一度治療した歯なら安心――そう思っている人は少なくありません。しかし、銀歯の下では気づかないうちにむし歯が再発し、痛みもなく進行してしまうことがあります。
なぜ銀歯の下で再びむし歯ができるのか、そして歯みがきだけでは防げない理由とは何なのでしょうか。銀歯むし歯が起こるメカニズムと、その怖さについて解説します。
○なぜ銀歯の下でむし歯ができるのか

そもそも、なぜ銀歯治療の後にむし歯が再発して、「銀歯むし歯」になるのでしょうか? これは、昭和のお風呂を思い浮かべると理解しやすくなります。

昭和のお風呂は、職人さんが現場でタイルを1枚ずつ貼り、目地をセメントモルタルで埋める構造が一般的でした。年月が経つと、セメントが剥がれたり、あるいは割れたりします。そしてその間から、湿気が壁に浸透するなどの原因によって、裏側でカビが発生することも珍しくありませんでした。

銀歯むし歯でも、これと似たような現象が起きています。保険治療でむし歯を削った後、空いた穴に銀歯を詰めますが、その際に使用する接着剤は保険適用のルールでセメントと決められています。種類も指定されており、そのセメントによって歯と銀歯の隙間をぎゅうぎゅうに埋めて固定する「合着」の方法で治療が行われます。

ところが長い年月のあいだに、この合着セメントは少しずつ剥がれたり摩耗したりして、目に見えない隙間ができます。そこからむし歯菌が侵入し、歯の内部でひっそりと進行するのが「銀歯むし歯」の正体です。

このようにむし歯が進行しても、初めてであれば、歯の神経が生きている場合が多く、ある程度進むと痛みを自覚できるかもしれません。
しかし、再発をくり返して神経を取る治療(根管治療)を経ると、歯の痛みを感じなくなります。すると、むし歯が進行しても本人は全く気がつけません。

前述の通り、目視やレントゲンでも発見が難しいため、炎症が歯の外部にまで及んでから見つかることがあります。ここまで進行してしまうと、残念ながら抜歯という選択肢しか残らないケースも少なくありません。

「それは怖いから念入りに歯みがきしよう」と思っても、残念ながらそれだけでは対策になりません。合着セメントの隙間はとても狭く、歯ブラシの毛先が届かないからです。銀歯むし歯に関しては、セルフケアだけではほぼ無力と言わざるを得ません。

宮本日出 みやもとひずる 日本顎関節学会代議員・専門医・指導医。1965年、石川県金沢市生まれ。愛知学院大学歯学部卒業後、石川県立中央病院歯科口腔外科に勤務。1994年、豪アデレード大学歯学部で研修し、1996年から同大学歯学部口腔顎顔面外科招待研究員に。2000年から明海大学歯学部の教員に就任。
2007年、幸町歯科口腔外科医院を開業。国内外に160編以上の論文を発表している。著書に『お口からの感染予防』(ギャラクシーブックス)、『レモン水うがいダイエット』(あさ出版)がある。 この監修者の記事一覧はこちら
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