近年、実写ドラマで数々のヒット作を生み出してきた脚本家が、アニメの世界でも存在感を示している。実写のヒットメーカーがアニメ脚本を手がけるというだけでも興味を引かれるが、注目したいのは、実際にその作品がアニメファンの心をつかんでいることだ。


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ドラマや映画で培われた脚本家の技術は、アニメという表現の中でどのような化学反応を起こしてきたのだろうか。

例えば2025年に放送された『Turkey!』(日本テレビ系)は、『舟を編む~私、辞書つくります~』『銀河の一票』の蛭田直美が脚本を務めるオリジナルアニメ。第1話は、5人の一刻館高校ボウリング部員たちが織り成す青春物語として始まるが、ここからまさかの展開を迎える。突如として主人公たちが戦国時代にタイムスリップしてしまうのだ。

初回のインパクトが話題にのぼりやすい作品だが、物語の魅力はそれだけではない。主人公たちはそれぞれ悩みや葛藤を抱えており、第1話からメンバー同士の関係にもぎこちなさが漂っていた。そんな彼女たちが群雄割拠の戦国時代へ放り出され、そこで出会った人々との交流を通して、少しずつ自分自身や仲間との関係を見つめ直していく。奇抜な設定の裏側で描かれていたのは、5人の少女たちの繊細な心の動きだった。

このように実写畑の脚本家が手がける作品は、SFやファンタジーといったアニメならではの題材を扱いながらも、根底に濃密な人間ドラマを描いていることが多い。

『高校教師』『ひとつ屋根の下』などの生みの親・野島伸司が脚本を務めたアニメ『ワンダーエッグ・プライオリティ』(日本テレビ系)もそのひとつ。夢世界で戦う少女たちの活躍を描きながら、物語の軸となるのは、彼女たちが抱える孤独やトラウマ、人間関係にまつわる葛藤などである。異世界での戦いを通じて誰かと関わり、傷つき、悩みながら、それでも前に進もうとする少女たちの姿を浮かび上がらせていた。


現在放送中の『さよならララ』(TOKYO MX ほか)は、映画『山田くんとLv999の恋をする』の脚本などを手がけた川原杏奈がシリーズ構成を務めるオリジナルアニメ。王子との恋に破れ、泡になってしまった人魚姫の「ララ」が現代によみがえり、今度こそ"本当の愛"を見つけようと奮闘していく。アンデルセン童話の「人魚姫」をベースにしながら、現代にも通じる「愛とは何か」というテーマを描いている。

こうして振り返ると、いずれの作品にも共通しているのは、ファンタジックな世界観のなかに、どこか現実味を感じさせる要素が盛り込まれている点だ。アニメならではの大胆な設定に、実写作品で培われた人物描写が重なることで、現実離れした世界の中にも、登場人物の感情や人間関係がリアルに息づいている。

異なるジャンルや表現を掛け合わせることで、これまでにない作品世界が生まれる――そこに、実写畑の脚本家がアニメを手がける面白さがあるのかもしれない。

ちなみに実写畑の脚本家がアニメを手がける例は、『名探偵コナン』の劇場版シリーズにも見られる。2002年に公開された『名探偵コナン ベイカー街(ストリート)の亡霊』は、『眠れる森』『氷の世界』で知られる野沢尚さんが脚本を手がけた作品。2004年に逝去した野沢さんにとって、最初で最後のアニメ脚本となった。

『名探偵コナン』といえば、「見た目は子ども、頭脳は大人」でおなじみの主人公・江戸川コナンが活躍するミステリー作品であり、ここまで紹介してきたファンタジー作品とは趣が異なる。

ところが『ベイカー街の亡霊』は、劇場版シリーズの中でもひときわ異色の一作だった。舞台となるのは、19世紀末のロンドンを再現したVR空間。
コナンたちが参加するゲームを軸に、現実世界と仮想世界を行き来する物語が展開される。

こうした大胆な設定を取り入れながら、従来の『名探偵コナン』とはひと味違う作品世界を作り上げている点は、前述した作品にも通じるところがあるだろう。実写畑で培われた脚本家の個性が、アニメならではの表現と組み合わさることで、作品に新たな魅力をもたらしているのだ。

また2027年春には、野木亜紀子が原案・脚本を担当するオリジナルTVアニメ『LONA(ロナ)』の放送が控えている。『アンナチュラル』『MIU404』『ラストマイル』をはじめ、2022年公開の劇場アニメーション『犬王』でもその手腕を発揮してきた野木が、TVアニメ初挑戦でどのような化学反応を生み出すのか。実写のヒットメーカーだからこそ生み出せる、唯一無二の作品世界に期待したい。

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