放送折り返し地点を超えた連続ドラマ『ラストノート』(フジテレビ系)が盛り上がってきた。さすが『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』(2014)や『愛の、がっこう。
』(2025)などを世に送り出してきた“木10”枠の作品は、私たちを裏切らない。その盛り上がりの一端を担っているのが“優子劇場”らしい。

【写真】坂井真紀の“優子劇場”が話題を集める『ラストノート』場面カット【4点】

『ラストノート』は、約20歳差の男女の年の差恋愛を描いた物語だ。主人公の一瀬葵(内田有紀)は突然、花の香りが嗅げなくなってしまい調香師の仕事をあきらめた過去がある。そんな葵が見るだけで心が穏やかになる、地下道に飾られた花の絵があった。その絵を描いていたのは、友人の佐川優子(坂井真紀)がマッチングアプリで出会って騙されかけた、樋口澄晴(寺西拓人)だったことが判明する。さまざまな因果が折り重なって出会った葵と澄晴は、8月13日放送の第6話で互いの気持ちを確認しあい、ついに両思いになる……と、ここまでくれば「めでたし、めでたし」に終わるのだけれど、そうはいかない。

ふたりの背後には恋の障害がいくつも控えている。まずはずっと澄晴に片想いしていた木嶋莉奈(桜井日奈子)の存在。厄介なことに莉奈は偶然にも葵と知り合っていて、食事をして悩みを打ち明けるような仲だ。狭隘の人間関係は、ドラマならではだと思って欲しい。さらに毒親と化した澄晴の父親は、息子よりもだいぶ年上の葵に不信感を抱いている。
そして極めつけは優子の存在。父親の介護が終わり、これから自由を楽しもうとした矢先に出会ったのが澄晴だったのに、出会った頃の彼は絵画を高額で売りつける詐欺を仕事にしていた。つまり恋愛を匂わせていた行為はすべて虚偽で、澄晴は150万円を優子から騙し取っていたのだ。現在では詐欺から手を引き、アルバイトに精を出す澄晴。そんな愛しの彼をどうしても諦めきれない優子は、ありとあらゆる奇行に出てしまう。

この優子の行動が“優子劇場”と視聴者から呼ばれて、オンエア中、SNSでは常にトレンド入り。視聴者側を高揚させている。

そもそもマッチングアプリでロマンス詐欺のような手口に引っかかってしまう時点で、優子は恋愛免疫が少ないのかもしれない。第1話では完全に澄晴と恋人関係にあると信じて疑っていなかった。彼と会えるシーンでは一生懸命におしゃれをしたのか、赤のファンシーなワンピースに、赤リップで登場。どう見てもトゥーマッチなコーディネートは、視聴者をざわつかせた。

まだ優子劇場は続く。
澄晴が席を外した隙に免許証を隠し撮りして住所を掴み、自宅まで押しかけるストーカーぶりを発揮。そして葵との仲に勘づいた優子は、自分の家に二人を招いてわざと鉢合わせにさせた。ちなみに「どうして私の好きな人まで奪ったりするの?」と、葵に詰め寄っているので、優子にとっては「友情より愛情」らしい。   

葵が恋路の邪魔だとさらに思い込みを深めていく優子は、まだ葵への想いが捨てきれずにいる元夫・奥田創(徳井義実)に澄晴の存在を知らせて、恋の炎を焚き付ける暴挙にも出た。今夜放送の第7話では、澄晴の毒親にふたりの仲をリークするらしい。ホントに邪魔なのは自分なのだけど、一途な優子には聞く術はなし。奇行がエスカレートしていくであろうと、全視聴者が予想をしつつ、パワーアップしてほしいと期待もしている。    

優子の行動はエキセントリックだと呼ばれるだろう。でも彼女と同世代の私から見ると、けして虚像ではなく実際に存在する人物だ。アプリで海外ロマンス詐欺に騙されても「毎日メールをくれるなんて、今までの恋人はしてくれなかった」と言っていた女性。介護疲れからなのか“ホス狂”になってしまった女性など、ひとりの男性を信じ込んだ様子を何人か見たことがある。皆「え、まさかこの人が?」と思わせる、しっかりとした女性だった。
まだドラマ内では優子劇場が引きも切らないと思うが、反面教師として捉えるのもお忘れなく。

(文/コラムニスト・小林久乃)

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