7月26日にスタートするTBS系日曜劇場『VIVANT』第2シーズンの福澤克雄監督に、パワーハラスメントに該当する言動が認められていたことが明らかになった。

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福澤監督の問題については、14日発売の女性週刊誌が報じた。
TBSは報道各社の取材に対し、「パワーハラスメントに該当する言動が認められた」と回答。ドラマの撮影期間中、職場環境の改善を目的とした調査を実施し、福澤監督を一時的に現場から外したうえで、「厳正に人事上の措置」を行ったという。現在は再発防止策を講じ、「本人も反省し、現在、番組制作にあたっております」と報告している。

福澤監督は『VIVANT』で原作と演出を担当し、前作に続いて第2シーズンの制作にも携わる。これまでにも『半沢直樹』をはじめ、『華麗なる一族』、『3年B組金八先生』シリーズ、『下町ロケット』、『陸王』など、TBSの看板ドラマを数多く手掛けてきた。局内のみならず、テレビドラマ界を代表する「巨匠」の一人といっていい。

一方、妥協を許さない熱血型の演出家としても知られる。武田鉄矢はかつて、『3年B組金八先生』で上戸彩が演じた生徒と男子生徒が取っ組み合う場面について、福澤監督から「本気でビンタを入れ合え」と指示があり、2人とも顔が腫れ上がっていたと証言していた。現在なら問題になりかねないが、当時は作品への情熱を示す逸話として語られていた。

TBSはハラスメントについて具体的な内容を公表しておらず、過去の演出手法と今回の問題を安易に結びつけることはできない。ただ、強い立場の人間による叱責や無理な要求が「当たり前」だった映像業界の体質を考えるうえで、象徴的な事案ともいえる。

映画やドラマの現場には、長らく「一般社会とは違う特殊な世界」という意識があった。
作品のためなら理不尽にも耐えるべきだという「芸術至上主義」的な論理が浸透し、スパルタ的な指導が正当化されやすい風土があった。また、監督やプロデューサーにはキャスティング、演出、仕事の割り振りなどの強い権限を持つため、スタッフや出演者の多くは立場が弱く、仕事を失う恐れなどから、ハラスメントを受けても声を上げにくい構造があった。

2022年には、複数の有名映画監督に対する性加害の告発が相次ぎ、業界の閉鎖性や特殊性が社会問題となった。また、性的な場面の撮影でも、出演者への事前説明や同意の確認が十分とはいえない時代が続いた。現在は、俳優と制作側の間に入り、性的なシーンの内容や演技の範囲を調整するインティマシー・コーディネーターの導入が進んでいるが、そうした変化はごく近年のことだ。

テレビ業界でも、コンプライアンス上の問題行為があったとされる国分太一に関する日本テレビの対応や、フジテレビ系ドラマで共演した佐藤二朗と橋本愛の間で起きたトラブルなど、ハラスメントをめぐる問題が相次いでいる。個々の事案についてはさまざまな見方や主張があり、一括りにはできない。それでも、各局がハラスメント事案に対して以前より早い段階で動くようになったことは確かだ。

大きな転機になったのが、中居正広氏をめぐる問題へのフジテレビの対応だ。多数のスポンサーがフジテレビへのCM出稿を見合わせ、社会的にも激しく糾弾された。現代では、トラブルが起きた時に著名なタレントや実績のある制作者を守るメリットよりも、問題を放置したと見なされることで失う信用の方がはるかに大きいことが鮮明になった。これがハラスメント問題に対するテレビ局の対応の変化につながったともみられている。


一方で、演出や仕事上の厳しい指示までハラスメントと見なされれば、監督が俳優やスタッフに踏み込んだ要求をできなくなり、業界の萎縮や作品の完成度低下を招きかねないとの指摘もある。真剣な創作の場では、ある程度の意見や感情のぶつかり合いは付きものだからだ。

だが、もちろん作品に情熱を傾けることと、相手の人格や安全を軽視することは別問題だ。長らく「この業界では当たり前」「特殊な世界だから」といった言葉でハラスメントを放置してきた結果、現代社会の一般感覚やコンプライアンスと乖離し、その反動が大きくなってしまった面もある。

必要なのは、問題になることを恐れて表面的に萎縮することではない。どこまでが作品づくりに必要な要求で、どこからが立場を利用した加害になるのかを、監督個人の判断だけに委ねないことが重要だ。「特殊な世界」であることを免罪符にせず、その線引きを業界全体で共有する仕組みが必要なのではないだろうか。

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