マンションリサーチは、日本銀行が政策金利を1.0%へ引き上げたことを受け「東京都中古マンション市場」についての分析結果を6月19日に発表した。

まず東京都23区全体(都心5区を除く一般住宅マーケットを含む)の動きを見ると、市場の基礎体力は依然として強いことが分かる。


売り出し開始から成約に至るまでの販売期間と、販売中に実施された値下げ回数を分析すると、2025年初旬までは販売期間・値下げ回数ともに減少傾向にあった。

これは、売主が価格を調整しなくても比較的短期間で成約していたことを意味しており、購入希望者が市場に十分存在していたことを示している。

特に、政策金利が0.25%へ引き上げられた2024年中盤以降も、この傾向は大きく変化していない。

つまり、当時の東京都23区では、住宅ローン金利の上昇を吸収できるだけの実需が存在しており、金利上昇が市場全体の流動性に与える影響は限定的だったと考えられる。人口流入の継続や住宅取得ニーズの高さに支えられ、実需マーケットは非常に底堅い動きを続けていた。

一方で、市場には徐々に変化も見え始めている。

政策金利が0.5%となった2025年初旬以降は、販売期間・値下げ回数とも概ね横ばいで推移。つまり、金利がさらに上昇したにもかかわらず、市場は一定の流動性を維持していた。しかし、政策金利が0.75%へ引き上げられた2025年末以降になると、状況は少しずつ変わる。販売期間そのものは大きく悪化していないものの、値下げを実施する物件の割合が増加し始めた。

これは売主が従来のような強気価格では成約しにくくなり、市場価格へ歩み寄るケースが増えてきたことを示している。言い換えれば、「待っていれば売れる市場」から、「価格調整を行うことで売れる市場」へと、売主の行動が変化し始めている。


2026年6月に政策金利が1.0%へ到達した現在、この傾向はさらに進む可能性がある。もっとも、現在の東京都23区全体の流動性は依然として歴史的に見れば高い水準にあるため、市場全体が急激に悪化するというよりも、過熱していた市場が徐々に正常な状態へ戻っていく過程と捉えることもできるだろう。

一方で、高価格帯マンションが集中する都心5区(千代田区・中央区・港区・新宿区・渋谷区)では、より早い段階から市場の変化が確認されている。

販売期間と値下げ回数を分析すると、政策金利が0.25%へ引き上げられた2024年中盤以降、すでに販売期間の長期化と値下げ頻度の増加が始まっている。

この背景には、単純な金利上昇だけでは説明できない要因がある。都心5区は、居住目的の購入者だけでなく、国内外の投資家や資産保有目的の購入者も多く参加する「実需と投資が混在するマーケット」。

2023年から2025年にかけては、再開発への期待や海外投資マネーの流入、超低金利環境などを背景に価格が急騰した。

しかし価格上昇のスピードが実需層の購買力を上回るようになると、購入できる層は徐々に限定される。その結果、供給が増え始めた局面では価格調整が必要となり、販売期間の長期化や値下げの増加として表面化していると考えられる。

つまり都心5区では、金利上昇だけではなく、価格上昇そのものが流動性低下の大きな要因となっている可能性がある。

この傾向は、東京都の湾岸エリアではさらに明確に表れている。

晴海・勝どき・豊洲・有明などでは、近年、新築供給や大型再開発への期待を背景に中古価格も大きく上昇。
一方で、転売目的や資産運用目的の保有も多く、市場環境の変化を受けやすい特徴がある。

実際、政策金利が0.75%となった2025年末以降は、値下げ頻度が急増しており、価格を維持したままでは成約しにくい状況が広がっている。

また、高額物件ほど住宅ローン金利上昇による毎月返済額への影響が大きいため、購入希望者が慎重になる傾向も強まる。

そのため、都心5区や湾岸エリアでは、「価格高騰による需要の一巡」と「金利上昇による購入力の低下」が同時に作用し、他エリア以上に流動性へブレーキがかかる可能性が高いと考えられる。

マンションリサーチの福嶋 真司氏は、この変化を悲観的に捉える必要はないとしていて、流動性の低下は市場の衰退ではなく、価格と需要のバランスを取り戻すための正常化プロセスとしている。

適正な価格形成が進めば、これまで購入を見送っていた実需層が市場へ戻り、中古マンション市場は再び安定した取引を取り戻す可能性がある。

2026年以降の東京都中古マンション市場では、「価格が上がるか下がるか」という単純な視点ではなく、エリアごとの流動性の違いを見極めながら、市場が健全な状態へ移行していく過程を注視することが、これまで以上に重要になると考えられる。

日銀の利上げが続くなかでも、東京都の中古マンション市場は依然として高い流動性を維持している。一方で、都心5区や湾岸エリアでは値下げを伴う成約が増え始めており、これまでのような「強気価格でも売れる市場」には変化の兆しが見え始めている。

特に都心部では、金利上昇だけでなく価格そのものの高騰によって購入できる層が限られつつあり、投資マネー主導で上昇してきた相場の過熱感が徐々に落ち着いてきた可能性もある。もっとも、市場関係者はこれを悲観的な局面ではなく「正常化のプロセス」と位置付けている。今後は東京都全体を一括りに見るのではなく、都心、湾岸、郊外といったエリアごとの需給の違いが、これまで以上に重要になりそうだ。
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