起業志願者が投資家に事業をプレゼンするYouTube番組『令和の虎』。番組内で事業内容よりも頻繁に問われるのが、「なぜあなたがやるのか」という質問だ。
起業だけでなく、転職時の面接や社内の提案会議などでも聞かれることの多いこの質問の真意は何なのだろうか? 本記事では、『令和の虎』チャンネルの創設メンバー・竹内亢一氏にインタビュー。番組の舞台裏や、虎たちが志願者を見極める視点について話を聞く。

問われているのはアイデアではなく「人」

『令和の虎』に出ていると、虎たちが志願者にかなりの確率で聞く質問があります。

「あなたがやる意味は何ですか?」

これ、聞かれる側からすると、ちょっと意地悪に感じるかもしれません。でも僕は、この質問って起業家に対して一番フェアな問いだと思っています。なぜなら、その人がただ「やりたい人」なのか、それとも本当に「やるべき人」なのかを見極める質問だから。

正直、ビジネスアイデアは日頃から考えていれば誰でも思いつきます。でも、ビジネスはアイデアだけでは伸びない。大事なのは、それを本当にやり切れるかどうか。

だから虎たちは「何をやるか」だけじゃなくて、「誰がやるか」を見ているんです。

「市場が伸びているからやります」
「儲かりそうだからやります」
「流行っているから参入します」

こういう説明だけだと、僕はあまり心が動かない。

伸びている市場ならきっとライバルも多いはず。
その中で、なぜあなたが勝てるのか。なぜあなたじゃなきゃダメなのか。そこが見えないと、出資する側としては判断できないんです。

「あなたがやる意味は何ですか?」という質問は、言い換えれば「あなた自身の差別化は何ですか?」という問いです。

経験、スキル、人脈、環境、ストーリー、覚悟。そういうものを全部含めて「この人だから勝てる」と思える理由があるかどうかを見ています。
答えられる人は、普段から考えている

この質問にちゃんと答えられる人って、言葉がシンプルなんです。迷いがなく、自分の言葉でスッと説明できる。それは、普段からその事業のことを考えて、悩んで、行動しているから。

逆に、答えがやたら長くなる人、話があちこちに飛ぶ人、さっき言っていたことと違うことを言い始める人は、まだ考えが一貫していないことが多い。

もちろん、話すのが得意かどうかは人それぞれです。僕自身も、理詰めできれいに話すタイプではありません。


でも、言語化が苦手なことと、考えていないことはまったく違います。本当に想いがある人は、言葉が多少不器用でも伝わる。事実と覚悟をそのまま話すだけで、ちゃんと届くんです。

そして、その覚悟は必ず行動に出ます。

自分のお金を入れているのか、自分の時間を使っているのか、小さくても、もう動き始めているのか。

「本気です」と言う人はたくさんいます。でも、本気なら何をしたのか。そこを見れば、ある程度は分かります。
巻き込み力も「やる意味」の一部

事業を始めれば、必ずうまくいかない局面が来ます。資金が足りなくなるかもしれない。人間関係が悪くなるかもしれない。商品やサービスが思ったように売れないかもしれない。


そのときに心が折れてしまう人なのか。それでも踏ん張れる人なのか。ここは、ものすごく大事です。

どれだけビジネスプランが良くても、人が弱ければ事業は止まります。僕は、ビジネスは人が9割だと思っています。

それに、ビジネスは一人ではできません。仲間がいなければ広がらないし、お客さんに信じてもらえなければ売れない。協力者を巻き込めなければ、事業は大きくなりません。

だから僕は「巻き込み力」という言葉がすごく好きです。

周りを巻き込める人は、信用されます。信用される人の周りには、人が集まります。人が集まるところには、情報もお金もチャンスも集まります。


『令和の虎』で志願者を見ていると、プレゼンがうまいかどうか以上に、その人が人を巻き込めるかどうかが、自然とにじみ出るんです。

課題を具体的に捉えている人。どんな質問にも迷わず答えられる人。自分の事業についていくらでも話せる人。こういう人は強い。

逆に、言葉だけを飾っている人は、少し深掘りされると崩れます。それは、その事業に対する解像度がまだ低いからです。

問いから逃げない人に投資したい

中には、ビジネスプラン自体はすごくいい志願者もいます。市場がある。数字にも再現性がありそう。収益モデルも成立している。

でも、「自分がやる意味」が弱い人に、僕は基本的に投資しません。


「あなたがやる意味は何ですか?」

この質問は、ただのプレゼン対策ではありません。問われているのは、事業ではなく自分自身。

なぜ、それをやるのか。
なぜ、あなたなのか。
なぜ、苦しくなってもやめないのか。
なぜ、周りを巻き込めるのか。

自分の経験、スキル、環境、ストーリー、覚悟を全部つなげて「だから僕がやるんです」と言えるかどうか。虎たちが見ているのは、そこです。

これは『令和の虎』に出る志願者だけの話ではありません。起業する人、新規事業を立ち上げる人、会社を成長させたい経営者、何かに挑戦するすべての人に必要な問いだと思います。

あなたがやる意味は何ですか?

この問いにちゃんと向き合えた人だけが、最後までやり切れる。僕はそう思っています。


竹内亢一 たけうち こういち
株式会社Suneight 代表取締役 1981年三重県生まれ。中学卒業後にミュージシャンを目指し、鞄ひとつで上京。バンド活動で訪れた海外で「映像」の可能性の大きさに注目し、2006年より動画制作を独学で始める。YouTuberやコンテンツマーケティングといった言葉が日本で広まる前からYouTubeに着目し、2013年YouTubeマーケティング会社「Suneight」を設立。『マーケティングは統計学だ!!』を掲げ、創業以来蓄積した膨大な動画データを軸に、独自の方程式で動画マーケティングを展開。多くの企業の売上拡大や成長を支援している。現在は「令和の虎」にも出演中。関わったチャンネルで金の盾3枚、銀の盾29枚獲得し、国内有数の実績を持つ。著者に『知名度の上げ方 1年で10,000人のファンをつくる法則』(クロスメディア・パブリッシング)がある。 この著者の記事一覧はこちら
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