【週刊誌からみた「ニッポンの後退」】
高市早苗首相は今上(きんじょう)天皇に“思うところ”があるのではないかと、私は考えている。
真に崇拝していれば、今上を「こんじょう」などと2度も読み間違えるわけはない。
「私は戦争の当事者ではないのだから、反省などしていない」
高市が若い頃、こう言っていたと保守派の論客・佐伯啓思が「月刊日本」7月号で語っている。
週刊文春(7月16日号)は、安倍晋三元首相が高市の政治姿勢を厳しく叱ったと報じている。
「安倍氏が一五年に発表した七十年談話。『侵略』『お詫び』などの言葉を盛り込み、歴代内閣が示した立場を継承した。
『安倍氏は保守層の反発を十分に想定した上で、専門家や側近の意見を幅広く聞き、談話の発表に踏み切った。すると、高市氏が乗り込んできて<なんでこんなもの(言葉)を入れたんですか!>などと食ってかかったのです』(安倍氏側近)
しかし、安倍氏はピシャリと叱りつけたという。
『君は政治の現実を何も分かってない!』」
今から26年前、高市議員は憲法調査会で、「日本国民は、恒久の平和を念願し──」という憲法の前文に噛みついて、「このおめでたい一文を改憲の機会があれば真っ先に変えようと思っています」といい放ったという(しんぶん赤旗日曜版〈6月14日付〉「金平茂紀のメディア日誌」から)。おめでたいのは彼女のほうだ。
高市首相は「平和」「戦争責任」「反省」という言葉が大嫌いなようだ。したがって、上皇や今上天皇が広島、長崎、沖縄だけではなく、多くの日本兵が亡くなった激戦地を訪れ、平和の尊さ、二度と戦争はしないという「お言葉」を発することが気に食わないのだ。
象徴的だったのは、4月29日に日本武道館で行われた政府主催の「昭和100年記念式典」。
式辞を高市首相が述べ、「日本列島を、強く豊かに」などとトランプ大統領のようなキャッチフレーズを喜々として主張したが、なぜか、天皇の「お言葉」はなかった。
翌日、異例なことに宮内庁が、「両陛下は歴史から謙虚に学び、平和を守り続けることが大切との思いで式典に臨んでいた」と発表したのである。
■唐突に養子案を持ち込んだ
私は、「愛子天皇」の可能性を葬り去っただけでなく、旧皇族から男子を養子に迎え、結婚して男の子が生まれたら天皇にするというバカげた案を、唐突に皇室典範改正に入れ込んだ背景に、高市首相の“怨念”のようなものを感じる。
国民の総意ではなく、政治家の操り人形のように動く天皇をつくろうという“企み”ではないのか。
そして憲法第1条をこう変える。
「天皇は主権の存する“国家”の総意に基く」
上野千鶴子東大名誉教授は月刊誌「世界」(8月号)で、こう書いている。
「保守派は天皇を尊崇すると言いながら、実のところ継承者の選択肢を狭めることで天皇制の衰退に手を貸していることになる」
初の女性首相というだけで、頭の構造は“ネトウヨ”同様の高市首相が、万が一、後世に名を残すとすれば、「天皇制崩壊のきっかけをつくった首相」としてなのかもしれない。 (文中一部敬称略)
(元木昌彦/「週刊現代」「フライデー」元編集長)

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