マンションリサーチは、大阪都心の中古市場についての調査結果を6月26日に発表した。調査は2024年1月~2026年6月の期間、公開されている中古マンションの売出情報を収集し、統計処理を施して集計した。


まず大阪市都心6区における「販売日数」と「値下げ回数」の推移を確認すると、2026年以降、興味深い変化が見えてくる。

販売日数と値下げ回数は急激な増加を示している。この二つの指標を組み合わせて見ると、「値下げをしても、なかなか売れない」という状況が浮かび上がる。

言い換えれば、市場参加者が想定している価格と、実際に購入者が受け入れられる価格との間にギャップが生じ始めているということ。

東京都心部では2024年後半以降、この傾向がより顕著に現れたが、大阪市都心6区においても同様の現象が確認され始めている。もちろん東京都心のような急激な調整局面に入っているわけではないが、消費者サイドから見れば、「欲しいが手が届かない」「価格に対して割高感がある」と感じる水準まで価格が上昇していることを示唆している。特に価格帯の高い物件や投資色の強いマンションでは、この傾向がより顕著に現れている。

その傾向をさらに明確に示しているのが、高価格帯マンションの在庫推移です。上記地図では、売出価格平均6,000万円以上のシンボリックなマンションについて、マンション単位で在庫動向を可視化している。

結果を見ると、大阪市都心6区には青色のプロット(在庫増加傾向)が数多く点在していることが分かる。(赤:在庫減少傾向/黄:在庫横ばい)

これは売却希望者が増加している一方で、それを吸収するだけの購入需要が追いついていないことを意味している。

特に高額帯マンションでは、購入可能な層が限定されるため、価格上昇局面では市場が成立していたとしても、一定の価格水準を超えると急激に流動性が低下する傾向がある。
価格が上昇している間は「まだ上がる」という期待が市場を支えるが、その期待が弱まった瞬間、購入検討者は慎重になり、売却希望者だけが増えていく構造に変化する。現在の大阪市都心6区では、まさにその転換点が訪れ始めている可能性がある。

大阪市都心6区において在庫が増加している背景には、東京都心と非常によく似た市場構造がある。それは、実需と投資需要が混在しているという点だ。これらのエリアでは、自宅として購入する実需層だけでなく、国内投資家、海外投資家、法人購入、セカンドハウス需要など、多様なプレイヤーが市場に参加している。

特に近年は大阪・関西万博への期待や大規模再開発、インバウンド需要の回復などを背景に、大阪市都心部への投資資金流入が加速。その結果、一部の人気マンションでは実需の購買力を大きく上回る価格形成が進み、短期間で大幅な価格上昇を記録することとなった。価格上昇そのものは必ずしも悪いことではないが、価格上昇の主因が居住需要ではなく投資需要である場合、市場環境の変化によって需給バランスが崩れやすくなるという特徴がある。

また、2024年以降、新築マンションの短期転売比率が急激に増加していることが確認できる。本来、新築マンションは一定期間居住されることを前提に購入されるケースが大半。

しかし短期間での再販売が増加しているということは、居住目的ではなく値上がり益を期待した購入が一定数存在していたことを示している。市場が上昇局面にある間は、こうした取引が価格上昇をさらに加速させる要因となる。


一方で、価格上昇が鈍化した局面では、利益確定を目的とした売却が一斉に市場へ供給されるため、在庫増加や流動性低下につながりやすくなる。現在の大阪市都心6区は、その移行期に差し掛かっている可能性がある。

実際に成約坪単価の推移を見ても、価格は依然として高水準を維持しています。しかし注目すべきは価格の水準そのものではなく、価格の「方向性」です。
これまで続いていた右肩上がりの上昇トレンドは徐々に弱まり、足元では横ばい圏で推移する動きが目立っています。
これは価格下落を意味するものではありません。むしろ市場参加者が「これ以上の価格上昇は難しい」と判断し始めた結果、売主と買主が価格の均衡点を探っている段階と考えることができます。
市場が成熟していく過程では自然な現象であり、必ずしもネガティブなシグナルではありません。

対照的なのが、大阪市のその他18区。
販売日数と値下げ回数の推移を見ると、多少のばらつきはあるものの、いずれの指標も概ね横ばいで推移している。これは需給バランスが比較的安定しており、市場に過度な過熱感も冷え込みも発生していないことを示している。

購入者の中心は居住目的の実需層であり、投資マネーの影響を受けにくいため、市場変動も比較的小さくなる。
在庫推移のプロットを見ても、黄色の物件が非常に多く、流動性が安定していることが確認できる。

価格形成も地域所得や住宅ローン利用者の購買力を基準に行われているため、上昇傾向にあるが急激な価格変動が起こりにくい市場構造となっている。

大阪市都心の中古マンションは価格そのものは高水準を維持しているものの、市場では「売りたい価格」と「買いたい価格」のズレが広がり始めているようだ。販売日数や値下げ回数、高価格帯マンションの在庫増加など複数のデータを合わせて見ると、価格上昇一辺倒だった市場が転換点を迎えつつある可能性もある。住宅購入を検討している人だけでなく、不動産投資を考える人にとっても注目したい動きといえそうだ。
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