【スージー鈴木のゼロからぜんぶ聴くビートルズ】#92


 5人目のビートルズ~ビリー・プレストン


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『ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス』という代打逆転満塁本塁打1発で「5人目のビートルズ」殿堂入りを決めたエリック・クラプトンに対して、黒人キーボーディストのビリー・プレストンは、1969年に入ってすぐのセッションで、コツコツと安打を重ねていった感がある。


 何といっても69年に録音された『ゲット・バック』から『レット・イット・ビー』『ドント・レット・ミー・ダウン』『ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード』、そして『サムシング』にまで参加しているのだ。

ビートルズの晩年を彩った「5人目の名脇役」と言っていい。


 1曲挙げるとすれば、やはり『ゲット・バック』だろう。【オリジナル記事で試聴する


 80年代、私がロックを聴き始めた当時「白人と黒人ではリズム感が違う」と言われていた。無論、黒人のリズム感の方が秀でているという意味だ。今となっては「そんなことは一概に言えないし、うかつに言うもんじゃない」という気がするものの、『ゲット・バック』のエレクトリックピアノ・ソロ(試聴リンク再生時間「1:32」から)を聴いていると、「あぁ、生真面目にロックしている白人バンドの中に、1人だけ、ノリノリにソウルしている黒人がいるな」と思ってしまう。


 それほど『ゲット・バック』におけるプレストンのソロは、リズムに乗って跳ねているし、踊っている。


 だが、ビートルズに対する、プレストンの一番の貢献は「ムードメーク」ではなかったか。


 2021年にディズニープラスで配信された『ザ・ビートルズ:Get Back』というドキュメンタリー映像は記憶に新しい。


 69年1月のいわゆる「ゲット・バック・セッション」の模様を収めた作品。ビートルズの雰囲気がいよいよ険悪になる中、プレストンのはつらつとした演奏によって、4人が再び音楽の喜びを取り戻したように生き生きとセッションに向かっていくさまを、リアルに映し出している。


 その結果が、アルバム『レット・イット・ビー』(70年)に結実するのだから、「5人目のビートルズ」「5人目の名脇役」を超えて、「陰のMVP」という感じさえするのだ。


 その後、プレストンは、ローリング・ストーンズともコラボし、その名を世界的に知らしめていく。

「まさに黒人音楽に憧れ続けた白人音楽家を喚起した黒人音楽家」だったと言えよう。


 最後に。私の持っている『ゲット・バック』のシングルのクレジットは、こうなっている──「ビートルズ・ウィズ・ビリー・プレストン」。


▽スージー鈴木(音楽評論家) 1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966‐2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。


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