【今週グサッときた名言珍言】


「成功ってしたことないから分かりません」
 (白石加代子TBS系「人生最高レストラン」7月11日放送)


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 80歳を越えても第一線で活躍する演劇界のレジェンド・白石加代子(84)。彼女が「こうやったら成功できる、みたいなのはありますか?」と問われ、笑みを浮かべて答えた一言が今週の言葉だ。


 白石は家計を助けるために区役所に就職するが、弟の高校卒業を機に、劇団「早稲田小劇場」に押しかけるように入団。やがて看板女優となった。


 47歳で劇団を退団すると、50歳の頃にTBSの演出家・鴨下信一と組んでライフワークとなる怪談・幻想文学の朗読劇「百物語」を始めた。当初は「日常的な演技ができない」と鴨下からこっぴどく怒られたという。劇団時代は様式を追求した芝居だったため、ただ「コンセントを抜く」というような日常的な動きができなかったのだ(宝島社「素敵なあの人Web」2025年3月15日)。


 厳しい演出を受けた結果、作家・夢枕獏をして「電話帳を読んでも怖い」(NHK・Eテレ「ETV特集 見えないものが見えてくる~白石加代子の百物語~」14年8月16日)とまで評されるようになった。


 逆に白石にとっては「とても怖いところ」(「日本経済新聞」22年8月8日)と思っていた舞台が怖くなくなった。


「『百物語』をやらせていただいた後は、袖から舞台の上に出てくるのが全く怖くなくなった。お客様と心が通い合って、自分が楽しくなるっていう感じでした」(ローソンエンタテインメント「クランクイン!」26年1月31日)


「百物語」をやるまでは、自分がやり続けてきたことを「大事に守る」という意識が強かった。けれど、それはよくないと思うようになった。


「お芝居って毎日同じことをするけど、昨日の演技は全部捨てるつもりで、翌日はやるの。いまも舞台に立つときは、そう考えています」(「素敵なあの人Web」=前出)


 だから、白石が出演作を決める基準は「新鮮で、楽しめそうだなと思える」(イープラス「SPICE」24年12月24日)というシンプルなもの。

毎回、自分が演じるならば、こうなるだろうと近づけたいと思う一方で「でも、見当がつくようなものをそのままやっているだけでは、すぐに飽きられるだろうし自分も飽きる」と考え、「前とは違う私じゃなきゃ見つけられない道を、そのつど探して」きたという(マガジンハウス「anan」19年12月4日号)。


「そうやって道を探りつつ生きてきたら、こんな特殊な女優になっちゃったんだけど」(同前)


 冒頭の番組で「演じる」とは何かと問われ、「そんな哲学的なこと考えたことない」と笑った白石加代子。その軽やかさに人生の重みが凝縮されていた。


(てれびのスキマ 戸部田誠/ライタ―)


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