【あの頃、テレビドラマは熱かった】
「スキャンダル」(1993年/フジテレビ系)
◇ ◇ ◇
バブル崩壊とはいえ、就活生と株や土地で痛い目に遭った人以外は、さほど深刻でもなかった1993年。Jリーグ開幕に世は踊り、テレビでは小学生の“まさお”がラモス瑠偉になるカレーのCMが流れた。
野島伸司は1月クールの「高校教師」(TBS系)でヒリヒリする世界を、4月クールの「ひとつ屋根の下」(フジテレビ系)で家族愛を描き、ともに大ヒットした。
視聴率30%超えのドラマは、当時を生きていれば嫌でも知る。今は地上波のテレビがすがるように放送する“90年代回顧企画”にも登場するから、見てない人でも知っている。でも、サラリーマンが24時間戦わなくなったとはいえ必死で働いていた昼間、もっと刺激的なドラマが放送されたことはあまり語られない。
フジテレビ系の平日午前9時55分。当時は“妻たちの劇場”という30分の帯ドラマ枠だった。そこで93年夏に放送されたのが「スキャンダル」。ナチュラルでアンニュイ、グラビア界で異質な光を放っていた大塚寧々(当時24)のドラマ初主演作だ。白竜(同40)や大杉漣(同41)ら当時レンタルビデオショップを席巻した“Vシネ”のコワモテ勢も出演、主題歌はブライアン・メイという、朝から濃すぎるドラマだった。
設定がエグい。子供の頃にサーカスのピエロに父親の目の前で性的いたずらを受け、血のつながらないその父からはいやらしい視線や過剰なスキンシップを受け……そのトラウマから極度の男嫌いになったカタブツ女子高教師。
お嬢さま学校の裏で、生徒は“援交”するわ、ブルセラショップに出入りするわ。生徒を思いブルセラショップに行く→経営者に監禁・調教される→逃げようとして襲われる→はずみで経営者が死亡。ちなみに死んだブルセラ経営者が大杉漣。
で、偶然現れて寧々をかばうのが白竜。凄惨な体験から、寧々にはもう一人の人格が現れちゃって、それが真逆のエロエロ。そんな寧々に白竜は寄り添い……(そのうち実際にこの2人は不倫報道されるわけだが)。
夫がいない間。夏休みの子供が自分の部屋で「タッチ」の再放送を見ているときに、ママは「スキャンダル」。かつて僕らが親の目を盗んで「11PM」を見ていたような背徳感も、ドキドキのブースト装置か。
前年の“冬彦さんブーム”が冷めかけた夏、さらにエグいドラマを毎日やっていたという事実。専業主婦がいる世帯が過半数あったこの年ならではという編成もまた、ドラマが熱かった時代の象徴だ。そしてこの数年後、男たちはホーキンスの巨大広告で“手ブラヌード”の大塚寧々にドキドキする。
(テレビコラムニスト・亀井徳明)

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