に目覚め、ひとりで生き、ひとりで死ぬ方法を模索する。

本作には終活や孤独死に詳しい20代の那須田優弥(佐野勇斗)も登場する。終活や孤独死に若くして精通し、現実主義でもある優弥の姿はイマドキの若者を彷彿とさせる。

同年放送の『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』(フジテレビ系)は、遺品整理人・鳥飼樹(草彅剛)が主人公の作品だ。遺品整理人という職業が身近になったのは比較的最近のことである。

娘が近くに住んでいるにもかかわらず、樹に遺品整理や終活のサポートを依頼する鮎川こはる(風吹ジュン)の心情が丁寧に描かれている。自分の最期ですら、子どもに迷惑をかけてはいけないという、現代人らしい自制心や遠慮がそこに投影されている。

また、『終活シェアハウス』(NHK BSプレミアム4K)も2025年に放送された作品だが、シェアハウスで暮らす68歳4人組の中には、未婚者も既婚者もいる。子どもや孫がいながらも、学生時代の友人と暮らすことを選んだ者もいるのだ。

現代社会は"個"の時代である。煩わしい人間関係や家庭における義務から距離を置くこともでき、自己実現に向かって邁進しやすい。


一方で、"個"の時代ならではの不安もある。現在60歳前後の世代が子どもの頃は、老人ホームが今ほど普及しておらず、高齢者の面倒は家族が見るものだった。しかし今は、介護負担から逃れられる選択肢がある一方で、"自分の老後は誰が支えてくれるのか?" "若い頃から老後に備え、周囲に迷惑をかけないようにしなきゃいけない"といった不安がある。

こうした時代において、ひとりで必死に生きるヒロインの姿や、高齢期に新しい生活のカタチを模索する登場人物たちを見ると、心が励まされるだけでなく、参考になることも多い。

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